デビューから半年ほどで、『メルヘン・メドヘン』の主演に大抜擢された楠木ともり

人気声優を輩出してきたソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)のオーディション「アニストテレス」。その第5回で特別賞を受賞しデビューしたのが、17歳の現役女子高生・楠木ともりだ。

来年1月から放送されるオリジナルTVアニメ『メルヘン・メドヘン』では主演(鍵村葉月役)を務め、まだデビューから半年ほど、しかもアニメシリーズへの本格的な出演は初でありながら、いきなりの大抜擢!

他にも、人気シリーズのスピンオフ作品『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』で主人公・レンを演じることが決定するなど、輝かしいシンデレラ・ストーリーを歩んでいる。

そんな今もっとも注目の新人声優は、一体どんな人なのだろうか? 前後編のロングインタビューで、彼女の素顔に迫った。

■写真から漂う大物感

―まだデビューから半年ほどということですが、撮影ですごく堂々とされていて驚きました。

楠木 よく言われるんですけど、私はそんな自覚はなくて。本当はめちゃくちゃ緊張しているんです。

―でも、写りはすごく自然だし、笑顔にもぎこちなさはないですよ。

楠木 緊張するとテンションが上がっちゃうタイプなんです。ライブのスタンバイの時にも周りから笑われるくらい舞い上がってしまいます。これは小さい頃からで、ピアノの発表会でも舞台に上がった瞬間にニヤニヤしていました(笑)。

―でも、そういう時に笑えるのも大物の片鱗がありますよね。

楠木 うーん、真剣にやっていないと思われるんじゃないかって心配のほうが強いです。

―子どもの頃から声優を目指していたんですか?

楠木 アニメが好きになったのは中学校2年生の時です。学校でいじめみたいなことがあり、周りが信じられなくなって。その時に仲良くしてくれた友だちがアニメ好きで、その影響で私も観るようになりました。

声優になりたいと思ったのは、TVアニメの『こばと。』を再放送で観た時です。主演の花澤香菜さんの声にひと目惚れしてしまって。カワイらしいエアリーな声に憧れて「自分もこういう人になりたい!」って。友だちも夢が声優だったので、一緒に頑張ろうねって励まし合っていました。

「ここでいかなきゃ後がないぞ」って

―でも、そこから養成所に入ったとかではないですよね?

楠木 養成所に入ることも考えましたけど、両親をどうしても説得したいほどではなかったというか。まだ、「いつか声優になれたらいいな」という気持ちで。だから、独学で勉強していました。

―勉強はどんなことを?

楠木 アニメの動画を音声なしで観ながらセリフを練習したり、ネットで滑舌を良くするための早口言葉を調べてそれを繰り返してみたり、部活の帰り道に友だちとセリフを言い合ったりしましたね。

―そこから2016年に開催された「アニストテレス」の第5回オーディションに応募されたわけですが、そのきっかけは?

楠木 お姉ちゃんがカラオケボックスで募集のCMを見て、「こんなのがあるみたいよ」って教えてくれたんです。

―声優の登竜門としていいんじゃないかと。

楠木 でも、私は実は歌手志望でオーディションを受けたんですよ。

―ええ!? どうして声優ではなく歌手でオーディションを?

楠木 以前、声優志望の人が集まった大会みたいなものに出たことがあって。そこで優勝した人はあるCMの音声を担当できるって大会でした。でも、かなり最初のほうで普通に落ちちゃって。それで演技は経験者じゃないと難しいんだなって挫折したんです。

ただ、アニメに関わる仕事はしたかったし、私は音楽も好きだったので、アニソンの歌手になれたらいいなとは思っていて。それで歌手志望でオーディションを受けました。

■自信はなかったけど、覚悟はあった

―音楽の経験はあったんですか?

楠木 3歳からピアノを習っていて、演奏することは好きでした。それで中学校の時は吹奏楽部に入って、高校では軽音楽部でした。

―軽音楽部では何を?

