昨季は、1年間を通しての活躍ができなかった大久保(左)と齋藤(右)。批判覚悟で移籍を決断したふたりが、それぞれ“復活”を期してシーズンに臨む

2月23日に、史上初となる金曜日の開幕戦でスタートする2018年のJリーグ。各チームは開幕に向けて準備を進めている最中だが、最も注目を集めているのは、ディフェンディングチャンピオンとして新シーズンに臨む川崎フロンターレだ。

昨季に初優勝を果たした川崎には、16年にスポーツ映像配信サービス会社「DAZN」と大型契約を結んだJリーグから多額の資金がもたらされる。

優勝賞金3億円に加え、理念強化配分金が3年総額で15億5千万円、J1均等配分金が3億5千万円と、総額22億円を手にすることが決定済み。今年は少なくとも16億5千万円を手にするだけに、このプレシーズンには“大物助っ人外国人”の獲得が期待されていた。

ところが、いざフタを開けてみると、自分たちの攻撃的スタイルに確実にフィットしそうな有力日本人選手を積極的に補強した。“名より実を取る”堅実な補強策を展開し、特に日本代表クラスのFWふたりの加入で前線の選手層は厚みを増した。

その代表格のひとりが、FC東京からフロンターレに復帰を果たした大久保嘉人だ。1月21日の新体制発表会で「去年ちょっと移籍して、外から川崎フロンターレの試合をほぼ毎試合見ていましたけど、やっぱり(川崎が)好きなんだと思いました」と、川崎に対するチーム愛を語った大久保は13年から16年まで川崎でプレーし、13年からは3年連続得点王に輝いた実力の持ち主。チームを離れたのはわずか1年ということを考えれば、川崎のサッカーにフィットすることは確実だ。

しかも、チームには昨季に得点王を獲得した小林悠もいるだけに、得点力はリーグ随一とみていい。仮にふたりが1トップのポジション争いをすることになっても、リーグ戦とACL(アジアチャンピオンズリーグ)の“ダブルタイトル”を目標とする川崎にとっては、二枚看板をローテーションで起用できるメリットも生まれる。果たして、鬼木達(とおる)監督はこのふたりをどのように起用するのか。そこが最大の注目点となりそうだ。

さらに川崎は、横浜F・マリノスの前キャプテンである齋藤学をフリートランスファー(移籍金なし)で獲得した。今回の移籍によって横浜FMのファンから“裏切り者”のレッテルを貼られてしまった齋藤は、高速かつテクニカルなドリブル突破を最大の武器とする国内屈指のウインガーだ。

昨季は同チームで中村俊輔(現ジュビロ磐田)が背負っていた背番号10番とキャプテンマークを引き継ぎ、開幕からセンセーショナルな活躍でチームを牽引(けんいん)した。川崎には家長昭博と阿部浩之というライバルも存在するが、齋藤の加入によってウイングのポジションが豪華な陣容となったことは間違いない。

齋藤は、昨季に大きなケガをしてリハビリを続けているが、実力的にはスタメンを獲得する可能性が高い。自身も「今夏のロシアW杯出場のために、今回の移籍を決断した」と公言しているように、気合いも十分だ。ちなみに、故障は3月から4月には癒(い)えるとみられている。

資金力を蓄えながら、確実に戦力をアップさせた川崎。“懐”に余裕を持って挑む今シーズンも、優勝候補の筆頭となりそうだ。

(取材・文/中山 淳 写真/アフロ)