映画、ドラマに多数出演し、注目の若手俳優として期待される太賀さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

第51回のゲストで女優の二階堂ふみさんからご紹介いただいたのは俳優の太賀さん。

06年にデビューし、現在24歳ながら映画にドラマと出演作多数。16年に宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』に出演し注目を浴びると、最近では『淵に立つ』『アズミ・ハルコは行方不明』など話題作での重要な役どころも目立つ。

そんな勢いのある期待の若手俳優として、昨年末は舞台『流山ブルーバード』に出演する中、その本番直前にお話を伺ったーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―舞台の本番前で緊張されてるところをお時間いただいて。初日から1週間でちょっと疲れも出てくる時ですかね。

太賀 いえいえ、大丈夫です。疲れは若干ありますけど。逆になんか、純化してきてる感じがしてますけどね、雑念が取れて。

―純化してるって、一番いい感じの表現じゃないですか。役に「入れてるな」っていう。

太賀 そうですね、気持ちとしては。ペースとしてはいいのかなっていう風には思いますね。

やっぱ、舞台だと1日2回とか1回なので、リズムがあるというか。他の撮影と違って入り時間も終わる時間も決まってるんで、1日の流れができて、心地いいんですけどね。

―ドラマや映画とも違って、不規則だったり、直前までスケジュールが決まらないとか、カット、カットで出番待ちとかもないし。

太賀 夜な夜なセリフ覚えて考えて、ってことでもないんで。これが演劇をやる時のリズムなのかなって感じがして、気分としては悪くないですね(笑)。

―今まで、舞台はそんな数はこなしてないですよね。改めて今回の作品で、みんなが舞台にハマるというか、恍惚感であり、そういうピュアになっていく心地よさを実感している感じ?

太賀 これまでに数本くらいですか。2年ぶりくらいの演劇なので、その生活リズムができるのはいいなって。朝早くに起きて、夜遅くに帰ってきて、次の日は夕方からでとか…。変則的なリズムだといろんな物が崩れるんで。自分のペースで生活できているのが「あぁ、やっぱり演劇のいいところのひとつなのかな」って思いながら。

―他の舞台とか、仲のいい役者さんの作品は普段から観てるほうですか? 

太賀 いや、そこまでは観てないですね。好きな作家さんとかに限ってですか。

―では、今回の本多劇場はどうです? 僕は太賀さんの父親世代で、80年代に学生時代だった人間にとっては特別な場所とも言えますけど。

太賀 あぁ、そうですか。いい時代ですよね。

―当時は野田秀樹さんの夢の遊眠社が絶頂で。鴻上尚史さんの第三舞台とか本当に熱い時代で、役者はもちろん、演劇好きにとっても本多劇場は憧れというか。お金がないから、当日並んでマチネのチケットを買ったりしてね。

太賀 世代で言うとそこまではないですけど、でも演劇は好きでやってるので。今までは絶対的な主役の方というか、例えば阿部サダオさんがいて、堤真一さんがいてとか、そういう先輩方の後ろ姿を見ながら…。

今回の『流山ブルーバード』でもそういう先輩の背中を追いつつ、自分たちの世代がメインで本多劇場に立つっていうことにすごく意味があるのかなって。20代前半~後半にかけての僕達が、主役として本多劇場で芝居をやる意味でも感慨深いなって思うんですけど。

「割とまじめじゃないですかね(笑)」

―周りの年上の世代がそういう「特別なんだよ」みたいな話をすることも今はあまりないんですかね。

太賀 変なプレッシャーかける先輩はいないですけど(笑)。

―あそこに上がると「格がちょっと違う」みたいなのもですし、歴史が醸(かも)し出す劇場の雰囲気もあるじゃないですか。

太賀 本多劇場は特別ありますもんね。

―野球でいったら甲子園とか神宮でプレイするくらいのね…。でも、よく思うんですけど、ホント舞台やる方は歌舞伎とかもですけど、公演中って迂闊(うかつ)なことできないじゃないですか。体調管理も含め、やっぱり飲みも控えめにとか?

