板門店で9日に行なわれた南北会談は約2年ぶり

韓国と北朝鮮による南北対話が急進展している。

元日に北朝鮮の金正恩委員長が平昌(ピョンチャン)五輪(2月9日開幕)への協力を表明してからわずか10日足らずで、北朝鮮の五輪参加が本決まりとなったのだ。1月9日、両国の軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)で行なわれた南北会談を取材した韓国紙記者が言う。

「韓国側のリクエストに応える形で、北朝鮮が選手団のみならず高官級代表団、応援団、芸術団やテコンドー演武団まで平昌五輪に派遣すると表明したのです。南北対話の動きを受け、五輪後の平昌パラリンピック期間中に実施予定だった米韓合同軍事演習も延期になりました」

韓国の平昌五輪実行委員会関係者がこう明かす。

「ひょっとしたら、南北統一チームが結成されるかもしれません。狙いはアイスホッケー女子です。もしこれが実現し、和平ムードが高まれば、アメリカも五輪期間中だけは軍事的圧力を控えるはず。事実上の“五輪休戦”が実現します」

ただし、この流れのなかで、新たにふたつの“焦点”が浮上しているという。前出の韓国紙記者が続ける。

「ひとつは安倍首相の平昌五輪開会式参加問題です。日本政府は文在寅(ムン・ジェイン)政権による日韓慰安婦合意の見直しに反発し、安倍首相が訪韓しない方向で調整を進めています。しかし、フランスのマクロン大統領など多くの国家首脳が開会式に参加するといわれるなか、安倍首相だけが平昌入りしないとなれば、日本は北東アジアの和平に協力する気がないと見られてしまいかねない。日本外交にとってマイナスでしょう」

五輪休戦明けの危機再燃

もうひとつの焦点は、五輪休戦明けの危機再燃。コリアウオッチャーはこう警告する。

「パラリンピックが閉幕する3月18日までに、南北対話に続き、北朝鮮が求める米朝対話のテーブルなどが準備されなければ、北朝鮮は再び“挑発モード”に戻ってしまう可能性が高い。そうなると、アメリカは米韓軍事演習を再開させて圧力を高め、4月上旬には米朝間の緊張が高まってしまいかねません」

さらに心配なのは、4月15日が故・金日成主席の誕生日、4月25日が朝鮮人民軍の創建記念日、6月25日も朝鮮戦争勃発日と、4月から6月にかけて北朝鮮の記念日が続くことだ。

「北朝鮮は昨年、4月から6月にかけて実に6度もの弾道ミサイル発射実験を行ないました。もし今年、この期間に北朝鮮が飛距離を抑えたロフテッド軌道でなく、通常軌道で米ワシントンまで到達するICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を行なった場合、米トランプ政権はいよいよ北の核ミサイル基地への先制攻撃に踏み切る可能性が高い。

そうなれば当然、北はミサイルによる報復攻撃を行ないますから、韓国や日本にも被害が出かねません」(コリアウオッチャー)

“五輪休戦”が実現しても、それはつかの間。本当の危機はパラリンピック後の4月にやって来る!?