日本も核廃絶に向けて動きだす!? 鈴木宗男(左)×佐藤優が語るICANノーベル平和賞受賞の真実とは?

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

昨年12月、ノーベル平和賞をICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が受賞したが、自民党は核廃絶に後ろ向きの姿勢を維持している。しかし、ICANが公明党の支持母体である創価学会と密接な関係にあることはほとんど知られていない。今回の受賞を機に、自民党も変わるしかない、と佐藤氏は語る。

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鈴木 今回は、佐藤さんに2018年の世界がどう動くかについて、聞いてみたいと思います。

佐藤 わかりました。今年は「核廃絶」と「対話と妥協」が重要なキーワードになってきます。

まず、核廃絶について説明します。今現在も、日本は北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程圏内に入っていますが、今後核兵器がさらに小型化すれば、この中距離ミサイルに核弾頭を搭載して、日本のどこでも核攻撃が可能になります。そのとき、日本はどうすればよいか? これはもう、北朝鮮とは仲良くするしかないんです。

核ミサイルの脅威は、意思と能力によってつくられます。中国とロシアは、日本を20回~30回も壊滅させられる核ミサイルを持っていますが、われわれは中露に怯(おび)えていません。それは、彼らに日本を破滅させる意思がないからです。だから、北にも日本を破滅させる意思を持たせないようにする。

では、どうやってやるか?

そのためには、中、露、米を含め、核廃絶の流れをどうつくっていくか、まじめに考えなくてはいけません。

そのようななかで、昨年ノーベル平和賞をICAN(アイキャン/International Campaign to Abolish Nuclear Weapons:核兵器廃絶国際キャンペーン)が、受賞したことはとても大きな意味を持ちます。

現状では、日本政府は核兵器禁止条約には後ろ向きです。自民党の一部には「日本も核武装について議論してみるべきだ」と核武装に道を開こうとする人々もいます。

一方、連立与党を組む公明党はどうか。ICANがノーベル平和賞を受賞したとき、創価学会の幹部が、オスロで「公明党の立場もあるが、日本は核兵器禁止条約を結ぶべきだ」と言った。

実は、2006年の「SGI(創価学会インタナショナル)の日」(1月26日)に、池田大作創価学会インタナショナル会長が「今後、10年以内に核廃絶の道筋をつける」と提言しています。

「対話と妥協」が重要なカギ

その翌年の2007年にICANが発足している。実はICANとSGIは、協力関係にあるんです。だから創価学会幹部もオスロに行っていた。なので、今回のノーベル平和賞受賞の半分は、創価学会が受賞したみたいなものなんです。

連立与党の自民党は、このあたりをよくわかっていませんが、「核廃絶」は今年の重要なテーマになってきます。実は10年や20年のスパンで考えれば、北朝鮮を恐れることはありません。なぜか。鈴木さんもかつては、ソ連が大嫌いでしたよね?

鈴木 はい、そうでしたね。

佐藤 しかし、ソ連崩壊の過程のなかで我々は、領土問題は解決するなと思った。それは、ソ連が崩壊してロシアとなって、自由、民主主義、市場経済が入ってきたからです。北朝鮮でも配給制ではなく、ひとりひとりの国民が働いて自分の食べ物を手に入れ、子供に運動靴やランドセルを買ってあげられる社会になれば、国民は権力者に対して面従腹背になる。独裁者もそれは無視できない。

北朝鮮も、10年~20年で見れば、そんな方向に向かっていくと思います。だから今、僕は「対話と妥協」が重要なカギだと思うんです。すると、今の日本政府の言っているような「北に対するできる限りの圧力」というのは、ちょっと古い。時代はその先へ行っています。

★後編⇒佐藤優×鈴木宗男が2018年の世界を分析「北朝鮮との戦争は遠ざかりつつある」

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。衆議院議員時代から長年北方領土問題の解決のため、日々奔走している。昨年、公民権が7年ぶりに回復し、衆院選に出馬。衆議院議員の鈴木貴子は長女

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外交官時代は、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として精力的に活動中

■東京大地塾毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室で行なわれる新党大地主催による国政・国際情勢などに関する分析・講演会。参加費無料で鈴木・佐藤両氏と直接議論を交わすことができるとあって、毎回100人前後の聴衆が集まる大盛況ぶりを見せる。詳しくは新党大地の公式ホームページへ