ハリルホジッチ監督の采配にも厳しい目を向けなければいけないと語るセルジオ越後氏

今年は4年に一度のW杯イヤー。平昌五輪が2月末に終われば、世間もロシアW杯ムードに切り替わり、サッカーが大きな注目を集めることになる。日本代表にはぜひとも奮闘を期待したい。

ただ、そうはいっても昨年8月末にW杯出場を決めて以降の日本代表の戦いぶりを見ると、明るい展望を持ちにくい。特に、12月の東アジアE-1選手権はヒドかった。スポーツ紙などが掲げた「W杯へのサバイバル」というキャッチコピーとは裏腹に、出場した国内組のプレーは低調そのもの。北朝鮮、中国に互角の戦いを強いられると、3戦目の韓国戦に1-4と歴史的大敗。選手個々のプレーにしても、ハリルホジッチ監督の采配にしても、ホメるところが何も見当たらない。代表戦でこんな試合を見たのはいつ以来だろうかと思うくらいヒドかった。しかも、相手は宿敵の韓国だというのに。

確かに、海外組抜きのメンバー。さらにクラブW杯に出場する浦和勢、ケガの山口、清武、杉本らも欠いていた。でも、条件は相手もさほど変わらなかった。以前から僕は、国内組でも調子のいい選手はどんどん代表で試すべきと言ってきたし、今でも“海外ベンチ組”よりは、好調な国内組を使うべきだと思っているけど、さすがに今回の結果はショックだったね。

23人のW杯メンバー入りに向けてアピールできた選手はゼロ。むしろ今回は招集されなかった選手が得をした。3月に予定される親善試合に向けて、「国内組では戦えない」「本田、香川、岡崎も呼び戻すべき」という声が高まるのは仕方ないし、ハリルホジッチ監督もそうするだろう。

もっとも、そうした国内組のふがいなさとともに、何も手を打てなかったハリルホジッチ監督の采配にも厳しい目を向けなければいけない。何より、試合後の彼の「韓国が日本よりも強いことは試合前からわかっていた」という言葉には驚いた。代表監督がすべき発言ではないし、日本にとって韓国戦が持つ意味をわかっていない。また、たとえ相手が強くても、強い相手に勝つための仕事をするのが監督ではないか。

W杯で戦う3ヵ国(コロンビア、セネガル、ポーランド)は韓国よりもさらに強い。これでは「日本の選手の質ではW杯で勝てません」とギブアップ宣言しているようなもの。選手はそんなボスについていけるだろうか。普通なら解任されてもおかしくないくらい無責任な発言だったと思う。

W杯本番に向けた強化の場は3月の親善試合

率直に言って、サッカーが日本の社会に対して持つ影響力は、以前よりも衰えた。TVやスポーツ紙など各メディアでの扱いも小さくなった。負けても批判されているうちはまだいい。でも、E-1選手権がそうだったけど、最近は叩かれもせず、単にスルーされることが増えているように感じる。

もちろん、W杯6大会連続出場ともなれば新鮮さはなくなるだろう。出場して当たり前と思われても仕方がない。でも、盛り上がりに欠ける理由をそこだけに見出すのは違う。本田、岡崎、長友らの次の世代がなかなか代表を引っ張る存在になれない。期待を集めた選手が海外で継続的な活躍ができない。それが大きいように思う。

W杯本番に向けた強化の場は、大会直前を除くと、3月の親善試合しかない。昨年の終わり方が最悪だっただけに、今年はいいスタートを切ってほしいし、残るわずかな期間で、救世主が現れることを願いたいね。

(構成/渡辺達也)