楠木 ボーカルです。アニソンやボカロを歌っていました。ここで人前で歌うことの楽しさを知って。しかも、「アニストテレス」の募集を見たら、(主催のSMAの)所属アーティストとして、私が大好きな歌手のLiSAさんの名前もあって。「だったら受けてみよう!」と思ったんです。

―そうだったんですね。

楠木 もちろん、オーディションの時から「できたら将来は声優もやってみたいです」とは言っていました。ただ、演技は素人でしたし、オーディションではあくまで歌手志望として、歌をすっごく練習して臨みました。

―歌に関しては自信があった?

楠木 自信はなかったですけど、「受かってやろう」とは思っていました。「ここでいかなきゃ後がないぞ」って。

まだ現実に追いつけていません(苦笑)

―後がない?

楠木 オーディションの時は、ちょうど高校で進路を決める時期だったんです。私は大学に行くか、アニメの仕事に行くかで悩んでいて。「アニストテレス」でダメだったら進学だって思っていました。

―そんな覚悟で臨んだオーディションに見事合格した時の気持ちは?

楠木 発表で名前を呼ばれた瞬間は泣き崩れたんですけど、しばらく経ってから、「なんで私なんだろう」「何かの間違いなんじゃないか」って(笑)。現実のこととは思えなかったです。

―しかし、事務所のSMAには歌手ではなく声優としての所属ですよね?

楠木 事務所に入ってから「声優もやってみたらどう?」と言っていただいて。それで『メルヘン・メドヘン』のオーディションを受けたら、まさかの主役に決まったんです。

―じゃあ、人生初のスタジオオーディションで主役に?

楠木 そうなんです!

―めちゃくちゃすごいじゃないですか! いきなり諦めかけていた夢が叶ったわけですよね。

楠木 夢が叶ったというか、あまりにも誰も予想していなかった展開で、まだ現実に追いつけていません(苦笑)。私だけでなく、両親も「何が起きているの!?」って驚いていて。毎日プレッシャーと不安と緊張でいっぱいいっぱいです。

■異例続きの毎日「キャパを超えています」

―演技はほぼ未経験での主役抜擢となった『メルヘン・メドヘン』ですが、収録をしてみていかがですか?

楠木 私が演じている葉月ちゃんはとにかくよく喋るコで、いつもテンションが高いんです。今までモブくらいしかやったことがなかったのに、急に1話目から台詞が150ワード以上あるっていう感じで。マイクの前でずっと喋りっぱなしで、演技をしているだけで体力がなくなっています。

―では、まだ自分の演技を振り返る余裕はない?

楠木 全然ないです。演技をしている時はいろいろ考えますけど、休憩になると「どんな感じで演じたっけ…」って。完全に頭のキャパを超えちゃってます。

―でも、キャリアが全然ないわけですから、それが当たり前ですよね。

楠木 気がついたら1週間が経っていて、「もう次の収録がくるんだ」って。だから最近、時の流れがものすごく早いです(笑)。

●後編⇒初オーディションで主演に大抜擢! 17歳の注目声優・楠木ともりが意外な学生生活を告白

 

(取材・文/小山田裕哉 撮影/河西 遼)

■楠木ともり(くすのき・ともり)1999年12月22日生まれの高校3年生。2016年、高校2年生で受けたソニー・ミュージックアーティスツのアニメオーディション「第5回アニストテレス」にて特別賞を受賞し、今年、声優デビュー。12月配信予定のアプリゲーム『きららファンタジア』(主役・きらら)、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』(『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』優木せつ菜)他、来年放送予定のアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(主役・レン)も控える。○初めてパーソナリティを務めるWEBラジオ『メルヘン・メドヘン 楠木ともりの見習いラジオ』配信中!(隔週金曜日配信予定)

■TVアニメ『メルヘン・メドヘン』は、2018年1月よりAT-X、TOKYO MX、BS11にて放送開始予定! 詳しくはオフィシャルホームページまで! http://maerchen-anime.com/