実際の縮尺よりはるかに大きく竹島(韓国名:独島)が描かれた統一旗。アイスホッケー合同チームの練習試合会場で物議を醸した。

韓国と北朝鮮の南北関係が何かと注目される平昌五輪。合同入場行進が行なわれた開会式や、統一チームが結成される女子アイスホッケーなどで国旗の代わりに使われているのが、白地にブルーで朝鮮半島が描かれた「統一旗」だ。

ところが、その半島の右横にしばしば出現する小さな「シミ」が、韓国政府を悩ませている。

シミのように見えるのは、韓国が領有権を主張している、島根県の竹島(韓国では独島[トクト])。日韓関係史に詳しい日本人研究者がこう苦笑する。

「竹島の広さは東京の日比谷公園ほどにすぎず、島というよりちっぽけな岩礁。本来なら統一旗にはとても描けないサイズですが、韓国では領有権をアピールすべく、わざと大きめにデフォルメして描き入れることがあるんです。韓国国土の約2%を占める済州(チェジュ)島とほぼ同じサイズに描かれた旗もあるほどです」

ただ、五輪でこの“独島バージョン”が使われると、五輪の政治利用を禁じたIOC規約に抵触してしまう。そのため韓国政府は1月23日、五輪では竹島のない統一旗しか使わないと決定を下した。

ところが2月4日、仁川(インチョン)市で行なわれた女子アイスホッケー南北合同チームの練習試合で、竹島入りの統一旗が掲げられ、日本の菅義偉(すが・よしひで)官房長官が韓国政府に外交ルートから抗議をする騒ぎとなった。

慌てたのは韓国側だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権はかねて安倍晋三首相に五輪での訪韓を要請してきたのに、五輪会場が竹島入りの統一旗だらけという事態になれば、日韓関係をぶち壊してしまいかねない。

「そこで韓国統一省は菅官房長官の抗議後、異例の早さで会見を開き、あらためて『五輪では独島のない統一旗しか使用しない』と、日本とIOCに釈明する形となりました」(韓国紙・東京特派員)

だが、これで一件落着というわけではないようだ。東京特派員が続ける。

「統一省関係者を取材してみると、その約束を守る自信がイマイチ感じられません。というのも、実はすでに五輪での南北共同応援ブームを当て込んだ民間業者が、独島入りの統一旗を大量に作製し、かなりの量が市中に出回ってしまっているんです。

しかも、会場ゲートなどでチェックを徹底して旗を回収できたとしても、普通の統一旗に青ペンで点をチョンと足すだけで“独島バージョン”になってしまう。どんなに頑張っても完全に排除することはできない…と、統一省関係者は弱気ですよ」

北朝鮮の様々な要求に振り回され、国内の保守派からは突き上げを食らい、そして統一旗問題まで…。文政権の悩みは尽きない。

(写真/時事通信社)