1月中頃から、各キャリアショップや家電量販店などでは次々にiPhone 8の「一括0円」ポスターやPOPが登場し、おトク感を打ち出し始めた

iPhone 8が発売されてから5ヵ月余り。最新型のiPhoneに早く買い替えたくても、手持ちの古いiPhoneの「2年縛り」がまだ解けなくてウズウズしている人も少なくないはず。

ところがここにきて、驚きの情報が飛び込んできた。なんと、iPhone 8がMNP(モバイルナンバーポータビリティ)で「一括0円」、つまり「端末代がタダ」で売られているというのだ! 買い時は今なのか? 緊急調査した!

■一括でも機種変でも基本の割引額は同じ

まず取材班はスマホ安売り情報をゲットする王道に従って、ツイッターで「#iPhone8 #一括0円」で検索してみた。すると出るわ出るわ、その中には一括0円に加えて「現金2万円還元!」など、さらなるおトク感をアピールする販売店のツイートも多数見かけられた。

一方、街に出て家電量販店やキャリアショップの店頭を眺めても、「iPhone 8 一括0円」や「一括1円」と大書したポスターやPOPがイヤでも目に入る。

コレはひょっとしてチャンス到来!? 2年縛りの解約金を支払ってでも、今すぐ他社に乗り換えてiPhone 8に買い替えるべきなのか?

「いえいえ、甘いうたい文句をうのみにしてすぐに飛びつかないほうがいいと思います」

こう語るのは、スマホの料金事情に詳しいフリーライターの後藤一泰氏だ。

「確かにツイートやPOPでは『一括0円』が前面に出ているため、『iPhone 8がタダでおトクに手に入る』と思われがちです。しかし、多くの場合はキャリアが定めた本体価格から、古いiPhoneの下取り価格を引き、さらにシェアプランや家族割などの契約、有料コンテンツへの一定期間の加入など、販売店ごとにさまざまな条件を組み合わせて一括0円を実現させているのです」

それでも、発売当初はお目にかかれなかった一括0円で買えるなら、機種変するよりコッチを選んだほうが割引される額もデカいのでは?

「いえ、そうでもありません。カラクリはこうです。一括0円でiPhone 8を購入する場合は、まず間違いなくキャリア指定の割引や契約プランを適用しなければなりません。それはドコモでいうところの『端末購入サポート』やソフトバンクの『一括購入割引』、auなら『ピタットプラン』での契約です。

実はこうした割引や契約は、月々の利用料金から一定額を割り引く『月々サポート』『月月割』『毎月割』の対象になりません。つまり割引を最初に受けるか、契約中に受けるかの違いで、実際のところ見た目のインパクトほどの差はないのです」(後藤氏)

う~ん。ひょっとしてボクらはダマされている?

なぜ今、キャリア各社はこんな売り方を?

「わかりやすい例として、iPhone 8(64GB)をドコモオンラインショップで、端末購入サポートを使った他社からの乗り換えと、ドコモユーザーの機種変更で購入した場合の割引額を比較してみましょう。

『カケホーダイライトプラン+データMパック(5GB)』で下取りなしの場合、端末代金は端末購入サポート分の5万7672円を引いた3万1104円(1296円×24回)となります。

一方の機種変更では本体価格が8万8776円(3699円×24回)となりますが、月々の利用料金から月々サポートとして毎月2403円が24ヵ月間割り引かれ、その割引額の合計は5万7672円となり、端末購入サポートと同額なのです」(後藤氏)

なーんだ。結局、一括0円でもフツーに機種変更で買っても、基本の割引額は一緒で、あとは下取りだったり、販売店独自のキャンペーンの内容によって多少の差が出てくるってことか。

■8を早い時期に売り切りたい

ところでなぜ今、キャリア各社はこんな売り方をするのだろうか? スマホ業界の裏事情に詳しい、青森公立大学の木暮祐一(こぐれ・ゆういち)准教授は次のように指摘する。

「グローバル市場では、同時期に出たiPhone Xよりも8の人気が高いというデータもありますが、日本においては『新しい端末、上位機種がよく売れる』という傾向が強く、8が大量に売れ残る可能性があるのです。キャリアはアップルから販売ノルマを課せられているといわれていますから、8を早い時期に売り切ってしまいたいはず。そこで頃合いを見て、一見魅力的に映る『一括0円』を打ち出すことで利用者の買い替え意欲を刺激、契約に持ち込もうとしているのです。

また、過去に端末の割賦金を滞納して“ブラック”になり、分割払いの審査が通らない人でも契約できるようにする狙いもあるのではないでしょうか。一時期横行していた短期解約を繰り返しての転売行為などは、高額な解約金を設けることで対策をしているわけですから」

では今回の一括0円で、iPhone 8を格安に、しかもおトクに手に入れることは果たして可能なのか?

良い条件に巡り合える可能性も

「各キャリアが用意する料金プランをきちんと把握し、販売店の条件をしっかり理解できる人なら良い条件に巡り合える可能性もあるでしょう。

大容量のパケットプランの契約が義務づけられていても、実際にそれくらい使う人ならなんの問題もありませんし、有料コンテンツにしても、最低利用期間などでかかるコストと割引額を天秤(てんびん)にかければ、おトクかどうかわかるはず。また、一括0円で買っても結局は2年間縛られるわけですから、最終的には2年間トータルの支払い額をしっかり考えて選ぶべきだと思います。

なかには一括0円で買うと、逆にトータルの支払い額が増えてしまうケースもあります。1月の週末、家電量販店で店員とiPhone 8の価格交渉をしたところ、『今日は週末のキャンペーンで下取りを入れてもらえば月々の割引額を増額できます。一括0円でお買い上げになるよりも、2年間合計のお支払い額は少なくなりますよ』という条件を提示されました」(後藤氏)

ツイッターの内容をうのみにして契約したはいいけど、アレレ……とならないよう、まずは条件をしっかり確認することが必要ってことか。

(取材・文・撮影/本誌「一括0円iPhone」特捜隊)