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「中国人留学生殺害事件」で見えたもの──日本の裁判所は国際化時代に対応できていない?

[2018年01月19日]

東京地裁前で事件をレポートする「フェニックステレビ」東京支局長の李氏(中央)を、来日した他の中国メディアが囲むという異様な光景が…

日本ではほとんど注目されていないが、2016年に東京で起きた中国人留学生同士による殺害事件が中国で社会現象となっている

被害者となったのは女性留学生の江歌さん。彼女はルームメイトの劉シンさんと一緒に東京・東中野のアパートに住んでいた。犯人の陳世峰は劉シンさんの元恋人だったが、破局後も彼女に脅迫紛いのメールを送るなどストーカー的行為を繰り返していたという。

16年11月2日、彼女たちのアパートの外階段に潜んでいた犯人は、帰宅した江歌さんと揉み合いになった末、ナイフで彼女の頸部を刺して死亡させた。事件後、亡くなった江歌さんの母親は、犯人の死刑を求め450万人もの署名を集めるとともに、ルームメイトの劉シンさんに対してもブログで激しく非難したという。

これにより中国国内で報道が過熱し、昨年12月11日に東京地裁で開かれた初公判には中国メディアが大挙して押し寄せたのだ。

「週プレ外国人記者クラブ」第104回は、前編(東京で起きた「中国人留学生殺害事件」の狂騒)に続き、この事件を最も精力的に報道した「フェニックステレビ」東京支局長の李淼(リ・ミャオ)氏に話を聞いた。

裁判が終わった今も残る謎、そして、この事件によって浮き彫りになった様々な問題点とはーー。

***

─「判決後も残る謎」とは、具体的には?

 最大の謎は、凶器に使われたナイフについてです。私が東京拘置所で犯人に取材した際も、彼は「ナイフは自分のものではなく、劉シンさんのものだ」と主張していました。そして、そのナイフを江歌さんが取り出したので、奪おうとして揉み合いになった、と。犯人は劉シンさんが江歌さんにナイフを渡した瞬間を見てはいないものの、そうとしか思えないと主張しています。

一方、検察は、凶器は犯人が大学の実験室から持ってきたものだと主張しました。実験室からナイフのケースが発見されたとしていますが、このケースに犯人の指紋は残っていません。

結局、「ナイフが誰のものか?」という点について、裁判所は「犯人はナイフが劉シンさんのものだと主張しているが、劉シンさんは自分のものではないと証言している。よって、ナイフは劉シンさんのものではない」としました。あまり論理的とは思えないし、少なくとも私の中では謎が残っています。

─凶器が、犯人があらかじめ自分で用意していたものかどうかは、刑の重さを決める上で重要な要素となるはずです。しかも、被害者となった江歌さんと揉み合いになって刺してしまったのであれば、過失となる可能性もありますね。

 そうです。揉み合いとなって犯人は江歌さんの頸部を刺し、これが致命傷となったのですが、江歌さんが死亡した後も、さらに10数回、彼女を刺しています。犯人は被害者が死亡した後に刺したことに関しては殺意を認めているものの、最初に致命傷を与えたことについては「殺意はなかった」と言っています。そのため犯人側弁護士は殺人未遂を主張し、最初の刺突は故意によるものではないと主張していました。

─最終的に懲役20年の刑が確定したわけですが、同じ量刑が下った裁判が2017年10月に福岡地裁で開かれています。この事件の犯人はナイフや斧を使って被害者に59ヵ所の傷を負わせています。これと比べても、今回の判決は少し重すぎる気がします。また、福岡地裁の裁判では、求刑は懲役22年でした。

 今回の裁判では求刑通り、懲役20年の判決が下っています。弁護士を含めて日本の裁判事情に詳しい識者たちにも取材しましたが、こういったケースは「極めて異例だ」とのことです。

また、証人である劉シンさんは別室からモニターを通じて証言しました。法廷には彼女を非難してきた江歌さんの母親もいたので、ふたりが感情的に対立する可能性を考えての措置だと思いますが、これも異例のことです。

他にも異例と言うべき要素が数多くあった裁判ですが、裁判長は大挙して来日した中国メディアに神経過敏になっているように見受けられました。日本の裁判所が外国メディアから注目されることに不慣れであることは、日本人の司法記者でも多くの人が指摘しています。

言い方を換えれば、国際化時代に対応できていない。確かに、私も日本で10年以上、取材活動をしていますが、今回のように中国で大きな注目を集めた裁判は過去にありませんでした。


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