「若い人こそ、資産を海外で運用する、あるいは海外で働くことを視野に入れてほしい」と語る古賀茂明氏

約26年ぶりに2万3000円台を回復した日経平均株価。このバブルはいつまで続くのか。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は「この株高はあくまでも短期的なものにすぎない」と警告する。

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株価が高騰している。先の衆院選中に16連騰し、11月7日に1996年6月に記録したバブル経済崩壊後の最高値2万2666円を突破すると、9日には約26年ぶりに2万3000円台にまで上昇した。

この株高はしばらく続くと私は予想している。10月の衆院選に安倍自民が大勝し、今後もアベノミクスが継続されることとなった。当然、日銀による大規模な金融緩和策も続くことになる。

その一環として日銀が株購入に投じる金額は年6兆円にも及んでいる。株価が下がると見るや、日銀が数百億円単位の株注文を入れるのだから、株価は高値で安定するに決まっている。おかげで上場企業3675社のうち、日銀が大株主(上位10位以内)になっている企業は優に800社を超えるまでになってしまった。

少し前まで、こんな異常な状態がいつまでも続くはずがないと、外国人投資家は日本株の購入には消極的だった。日銀による官製株バブルはいつかはじけると予測していたからだ。

しかし、安倍自民の衆院選大勝によって、今しばらくはアベノミクスによる金融緩和が続くのは確実になった。こうなると、彼らも日本の株式マーケットが正常な市場機能を失っていることを承知の上で、日本株買いに出るしかない。その結果が26年ぶりの株価高騰というわけだ。

だが、この株高はあくまでも短期的なものにすぎない。長期的なスパンで見ると、いずれ日銀が金融緩和から緊縮財政に転じ、これまでに購入した株や国債を売って資産圧縮に出る。あるいはそういった観測が流れた瞬間に、外国人投資家は利益確定のため、一斉に日本株を売り浴びせるだろう。

そうなれば株は大幅安、国債も暴落して長期金利が上昇、円安が進むなかでハイパーインフレや預金封鎖などということが起きてもおかしくない。そこまでいかなくても、大幅な円安で食料品などを中心に物価が急上昇すれば、さらなる生活苦が待っている。せっかくの貯金も他国の通貨に換算すれば、大幅に目減りするのは確実だ。

国内の銀行は危ない

そこで読者にアドバイスしたいのが、資産を海外に移すことである。外国の銀行に口座を開き、貯金の一部を外貨預金に回してもいい。アメリカなど、海外のETF(上場投資信託)に投資するのもいいだろう。円だけでなく、外貨や外国投信などに資産を分散させ、円目減りのリスクをヘッジするのだ。

国内の銀行は危ない。どこの外銀を利用すればいいのか、外貨預金やETF投資はどうすればできるのか、あれこれと勉強、模索することが将来のリスクをヘッジする格好のトレーニングになる。できれば、海外で働くための準備を今から始めることも勧めたい。

円、株、国債が大暴落するシーンを絵空事と思わないほうがいい。その最悪の事態を招くきっかけとなるのは、日銀による金融緩和からの出口戦略失敗だけではない。朝鮮半島で米朝の戦争に巻き込まれ、日本に北のミサイルが一発飛来しようものなら、この株バブルはたやすくはじけ、日本経済はクラッシュしかねない。危機はすぐそこに待ち構えているのだ。

若い人こそ、資産を海外で運用する、あるいは海外で働くことを視野に入れてほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中