「孤独担当大臣」の原点は、2016年6月に殺害されたジョー・コックス議員が立ち上げた「孤独対策委員会」

イギリスのメイ首相が「孤独担当大臣」(Minister for Loneliness)を新設するとぶち上げたのは1月17日のこと。その情報に「マジか!」と食いついたのは私、週刊プレイボーイ本誌編集・ヤノアツである。

彼女いない歴10年目、プライベートで遊ぶ友達いない歴15年目の33歳。募る寂しさにいよいよ耐えられなくなってきたし、このまま孤独に人生を過ごすのかなと考えると、背筋が寒くなる。だが一方で「群れない男」とか「孤高」とかカッコよくね?なんてことも思っていたりする。

なので、「孤独担当大臣」については「よけいなお世話だろ。しょーもな」と反感を抱きながらも…やっぱ気になるよ!

「孤独担当大臣」は何をするの? そして、日本の孤独な男たち、ていうか私のために必要なポストなの? 日英の“ソロ事情”に詳しい賢者に聞いた!

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まずは、イギリスが「孤独担当大臣」を新設した背景を探ってみたい。ロンドン在住の国際ジャーナリスト・木村正人氏に聞いてみた。

「近年、イギリスでは『孤独』な人が増えていることを国家的な問題としてとらえてきました。例を挙げると、孤独な人はアルコール依存症、薬物依存症、うつ病など肉体的にも精神的にも健康を損なうリスクが高く、そのことが国の医療費や病院のキャパを圧迫している、といった具合に。『ジョー・コックス孤独対策委員会』のまとめによると、孤独な人たちは年に320億ポンド(約4兆9200億円)の負担をイギリス経済に強いる恐れがあるとのことです。

また、表には出ていませんが“テロ対策”という側面もある。近年、イギリスではテロが頻発していますが、イギリスで生まれ育った孤独な若者がネットで国外の過激派の思想に触れることで『自分の苦しみは社会のせいだ』と考え、ホームグロウン型のテロを起こすという例がありますので」

なんだか、孤独であることを責められている気がしてきた。では「孤独担当大臣」は具体的に何をするんです?

「この国には、すでに孤独な人をケアするために掃除や話し相手になってくれるソーシャルワーカーが官民共にたくさんいるし、それぞれ大きな組織も存在しますが、あまり連携が取れていなかったので、まずはそこを強化するでしょう。

まだ旗揚げしたばかりなので私の推測ですが、孤独担当大臣に就任したトレイシー・クラウチ氏はスポーツや芸術などの行政を担う『文化省』の政務次官を兼務している。なので、例えば全国的なスポーツイベントを開催して、孤独な人が集まれるコミュニティをつくるといったことをやるのではないかと思います」(木村氏)

「孤独」と「不健康」の関係性とは?

ところで、少し話は前後するけれど、「孤独」と「不健康」って、そこまで関係があるもの? 『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)の著者で、コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏に尋ねた。

「大いにありますよ! 17年に、米ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授が発表した研究結果によると、孤独の健康リスクは『アルコール依存症に匹敵』『運動をしないことよりも高い』『肥満の2倍高い』とのこと。この発表は全米に衝撃を与えました」

確かに孤独は健康にはよくないかもしれない。でも男にとっては悪いことばかりじゃないですよ。ほら、「孤独が男を強くする」ってよく聞くじゃないですか。「それは孤独を美化しているだけでは? 先進国では孤独を社会問題として扱っていますが、日本人の特に男性は、孤独をロマンとして考えているフシがある。

こんなデータがあります。英シンクタンク『レガタム研究所』が集計しているソーシャルキャピタル(社会・地域における人々の信頼関係や結びつき)の充実度ランキングで、日本は149ヵ国中、101位。先進国では最下位で、決して豊かではないルワンダ、ザンビア、ガーナなどのアフリカ諸国よりも下回りました。ちなみに、国連が17年3月に発表した『幸福度ランキング』も、先進国で最下位です。

個人が孤独をよしとし、国も孤独な人が増えていることに対して何かしらの対策を打たなかったことが、これらの結果の一因なのではないでしょうか」(岡本氏)

◆もし日本版「孤独担当大臣」が誕生したら何をすべきか? 500人アンケートで考えた! この続きは『週刊プレイボーイ』7号(1月29日発売)にてお読みいただけます。

(取材・構成/黄 孟志 写真/時事通信社)