週プレNEWS TOP 連載コラム "本"人襲撃 “死の瞬間”に立ち会った著者は何を感じたのか? 合法化された国で起きている「安楽死」をめぐるリアル

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“死の瞬間”に立ち会った著者は何を感じたのか? 合法化された国で起きている「安楽死」をめぐるリアル

[2018年01月09日]

―日本でも安楽死をめぐる議論が活発になりつつあります。

宮下 日本に帰ってくるたびに思うんですが、日本人に特徴的なのが犠牲心なんですよ。人に迷惑をかけないように自分を犠牲にする傾向があると思います。だから、もし安楽死が合法化されれば、周りの人や家族に経済面その他の迷惑をかけたくないという理由で選択する人が増えてくるでしょう。本心では生きていたいのに、迷惑を考えて自分を犠牲にする。

だとすれば、それなりの解決手段があるはずなんですよ、日本社会には。欧米人はあくまで個人主導で、カッコよく死にたがっているように感じられることがありますが、日本人にはマイナスの面を見せることも美徳として備わっているのではないでしょうか。

―なるほど。一方で、誤解に任せてものを言う人々も多いと思います。まさにこの安楽死という言葉で、許し難い大量殺人を正当化する者さえ現れました。そうした状況で、本書が与えうる影響についてどのようにお考えでしょう?

宮下 日本でアンケート調査をした場合、今の状況を見てると賛成派と反対派が半々くらいになりそうな気がしなくもないですね。僕としては「安楽死はそう簡単に認めてはならない」というところにメッセージを置いてます。

でも本って自分の都合のよいように読むものじゃないですか。だから例えば、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖(さとし)被告が読んだら「やっぱ自分の言ったとおりだ」と思うかもしれない。「私もスイス行って安楽死しよう」と思う人もいるかもしれない。雑誌で連載していたときも「私も死にたいから教えてください」みたいなメッセージが送られてきましたからね。いろんな読み方があると思います。

―安楽死のもうひとつの当事者である、医師についてお聞かせください。本書には強い信念を持って安楽死や自殺幇助を推進する医師たちが登場します。逆に、たとえ合法でも、最期の注射がなかなか打てずに泣きだす医師もいます。

宮下 ですから患者とその家族だけの問題ではないんです。医師も人間ですし、死なせる仕事なんて、自ら志願できる医師じゃないと務まらないでしょう。

そして安楽死に積極的に携わる医師たちは「安楽死ができなかったから自分の親はあんなに苦しんだ」とか、そういう経験を持っている人が多い。そこから使命感を培って活動しているのですが、でもそれはあくまで個人的な使命感ですよね。

ときどき思うんです。そうした方々の価値観が何かのきっかけで急に変わったら、自分がそれまでしてきたことの重さに、立ち直れないくらいの苦しみを味わうんじゃないかと。安楽死にはそうした問題もついて回るのでは、と危惧しています。

(取材・文/前川仁之 撮影/三野 新)

●宮下洋一(みやした・よういち)
1976年生まれ、長野県出身。ジャーナリスト。18歳で単身アメリカに渡り、ウエストバージニア州立大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。フランスやスペインを拠点としながら世界各地を取材。主な著書に、小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』『外人部隊の日本兵』など

■『安楽死を遂げるまで』
(小学館 1600円+税)
安楽死は、一部の国や地域で認められている正当な医療行為だ。超高齢社会を迎えた日本でも、昨今、容認論が高まりつつあるが、その実態はなかなか伝えられていない。著者は実際に安楽死が行なわれている国へ赴き、患者の「死の瞬間」に立ち会う。患者はどのような痛みや苦しみを抱え、自ら死を選ぶのか。そして残された家族はどのようなことを考えるのか。生々しい現場の声を丹念に拾い集めた衝撃のノンフィクションだ
安楽死を遂げるまで


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