その“野球眼力”は球界でも定評あり。ロッテの監督を退任すると、すぐに侍ジャパンからのオファーが届いた。

「地味なニュースですが、意外とこれは大きい」

11月16日からの「アジアプロ野球チャンピオンシップ」で初陣を迎える、稲葉ジャパンのある関係者はそう語る。

10月末、侍ジャパン強化委員会の強化副本部長にロッテ前監督の伊東勤(つとむ)氏が就任すると発表された。任期は稲葉篤紀監督と同じく東京五輪までの3年間だ。

「このポストにはもともと宮本慎也氏が就く予定で、水面下で稲葉監督に助言を送るなど動き始めていた。ところが急転直下、ヤクルトのヘッドコーチに就任することになり、伊東氏に白羽の矢が立ったのです」(スポーツ紙デスク)

つまり“代打起用”というわけだが、案外この人選を評価する声は多い。

「前任の小久保裕紀監督は、陰に陽にサポートしてくれるプロ経験者がおらず、選手選考から打診の連絡まで、ほぼひとりでやらざるをえなかった。現在は強化本部ができたものの、本部長の山中正竹氏はアマ球界の人物。そこに伊東氏が加わることで、選手選考の相談や他国情報の分析など具体的なサポートが期待できます」(NPB関係者)

伊東氏といえば、2009年の第2回WBCで原ジャパンが世界一に輝いたときの総合コーチ。主にバッテリー担当として、敵の配球傾向や打者のチェックなどを行ない、チームの“頭脳”となった。また、12年には韓国・斗山(トゥサン)ベアーズでヘッドコーチを務めており、国際大会のライバル・韓国の野球を肌で知る野球人でもある。

「稲葉ジャパンの首脳陣は監督と同世代の若いコーチが多く、“お友達内閣”と揶揄(やゆ)する声もある。しかし伊東氏が専任で強化本部に在籍していれば、いざというときにヘッドコーチ格で入閣するというテコ入れも可能です。

伊東氏の“野球眼力”は誰もが認めるところで、昔は人の好き嫌いが激しく人脈も乏しかったものの、ロッテで外様監督として苦労したことでカドが取れた部分もある。ジョーカーとしての存在感は多大ですよ」(NPB関係者)

いずれにせよ、伊東氏が侍ジャパン内で東京五輪までに十分な貢献を示せば、翌21年春のWBCに向けたポスト稲葉候補の筆頭格に挙がる可能性は濃厚なのだという。

「また、次期代表監督とはいかずとも、そこから横滑りして巨人にヘッドコーチ格で入団するルートもある。侍ジャパンは12球団全体のプロジェクトとはいえ、やはりWBCの興行主体である読売新聞の影響力は強いですからね」(前出・デスク)

稲葉ジャパンの影のキーマンに要注目だ。