太賀 考えますね。あんまり深酒はしないほうがいいな、早く寝ようとか。普段そういうのがあんまりないので、そうやって生活を見直すっていう意味でもやっぱりいいなと。

喉(のど)もそんなに強いほうでもないですし、あんまり大きな声で喋らないほうがいいかなとか。時期的にインフルエンザや風邪も心配じゃないですか? 家帰ったら身体温めるために「風呂入ろう」とか、今、そういう1コ1コを見つめ直す時です(笑)。

―ははは、そこだけ聞いたら「まじめかよ!」って(笑)。

太賀 いやー、そうなんですよ。割とまじめなんで(笑)。なんか、それもよくないかなとは思いますけどね。「関係ねーだろ」みたいな感じで、ガツガツやれればいいんですけど、そういうタイプでもないんで。

―それこそ舞台の役者さんなんか、逆に間隙をぬってみんなで飲み明かすのが楽しみだったり。「明日は公演休みだから」「夜の部だけだし」って、演技論を朝方までぶつけ合うみたいなイメージもあるし。

太賀 そういう場にいるのは好きですけど、いかんせん、喉弱いんで。あんまり調子に乗らないようにしようと。ほんと、喉さえ強ければ全然気にしないんですけど、そういうわけにもいかないので…とりあえず今回は見つめ直すってやつですね(笑)。

―自重というか、戒(いまし)める感じで(笑)。自分でもまじめだって自覚はあるんですか?

太賀 いやー、どうなんですかね。まじめなほうじゃないですかね(笑)。

―今、24歳の年男で、世代的に基本マジメというか。反抗期もなく、周りの空気を読んでおとなしいとされるところですよね。

太賀 そうやって育ってきたと思います、僕自身も。次男坊ですし、割と人の顔を伺いながら生きてきた人生なのかなと(笑)。

「会社員のほうが自分には遠かったかな」

―その一方で、役者さんでも破天荒だったり無頼だったり、周りでとんでもない人たちも見てきただろうし。そうじゃなきゃやれない仕事なのかなと思ったりはなかった?

太賀 憧れは強いですけどね、そういうものに対しての。でも、それを規制する力のほうが今、強いですから。足元すくわれたくもないし…っていうイヤな時代なんですかね(笑)。なんにもできないじゃないかって思ってしまうところもあって。

―ワイドショー的なものもね(笑)。では親の世代はもっとぶっちゃけたりできてよかったなぁ、みたいな?

太賀 いやー、先輩方の話とか聞いても羨ましいなぁって思いもありますし。まぁ、今も言わないだけでいろんなことはあるのかもしれないですけどね。

―役柄上、振り切った極端な演技も求められるでしょうし。自分の引き出しや経験値は当然いろいろ持っとくに越したことはないですよね。

太賀 そうですよね。でも経験値だけでやるっていうのもすごく限界があることだし。人を殺すこともできなければ、ドラッグやるわけにもいかないですから。そこは想像力との戦いかなっていう風には思いますけど。

―それこそ、子役時代からやってきて、もうキャリアが10年以上ですか。数多(あまた)の出演作がある中で、周りの役者さんを見て成長したのがやはり大きい?

太賀 役者さんに限らず、いろんな人と出会えるってのがこの仕事の醍醐味だと思っていて。そういう素敵な大人の方々にもまれながら、憧れながら取捨選択してきて、の繰り返しだった気がしますね。

―だいぶ早い時期に自分からやりたいって、この世界に入って。周りの環境は特に関係なかったんですか。

太賀 純粋にやりたいって思ったのは、やっぱTVドラマとか映画を見るのが大好きだったので。野球選手になりたいとか、宇宙飛行士になりたいのと同じ流れのひとつみたいな気がしますけどね。当時は漠然とでしたけど、やりたいと思ってることをやれてるのかなって。

―『ウォーターボーイズ』に影響されてとか、山田孝之さんに憧れたのもきっかけでという話ですが。

太賀 そうですね。でも、逆に言えば、どうやったら会社員になれるのかも全くわからなくて。そっちのほうが自分には遠かったかなって感じもしないではないですけど。

―なるほど、早くにこの世界に飛び込むと尚更ですかね。でも、やってみてそれこそ「自分に向いてるのか」「ずっとやっていけるのか」っていう葛藤とか、ぶつかるものもあったのではと。

太賀 「俺、この仕事向いてるのかな」って時はたくさんありましたし、これからもあると思うんですけど。でも若い頃から仕事して、陽の目は浴びてなかったけど、一応続けてこれて。そうすると、失っていくものも多くて、勉強だってそんなにできなかったですし、他の知恵とか技術をつけるみたいな時間もなかったので。逆にやれることが全く思い当たらないみたいな(笑)。

やっぱ若い頃から始めると、たぶん、みんな思うところな気がしますけどね。大学も行ってないですし。

―「俺にはもうこれしかない」っていう。今さら他の世界に行くほうが怖かったり?

