かつてPRIDEライト級王者に君臨した“天下無双の火の玉ボーイ”五味隆典が、大晦日のRIZINで日本のリングに本格復帰を果たす

“天下無双の火の玉ボーイ”の異名で、かつてPRIDEで破竹の10連勝を飾りライト級王座に君臨していた五味隆典

2010年からはUFCに参戦したが、戦績は4勝9敗と振るわず、ここ5試合は全て1Rで敗退…あの時の輝きは失われていた。

その五味が、大晦日のRIZINで日本のリングに本格復帰。久々にその雄姿が地上波(フジテレビ)で放送されることになる。PRIDE、UFC時代、そしてRIZINへの想いを39歳になった“火の玉ボーイ”が語った――。

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―かつて五味さんは「自分の試合を『作品』と考えている」と言っていましたが、今もその考えは変わりませんか?

五味 それは元々、辰吉丈一郎さんの言葉なんですよ。試合を観ていただいた方がどう考えるかですけど、最近は「駄作」が多いですね(苦笑)。

―あらま(苦笑)。確かにUFCでは苦戦していましたね。日本とUFCでは何が違ったんでしょう?

五味 う~ん、それまで観客のほとんどが日本人という中で大歓声を浴びていたけど、向こうに行けば1万人の観客の中で日本人はわずか数人だけという心細さもありましたね。そういう環境の中で「ベストバウト(ファイト・オブ・ザ・ナイトを2回)」とか取れたけど、UFCは世代交代のペースも早いし、この階級(ライト級)では35歳までが限界かなっていう感じはしますね。UFCで長くやらせていただいた(10年~17年)ことには感謝していますし、やれることはやったつもりです。

―今振り返って、UFCとはどんな舞台でしたか?

五味 俺の階級のチャンピオンはフロイド・メイウェザー(プロボクシング世界5階級王者)とやって、その1試合で100億円もらったと言われているんですよ。

―UFC王者のコナー・マクレガーですね。

五味 10年前の俺を見ているようだね。やってみたかったけどね。マクレガーとやったネイト・ディアスとはやったし、そういうストーリーに入っていきたかったんですけど、やっぱりアメリカのストーリーっていうのは崩せなかった。UFCで10連勝すれば俺もそこに行けたかもね(笑)。

―PRIDE時代の勢いがあれば…。

五味 う~ん、でも人生でそれが何回できるかっていうのがあるから。それをやったのがマクレガーであってね。俺は10年早かったね(笑)。

―PRIDE時代で連戦連勝していた頃はどういう気持ちでしたか?

五味 覚えてねえよ、そんなの(笑)。それまで修斗でやっていたことをもう一度繰り返してやるっていう感じだったけど、その一方で応援してくれる人が増えて、そういう楽しさはありましたね。

魔裟斗戦はね、嫌がらせしてやった(笑)

“神童”と言われる那須川天心(19歳)と「一度、組み技の練習をしてみたい」と語る五味隆典

―PRIDEを背負っている選手のひとりという認識はあったでしょう? 特に中軽量級の選手が中心だった『PRIDE武士道』シリーズではエースという意識でいたと思うし。

五味 そうすね。なんて言ったらいいんだろう、ブームでしたからね。今のコはちょっとかわいそうだと思いますね。あの熱を経験したのは、今の若い選手の親世代でしょう。

―そんなジェネレーションギャップがあります?

五味 あると思いますよ。だって俺にも那須川天心くん(19歳)くらいの息子がいてもおかしくはないでしょ(笑)。彼はまだまだカラダも大きくなるだろうね。筋肉をつけるとあのしなやかさとスピードはなくなるだろうけど。でも、総合をやっていくなら筋力をつけないといけないから難しいよ。ケガにも気をつけないとね。俺、天心くんを1回鍛えたいんだよな。

―それ、面白そうですね!

五味 一度、組み技の練習してみたいよな。あのコが総合を本気でヤル気があるならね。打撃はやりたくないけど(笑)、組み技をね。とかいって、こっちがあっさり押さえ込まれちゃったりして(笑)。とにかく打撃はすごいよね。英才教育で親がミットを持って、タイミングでバンバンバンバンってね。それプラス、倒す度胸があるからすごいよ。

―2015年にRIZINが立ち上がった時はどう思われましたか? エメリヤーエンコ・ヒョードルの参戦が決定した時、ミルコ・クロコップは「なぜ俺を呼ばないの?」と思ったそうですが。

五味 俺はUFCの契約を捨てることはしたくなかったですね。決まっているものは全うしたかった。いろんな理由でUFCを出ていく選手もいるけど、俺はそういうのはイヤなんですよ。野球だってメジャーリーグの選手が、契約が残っているのに日本に戻ろうとはしないでしょ?

―確かに。今回は久しぶりの「大晦日」になりますね。

五味 去年やってますけどね。

―あ、TBSの特番の中で組まれた魔裟斗戦ですね。

五味 あれはね、(RIZINに)嫌がらせしてやったんですよ(笑)。

―嫌がらせ(笑)。魔裟斗戦はキックボクシングルールでした。

五味 総合っていうのは身につけるべき技術が多いんだけど、どんどん突き詰めていくと、逆に制約の多いルールでもやりたくなるんですよ。(魔裟斗も自分も)お互いにボクシング出身だしね。TVで全国の人が観てくれたし、あれもいい作品になりましたね。

―今回、RIZINに出ることになった決め手はなんだったんですか?

五味 去年、魔裟斗さんと試合をして、今年9月のUFC日本大会に出て、今回のRIZINの大晦日…これで締(し)められるっていうか、この3つを日本で果たせば悔いが残らないんじゃないかって。

●続編⇒“39歳での復活”を誓う五味隆典が若手のインスタに苦言 「TVで数字を取って成功しなきゃ」

(取材・文・撮影/“Show”大谷泰顕)

●五味隆典(ごみ・たかのり)1978年生まれ、神奈川県出身。98年、修斗でプロデビューし、無敗のまま修斗世界ウェルター級王者に。04年からPRIDEに参戦し川尻達也、桜井“マッハ”速人らを下し初代PRIDEライト級王者に。PRIDE消滅後は戦極、UFCを経て、今年大晦日のRIZIN参戦が決定

●『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント&女子スーパーアトム級トーナメント 2nd ROUND/Final ROUND』【日時】12月29日(金)、31日(日)/13:30開場 15:00開始 【会場】さいたまスーパーアリーナ 対戦カードなど詳細はRIZINオフィシャルサイトでチェック!