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“死の瞬間”に立ち会った著者は何を感じたのか? 合法化された国で起きている「安楽死」をめぐるリアル

[2018年01月09日]

「初めて自殺幇助の現場に立ち会ったときは犯行現場にいるような気分でした。止めなくていいのか、と思って」と語る宮下洋一氏

治る見込みのない患者が自分の意思で死を選択する「安楽死」。日本では認められていないが、一部の国や地域では合法化されており、例えばオランダでは、安楽死が死因の4%に上るという。

『安楽死を遂げるまで』はその現場に踏み込み、間もなく死亡する予定の患者や残される家族たち、安楽死に携わる医師から反対派の人々まで、生々しい声を丹念に記録したノンフィクションだ。

著者はジャーナリストの宮下洋一氏。18歳で単身アメリカに渡り、その後スペイン・バルセロナの大学院でジャーナリズムを学んだ彼はヨーロッパを拠点に日本語、英語のほか4言語を操る語学力を生かして活動している。

安楽死に対する著者自身の迷いをも赤裸々につづった本書は、軽率な判断にブレーキをかけ、じっくりと考えるための材料を提供してくれる。

* * *

―安楽死というテーマに関しては、ほとんど白紙の状態で取材を始められたそうですね。

宮下 はい。本にも書きましたが、初めてスイスで自殺幇助(ほうじょ)の現場に立ち会ったときは、犯行現場にいるような気分でした。止めないでいいのか、と思って。だけど取材を重ねるうちに納得できるところも出てくる。その一方で生じる疑問もあり、それらが合わさって、自分の考えが形成されてゆきました。

例えば、本書でスイス、オランダに続いて取り上げたベルギーではそれまでの2国と異なり、末期がんのような肉体的苦痛を伴う症状の人だけではなく、重度の精神疾患患者に対しても安楽死が認められています。取材する前は、自分の中でそれは越えてはいけない一線だ、と思っていました。肉体的にはどこも悪いところのない人が死にたいって言っていたら、普通は止めますよね。

だけど実際に取材してみたら、ちょっと違ったというのがあって。「本人の意思があれば安楽死も可能」というだけで、実際に選択するしないは別として、自殺衝動への抑止力になるんじゃないかと思うようになりました。実際、取材相手の中には安楽死を認められたことで安心し、「もう少し生きてみたい」と言ってた人もいます。

―中盤からは、個人の意思を何よりも重んじ、死を個人のものととらえる欧米と、死を集団のものととらえる日本という対比が強調されるようになります。その認識は最後に日本を取材した後でも変わりませんか?

宮下 はい、そこは変わりません。いろいろ見てきて、自分は何を考えてるんだって自問自答したときに、実は僕は自分が思っていた以上に日本的なものを持っているのかなと思うようになりました。それを強く感じたのはスペインで起きた自殺幇助事件(同国では安楽死・自殺幇助は非合法)の遺族と話したときです。

事故で首から下が動かなくなった男性が、恋人の助けを借りて薬物自殺を遂げた事件で、亡くなった男性のお兄さんはひどく怒ってるんですね。けれども「じゃあ、もしあなたが同じ状態になったらどうするか」と尋ねたら、「俺は安楽死したい」と言う。弟が死ぬのは許せないけど、自分は安楽死していいと。言ってることはめちゃくちゃなんですが、それを聞いた瞬間に「とても日本人的だな、その気持ちわかるな」と感じたんです。家族ってこういうものなのかなと思って、ウルッときました。

そもそもスペインの田舎と日本の村落共同体は似てるところがあるんです。そういう場所で、それまでの取材とは違った形で感情を揺さぶられ、自分の中の日本的価値観を強く意識するようになりました。


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