変わってしまった体を見ると悲しくなることもあります。

グラビア界の“レジェンド”、熊田曜子が第3子の妊娠を発表。少子化の時代に3人もの子宝を授かったことをたたえる声多数。そして「生涯現役」を掲げ、抜群のスタイルを維持する彼女の次のグラビア復帰はいつ?

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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第3子を妊娠したと発表した熊田曜子さん。35歳の現在も昔と変わらぬくびれ体形を維持していると話題です。昨年も新作のグラビア写真集が発売されました。これまでに出した写真集は36冊。ギネスブックにも申請しているそうです。水着グラビアの仕事が心底好きと語る熊田さんは、妊娠出産に伴う体形の変化とは無縁のようです。

ところで、妊娠出産に伴う体形の変化って、どういうものかご存じでしょうか。なんとなく、たるむんだろうなあというイメージかもしれませんね。

妊婦は数ヵ月の間に10kg以上も体重が増え、おなかはスイカを入れたみたいに大きくなるので、腹部や太ももやお尻の皮が急に引き伸ばされて妊娠線というシマシマの模様や肉割れになることも。産後のおなかはぺったんこになるわけではなく、パンパンに伸びていた皮と脂肪の層が縮んで、ぷよぷよしたお肉の塊になっている状態です。

そこからは不眠不休で新生児のケアが始まり、ダイエットをする余裕なんてありません。熊田さんは赤ちゃんを抱きながらエクササイズをしたようですが、そんな器用なことができる人はごくわずかです。

一度伸びた靴下は元には戻らないように、産後の体形は以前と同じようにはなりません。たとえおなかが引っ込んでも、一度伸びた皮は張りを失って屈(かが)むとシワシワになりますし、太ももやお尻のシマシマは消えません。乳首も子供に吸われて、伸びたり変形したり。

変わってしまった体を見ると悲しくなることもあります。インスタに上がっている妊婦写真や産後の写真はどれも完璧。セレブはみんな、妊娠してもきれいだし、産後もすぐに細くなるのに…って。

世の大多数の夫婦は、たるんだ体で愛し合ってる

一方で、変化した自分の姿をそのままインスタに上げて「これがリアルな妊婦」「ママになったことを誇りに思う」とメッセージを出す女性たちもいます。私が住んでいるオーストラリアでは、妊娠線やたるんだ皮をそのままに、ビキニを着て赤ちゃんとビーチに来ている女性もよく見かけます。

私は産後ますます胸のあたりが痩せて、ゴツゴツと骨が目立つようになってしまいました。おなかにも横ジワが入っています。でも、2回も出産したら変化して当然だよな、と今も好きな水着を着て海を堪能しています。幸い、誰も二度見したりしません。おばあちゃんもビキニを着ているぐらいですから。

熊田さんの美しいボディラインは何度見てもため息が出ますし、体形維持の努力には敬意を払います。だけど世の大多数の夫婦は、お互いにたるんだ体で愛し合ってるんですよね。伸びた皮も、しぼんだ筋肉も、白髪も贅肉(ぜいにく)もさらけ出せる相手がいるって、幸せなことなんじゃないかなと思います。

小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送っている。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など。