お別れの日となった12月2日。自宅から出棺し、火葬の前にゆかりの地を巡る節子さんと、それをじっと見送るわさお

2007年11月、青森県の鰺ヶ沢(あじがさわ)町。ケガをした白い野良犬が、近づく人を威嚇(いかく)していた。

町民が「これはダメだ。かわいそうだけど保健所に」と話しているところに通りかかったのが菊谷節子さんだった。

引き取られたこの子犬は節子さんとの絆(きずな)を深め、その後、ブログやテレビで紹介されると、瞬く間にブサイクだけどカワイイ“ブサかわ犬”として全国区の人気者に。節子さんとわさおに近しい工藤健さんは言う。

「菊谷さんがおなかの具合が悪いと、わさおもおなかを壊していることがしばしばありました。絆や仲がいいという次元ではなく、一心同体だったのでは」

そんな節子さんが、11月30日に亡くなる。過去、節子さんが入院した際は、ストレスから体中の毛が抜け落ち、10kgも痩せてしまったわさお。最愛の人との別れに、どれほど悲しんでいるのかと思いきや…。

「菊谷さんがお亡くなりになった日のわさおは、思いのほか落ち着いていました。むしろ人間を見て『何を騒いでいるのか』と毅然(きぜん)とした雰囲気がありました。わさおの胸の中では、菊谷さんはまだ生きておられるのでしょう」(前出・工藤氏)

昨年9月、朝のおやつである棒ダラをもらい喜ぶわさおと見守る節子さん。節子さんの背後に隠れているのは、同居犬のつばき

2010年、鰺ヶ沢町の特別観光大使に任命されたわさおと節子さん。今では、わさおを見に年間15万人が町を訪れるまでに

(撮影/工藤 健)