太賀 怖いですね、やっぱり。まぁ他でやれる気もしないですから(笑)。

「絶望的な気持ちになる時もあります(笑)」

―ちなみにバイトもやったことないですか?

太賀 ほぼないですね。2週間だけハンバーガー店のバイトしてたことあって、全然なんにもできなくて(笑)。

―自分の育ったこの世界で、プレッシャーはありながらも、他にはもう行けないと。もちろん、人との出会いであり、演じることの喜びや情熱とか、魅力にハマってというのが一番でしょうけど。

太賀 そうですね。まぁ一概に「この仕事、最高だな」「やりがいがあるな」だけでやれてるわけでもないですけど(笑)。楽しいことだけではないし…これが仕事なんだなっていう風に思いますけど。

まだ24歳なんで、これから30年、40年続くのかぁと思うと結構、絶望的な気持ちになる時もありますし(笑)。でも、辞めるっていう選択肢は思い浮かばないですね。そうやって一喜一憂しながらやっていくような気はします。

―確かに、同年齢のコたちで大卒だったら、ようやく会社に入って、まだ1、2年くらい。でも自分はもう10年やっている中で、先々のこと含めて「どうなんだ?」って考える時期でもあるのかなと。

太賀 すごい思いますよね。だから、なんて言うんですかね…うーん、そんな簡単に「一生続ける」とか言えないですよね(笑)。

―それだけ厳しい世界だということを実感してるわけですよね。とはいえ、これだけ映画もドラマもコンスタントに多数出続けて。考える間もなく、どんどん仕事をこなす今までだったのかなと。

太賀 いやいや、そんなことないですよ。全然仕事ないなって時ももちろんありますし。作品だけ並べると、すごい数だなって思いますけど、すごく小さい役で1日仕事とか何本もありますから。

今はありがたいことに少しずつ仕事も増えてきて、そういう意味では充実し始めてるのかなとは思いますけど。そうやって認知されていくごとに試されてるような気もしますし。まぁそれは悪いことじゃないですけど。

―先ほどのまじめという話もそうですが、調子に乗るとかもなさそうな。でも試されて「毎回怖い」というのがいいのかもしれないですね。

太賀 そうですか? 毎回怖いですね。

―僕自身、もう25年近く、こういうインタビューとかやらせてもらってますが、慣れるってことはないですから。毎回怖くてドキドキ…今日もドキドキしてる(笑)。

太賀 あはは(笑)。やっぱそうですか。でも20年以上やられてるって、ちょっとすごいな。疲弊しませんか?(笑)

―ホントいろんな人と初対面でお話するわけですし、どっと疲れたりはありますけど。でもそれ以上にこうやって語らせていただく機会ってないですから。旅と同じで、好奇心と興味本意が勝るというか。で、毎回知らない出会いに怖々ドキドキしながら(笑)。

太賀 いろんなタイプがいますもんね。この連載も第1回が北方謙三さんなんですよね。スゴいヤバそうだなって(笑)。

―見た目はそうですけど、優しい方ですよ(笑)。そこから始まって、前回の二階堂さんまで繋がって。ちょっと前まで太賀さんとお話することになるとはというね。

太賀 ほんと面白いですね。

語っていいとも! 第51回ゲスト・太賀「『ゆとりですがなにか』は反響が大きくて…嬉しい誤算でしたね」

(撮影/塔下智士)

●太賀(たいが)1993年2月7日、東京都生まれ。06年に俳優デビュー。07年にはNHK大河ドラマに初出演、翌年には映画『那須少年期』で主役に抜擢。16年のドラマ『ゆとりですがなにか』では“ゆとりモンスター”山岸ひろむ役で注目を浴びた。代表作に『桐島、部活やめるってよ』『ほとりの朔子』など。1月11日からM&Oplaysプロデュースの舞台『流山ブルーバード』の地方公演がスタート。映画『海を駆ける』も5月公開予定。