アーティスト活動にとどまらず、音楽プロデュサーとしても活躍するtofubeats

現在、テレビ東京系で放送中のドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』の主題歌『ふめつのこころ』がデジタル販売限定でリリースされた。

この楽曲を手がけるのは、歌手・作詞・作曲・DJという自身のアーティスト活動にとどまらず、音楽プロデュサーとしても活躍する新世代の旗手・tofubeats。ヒップホップからJ-POPまで幅広い音楽を内包して制作される楽曲は、ジャンルという型にハマらない独自の世界観を持っている。

そんなtofubeats氏は、2012年にインディーズでリリースした『水星feat.オノマトペ大臣』で若者たちの心を掴み、一躍ブレイク。翌年には森高千里をフィーチャリングしたメジャーデビュー曲『Don’t Stop The Music』が話題となり、平成世代を代表する音楽家と呼ばれるようになった。

今回のインタビューでは、さらに注目を増している彼の音楽家としての原点や創作に対する情熱を伺った。インターネットが日常と共にあった平成世代の音楽とは?

■インターネットから生まれたアーティスト

―tofubeatsさんは、平成世代・インターネット世代を代表するアーティストと呼ばれることが多いですよね。

tofu ネットがなかったら今、アーティストとして活動しているわけがない、という感じですね。音楽を始めた時はニコニコ動画とかYouTubeができる直前だったと思います。

―インターネットがあることによってどんな利点が?

tofu 音楽制作を始めてすぐにYouTubeができたことで、作った曲をアップして、いろんな人に届けやすくなりました。誰かが見たり聴いたりしてくれるって、それだけで力になるじゃないですか。

―バンドとかではなく、なぜひとりで音楽制作をしようと?

tofu いわゆるイケていない側の人間だったので、バンドを組めなかったんです。ベースを買ったりもしてみたんですが、うまくバンドに溶け込めず…。1週間で友達にあげちゃいました。それでも音楽をやりたくてネットで調べてみたら、バンドを組めるようなコミュニケーション能力がなくてもひとりで曲が作れるDTM(デスクトップミュージック)に出会ってたんです。これなら「自分にもできそう」って思えましたね。

―ネット上でも、コミュニケーションは必要かと思うのですが、積極的に活動できたのはなぜでしょう?

tofu 昔はネット上のやりとりを匿名ですることが多くて、別の人格でやるのが普通だったじゃないですか。

―確かにハンドルネームなどを使っていましたよね。

tofu 「tofubeats」も元々、ハンドルネームですからね。だから面と向かっては言えないようなムチャなことも言えたし、相手もムチャを言ってくる。中には、ちゃんと「ここが悪い」と具体的に言ってくれる人もいて。自分も素人だったので、どうすればよくなるのか聞いたら教えてくれて「好きなものが一緒の人が集まるとお金が発生しなくても助け合ってくれる」ということが原風景としてあるんです。

―なるほど。やっぱり自分の中でネット世代という意識はありますか?

tofu もちろんありますね。バンドマンはいつの時代も絶対いますけど、打ち込みのソロで出てきて、歌うし曲も作るし裏方の仕事もするし、DJもやるっていう自分みたいな人ってあまりいないような気がして。そういうことを気兼ねなくいろいろ調べてやってみるのが、自分たちの世代以下の特徴なのかなって思っています。

原点はブックオフ

■原点はブックオフ

―tofubeatsさんはブックオフを巡って、たくさんJ-POPを聴かれたと聞きました。

tofu そうです。単純な話で、中学校の頃ってお小遣いが決まっているじゃないですか。その中で最大限に楽しもうと思ったら、レンタルか中古しかないんですよ。売れたJ-POPは中古で安くなるので、その中から自分でいいものを見つけていました。今でも行きますよ。

―そこからご自身の活動へのフィードバックはありますか?

tofu ありますね。DJって、昔は高くてみんなが持っていないレコードを持つことが貴重だったんですけど、今の時代はインターネットでなんでも探せるじゃないですか。だから、みんなが知らないものから自分の好きなものセレクトすることが個性になっていくんです。僕の場合は、それを探す手段がブックオフだったんですね。いろいろな店舗を回って掘り出しものを探すっていう楽しみもありますし(笑)。

―そんなCDの中から影響を受けたものといえば?

tofu メジャーデビューシングル『Don’t Stop The Music』は、森高千里さんを呼んだ曲なんですけど、それこそブックオフがなかったら森高さんの曲に出会っていなかったですね。当時の森高さんを全く知らないけど、偶然見つけた曲が素晴らしくて。おかげで、オファーして作ることができたんです。そう考えると、ブックオフでCDを見つけるということは、僕の活動の根幹を成しているかもしれない。

―すでに『水星』では若者に絶大な支持を得ていましたけど、その『Don’t Stop The Music』でtofubeatsを知った人も多かったかと。正直、ここまでの反響があると思っていましたか?

tofu 思っていなかったです。当時のワーナーの担当が「バカなふりをして聞いてみる」って言ってくれて、それで決まったんですよ。そもそも『水星』も今田耕司さんの曲をブックオフで見つけてきて、ループさせて作った曲なので。本当にブックオフからここまで来られたと思います。

―その2曲もですが、コラボをすることが多いですよね。そのメンツも幅広くて、無作為に選んでいるようにも見えます。

tofu 自分的には無作為じゃないんですけどね。同じような人を呼んでも、同じような曲になっちゃうので、散らしているというのもあるかもしれません。ただ、なんとなくやっている人じゃなくて、アーティストとしてのパーソナリティがしっかりしている人にオファーしています。

突然「歌詞って大事だ」って…

―なるほど。ちなみに曲の印象が強いですが、歌詞はご自身の中で重要なものでしょうか。

tofu メジャーデビューしてから大事になりました。それまではノリ重視で書いていたんですけど、突然「歌詞って大事だ」ってわかってきて。「歌詞は歌った人に返ってくる」っていう、つんく♂さんのインタビューを観て、そうだよなと思いました。

『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』の歌詞も、朝から晩まで喫茶店に入り浸って時間をかけて書いていましたね。主演の西野七瀬さんのことも調べて、彼女が好きな後輩とかに「これを読んだら西野七瀬が好きになる」っていうブログを送ってもらったり(笑)。

―ブログですか!

tofu  ファンの人が想っている人物像が大事なので。ファンの西野さん像と、ヒロインのあいちゃんがリンクしている部分を出せたらいいなと。原作を読み込んで、要素を洗い出して作っていきましたね。

―ちなみに、西野七瀬さんには、実際に会われたんですよね?

tofu  はい。めっっっちゃくちゃ可愛かったです(笑)。

―(笑)。

●後編⇒新世代の旗手・tofubeatsが神戸で音楽を制作し続ける理由「油断したらシーンに取り込まれちゃう」

(取材・文/加藤真大 撮影/神田豊秀)

■tofubeats(トーフビーツ)1990年生まれ、神戸在住。「水星 feat.オノマトペ大臣」がネットを中心に若い世代の注目を集め、2013年4月に収録アルバム「lost decade」を自主制作にてリリース。同年、森高千里をゲストボーカルに起用した「Don’t Stop The Music」でメジャーデビューを果たす。「First Album」「POSITIVE」「Fantasy Club」といったアルバムをリリースし、幅広い年代からも支持を集めている。