かつてカー娘と注目された“マリリン”本橋麻里は31歳、1児の母に。3度目の五輪で悲願達成を目指す!

華々しく開幕した平昌五輪。注目の競技・種目がめじろ押しだが、ズバリ、週刊プレイボーイはカーリングを推したい!

男女共に戦術、組織を磨き上げた最強布陣で挑む今大会、初のメダルどころか、アベックでのメダル獲得も夢じゃない!

■女子が目指すのは「チビでも金!」

女子の五輪の過去の成績は、1998年長野が5位、2002年ソルトレイクシティが8位、06年トリノが7位、10年バンクーバー8位、14年ソチ5位だ。どの大会も健闘は見せたが、メダル獲得どころかベスト4進出も果たせていない。10ヵ国で争うラウンドロビン(総当たりの予選)で勝ち越した経験もない。ハウス(ストーンを投げ入れる同心円)の中にせっせと石を積んでも、体格に勝る欧米の選手はパワーショットでそれを蹴散らす。そんなシーンがどの大会でも散見された。

多くのチームスポーツがそうであるように、やはり体格差はそのままいかんとも埋め難い実力差となって、結果に直結してしまうのか。

しかも今回の平昌代表のロコ・ソラーレ北見(以下、LS北見)のメンバー5人の平均身長は154cm。リザーブのマリリンこと本橋麻里を除くとさらに下がって152cm。これはおそらく参加10ヵ国中、最も低い数字でセカンドの鈴木夕湖(ゆうみ)はミニマムの145cmだ。過去、海外で「ジュニアのチームなのに強いのね」と声をかけられることも一度や二度ではなかったという。

しかし、それこそが日本の、LS北見オリジナルのストロングポイント、トルク(回転数)に長けたスイープを生む。

カーリングの代名詞的プレーであるあのブラシこすりはスイープという。日本カーリング協会のHPには「ストーンの通過する前のアイスを溶かすことによって、ストーンの距離を伸ばしたり、直進性を高めたり、カールを始めたストーンをより曲げたりといったように、ストーンのコントロールをすることが目的」と明記される重要な役割だ。

女子の世界ランクは上からカナダ、スイス、ロシア(今回はOAR)、スコットランド(イギリス)、スウェーデンと、体格に恵まれたチームが並ぶ。日本は次いで6位だが、上位のほぼどのチームも、スイープは氷にブラシを押しつけ、体重を預けるような姿勢で行なっている。

しかし、体重が軽いLS北見のスイープはトルクで勝負する。欧米勢のゴシゴシというパワースイープに対し、ヘッドスピードと回転で互角以上に渡り合う。ものすごいスピードで正確に動くブラシの速さは、注目ポイントのひとつだろう。

小よく大を制す“日の丸スイープ”が確立

「実は数年前まではスイープが自分たちのウイークポイントだなって思っていて、正直そんなに強いと思ったことはなかったんです」

そう鈴木が教えてくれたことがあったが、16年の世界選手権で銀メダルを獲った際には、本場カナダのファンにこう声をかけられたという。

「『スゴくスイープが強かったね』って言われて、『そうなんだー』って気づきました。体も小さいから力強いスイープがうらやましかったけど、そういう見方をしてもらってたのかって」

弱点をお家芸に。日本らしい、小よく大を制すの精神満載の“日の丸スイープ”が確立されたといっていいだろう。

鈴木と共にLS北見のスイープを支えるリードの吉田夕梨花(ゆりか)も、当初は悩みを抱えていたという。

「評価されにくいポジションで、注目されるのはバックエンドばかりと思っていた時期もありました。でも、最近は理解してくれる人が増えてきたから、それも減ってきました。楽しくやっています」

派手なテイクアウト、デリケートなドローを決める役割に比べれば、地味な役回りである。しかし、彼女らのスイープなしにはメダルはありえない。スキップの藤澤五月(さつき)も試合に勝つと「ウチには優秀なスイーパーがいるので、プレッシャーはなかった。いい場所まで(石を)運んでくれました」とスイーパーへの感謝は忘れない。

また、吉田夕は自身のインスタグラムでリードあるいはスイーパーのその役割を「いつか子供たちが憧れるポジションにしたいなと思う」とつづっていたことがあるが、平昌での彼女の勇姿に魅せられるファンは少なくないはずだ。

昨年9月の五輪代表決定戦に勝利した直後、彼女たちはあの柔道・谷亮子の名言になぞらえて言っていた。

「チビでも金」

実現できるかどうかは、自身らを「チビ部」と呼ぶ、鈴木と吉田夕のスピードあふれるスイープ次第かもしれない。

●後編⇒カーリングは女子だけじゃない! メンバー変更なしで、家族より密な“シンクロ”男子も魅力的だ

(取材・文・撮影/竹田聡一郎)