クリスティアーノ・ロナウドらスターが揃うレアル・マドリードがクラブW杯の優勝候補筆頭だ。

毎年12月に開催されているFIFAクラブワールドカップ。今年は日本ではなくUAEでの開催だが、日本でも地上波で中継される貴重な大会とあって、年末の風物詩と言うべきイベントになりつつある。

もちろん、Jクラブの活躍もこの大会が注目を集める理由のひとつだろう。

昨年は鹿島アントラーズが決勝に進出し、レアル・マドリードとクラブ世界一をかけて対戦。最終的に敗れはしたが、一時は柴崎岳の2ゴールで同点に追いつくなど大健闘を見せたことは記憶に新しい。

それ以前の大会でも、浦和レッズ、ガンバ大阪、柏レイソル、サンフレッチェ広島がヨーロッパ王者や南米王者に挑み、好ゲームを展開した歴史がある。

ただし、過去にJクラブがこの大会に出場したのは、その多くが開催国枠でのものだった。AFCチャンピオンズリーグを制し、アジア王者として出場したのは2007年の浦和と2008年のガンバのみ。長らくアジアを制することができずにいたという意味では、Jクラブがどんなにこの大会で活躍しても、どこか素直に喜べないところがあったのも確かだ。

しかし、今年の大会には10年ぶりにACLを制した浦和がアジア王者として出場する。

Jクラブが日本以外で開かれるクラブW杯に出場するのは、これが初めてのこと。ホームアドバンテージを持たない日本のクラブが世界の強豪を相手にどんな戦いを見せるのかは注目だ。

大会はすでに12月6日に開幕し、開幕戦(1回戦)では地元・UAE王者のアルジャジーラが、オセアニア王者のオークランド・シティ(ニュージーランド)を1-0で下している。

この結果、浦和は初戦となる2回戦でアルジャジーラと対戦することが決まった。実力的には恐れる相手ではないが、アルジャジーラにはホームで戦える有利さがあり、決して油断はできない。

警戒すべきはFWアリ・マフブート。15年のアジアカップ準々決勝で日本からゴールを奪ったUAE代表ストライカーである。また、オークランド戦で決勝のミドルシュートを叩き込んだFWロマリーニョも要注意だ。

とはいえ、選手以上に気になるのが、ヘンク・テンカテ監督。戦略家として知られるオランダの名将が浦和をどう分析し、対策を講じてくるのかは気になるところだ。シーズン終盤、守備が落ち着いてきた浦和だけに、あまり心配する必要はないとは思うが、不用意な失点で相手を勢いに乗らせることだけは避けたい。

順当にここを勝ち上がれば、次の準決勝ではレアル・マドリードとの対戦が待っている。レアルがどんなチームであるか、今さら説明する必要もないだろう。エースのクリスティアーノ・ロナウドを筆頭とするスーパースター軍団である。

昨年、鹿島が健闘したといっても、レアルはリーガやUEFAチャンピオンズリーグの過密日程をこなし、長時間移動を経て来日。しかも、準決勝から決勝までは中2日という強行スケジュールでの戦いだった。もちろん、準決勝から決勝でメンバーの入れ替えもあったが、状況としては鹿島に大きなアドバンテージがあったことは間違いない。

今度はアブダビという中立地での対戦で、昨年以上に“ガチンコ度”は高くなるだけに、浦和がレアルを相手にどんな戦いを見せるのか注目だ。

前述したように、浦和は今季途中でペトロビッチ監督から堀孝史監督に代わったことでディフェンスが整備された。ACL準決勝の上海上港戦、同じく決勝のアル・ヒラル戦と、いずれも劣勢の時間が長く続きながら、耐えに耐えて勝利を手にした。世界最高レベルの攻撃力を誇るレアル相手にその粘り強い守備が通用しないようなら、勝負は試合序盤で決まってしまう可能性もある。

どこがレアルを苦しめられるのか

さて、トーナメント表の反対の山に目を向けると、北中米代表のパチューカ(メキシコ)が目を引く。過去に日本で開かれたクラブW杯に出場している上、現在は本田圭佑が所属していることで日本でもその名をよく知られている。

恐らく、本田のプレーを久しぶりにリアルタイムで目にするというサッカーファンも多いだろう。来年のW杯ロシア大会へ向け、本田の現状を知るという意味でも今大会は貴重な機会になるだろう。

パチューカは2回戦でアフリカ王者のウィダード・カサブランカ(モロッコ)と対戦し、勝てば準決勝で南米王者のグレミオ(ブラジル)と対戦する。

せっかくなら浦和と本田の対戦も見たいところだが、そのためには両者がともに2回戦で敗退して5位決定戦で当たるか、ともに準決勝で敗退して3位決定戦で当たるか、ともに勝ち上がって決勝で当たるか、の3パターンしかない。いずれにしても、両者が同じ結果にならなければいけないだけに条件は厳しそうだ。

この大会ではこのところ、ヨーロッパ王者の1強状態が続いている。世界中から選ばれたタレントがプレーしているのだから、当然といえば当然だが、南米王者ですら最近はヨーロッパ王者の牙城を崩せていない。それどころか、昨年も鹿島がアトレチコ・ナシオナル(コロンビア)を破ったように、南米王者は番狂わせの格好のターゲットとなってしまっているのが現状だ。

それを考えると、どこがレアルを倒すのかというよりも、どこがレアルを苦しめられるのか、といったあたりが現実的な見どころになってくる。

だとすれば、やはり今大会の注目ポイントは、何はともあれ浦和がレアルとの対戦を実現できるかどうかである。滅多にない機会だけに、是非とも実現させてほしいもの。レアルばかりに気を取られていたら、アルジャジーラに不覚を取ったなどということがないよう祈りたい。

(取材・文/浅田真樹 撮影/藤田真郷)