週プレNEWS TOP 連載コラム "本"人襲撃 あの事件で露見した川崎市が抱える社会問題の深層──「ヤバい場所なんだよ」「だから俺らもヤバいんだよ」

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あの事件で露見した川崎市が抱える社会問題の深層──「ヤバい場所なんだよ」「だから俺らもヤバいんだよ」

[2018年02月06日]

「川崎を取材し、描くことによって、現代の日本社会が抱える問題を浮き彫りにできるのではないかと思ったんです」と語る磯部涼氏

東京と横浜という、ふたつの大都市の間に位置する神奈川県川崎市。駅近郊には、ショッピング施設の「ラゾーナ川崎」やライブホールの「クラブチッタ」などのスポットもある。

しかし、駅から少し離れた所には風俗店や暴力団事務所が軒をなし、臨海部は犯罪発生率が高く、ドラッグや窃盗などに手を染め、アウトローな道に進む若者も少なくないという。

音楽ライターの磯部涼(いそべ・りょう)氏は、川崎の深層に迫るべく、地元出身のラップグループをはじめとする、川崎カルチャーの担い手に焦点を当てながら取材を重ねてきた。『ルポ 川崎』を上梓した磯部氏に聞いた。

* * *

―元の連載を書くきっかけとなったのが、「川崎中1殺害事件」と「川崎市簡易宿泊所火災」というふたつの事件だったそうですが、なぜこのふたつに注目したのでしょうか。

磯部 ふたつの事件を調べたり、実際に聞き込みを重ねていくうちに、背景に人種差別や貧困などといった、現代の日本社会が抱える問題があることがわかってきて、川崎を描くことでそれらを浮き彫りにできるのではないか、と思ったんです。

例えば「川崎中1殺害事件」では、被害者を跪(ひざまず)かせて首に切りつけた残忍な殺害方法から、「イスラム国から影響を受けたのではないか」という推測が記者の間で起こり、“川崎国”という言葉が生まれました。そしてその言葉が、加害者の少年がフィリピン系のルーツを持っていたこととつながって悪い意味で盛り上がりを見せていた「ヘイトスピーチ」を扇動、川崎でヘイトデモが繰り返される一因になってしまったんです。

また、聞き込みをするなかで、不良少年たちが「あんな事件は川崎ではありふれてるよ。事件が起こった河川敷は、リンチをする定番の場所だし」と平然と言っていたことにも驚きましたね。その後に発生した日進町の簡易宿泊所火災では、死傷した高齢者の方々が、実は生活保護を受けながら簡易宿泊所に泊まらされていた、という社会的背景が露(あらわ)になりました。

―一方で、ヒップホップなどをはじめとするサブカルチャーの側面からも、川崎のリアルな様相を取材されています。」

磯部 本書にも登場する川崎出身のヒップホップクルー・BAD HOPのメンバーたちには、実は2014年の時点ですでに取材をしています。メンバーのT-Pablowは、当時「高校生ラップ選手権」という大会で優勝して注目されるようになったのですが、話を聞いてみると、彼はそもそも高校に通っておらず、中学卒業後にアウトローの道へ足を入れかけていたというんです。それが優勝によって、ラップという「もうひとつの道」が開けたと。

そういう彼らを生んだ環境にも惹(ひ)かれましたし、彼らがラップを始めた頃は、それまでため込んでいたかのようなフラストレーションが、歌詞やラップの仕方に如実に表れていたんです。なので、実際に彼らのラップが生まれた場所に行きながら、彼らの話を聞いてみたいという気持ちもありましたね。

―現地での取材を進めていくなかで、大変だったことは?

磯部 まず、そこに住む大人たちは、外部からの興味本位の視線を警戒していました。なので、「そうではないこと」をまずはわかってもらい、人間関係をつくらなくてはいけない。そこが大変だったというか、努力した部分ではありましたね。

逆に、不良少年たちは外部からの興味本位の視線を内面化し、アイデンティティにしている(=セルフオリエンタリズム)ところがあります。例えば「川崎ってヤバい場所らしいよ」と言ってくる人の視線を内面化し「そう、ヤバい場所なんだよ。だから俺らもヤバいんだよ」みたいな感じになっていく。なので、彼らに「エグい話をして」というと、むしろ喜々として話してくれるんです。


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