カラまわりの冒険をする旅人マリーシャの影

ウズベキスタンの西部にある街ヒヴァ。二重の城壁に囲まれた旧市街は世界遺産に登録され、『ドラクエ』のような街並みが残されている。

宿に着くと、シーズンオフのせいか先客はひとりだけのようで、狭い4人部屋のベットのひとつに男性の物らしき荷物が置いてあった。「部屋に知らない男とふたりきりか…」

なるべくとっつきやすそうな国の人だといいなと願っていたら、部屋に帰ってきたのはアジア人男性。英語で挨拶を交わしたけれど、話してみたら日本人だった。てか、東大卒業生だった!

そして、彼はこう言った。「一緒にカラまわりしない?」

はて? 空回り? そりゃあ確かに私はよくひとりで空回っているけれど…。やっぱり頭の良い人って変わってるなぁ、などと考えつつアホ面になっていた私に気づいたのだろうか、東大先生は「カラ」が「古代ホラズム王国時代の都城遺跡」であることを教えてくれた。

難しい話は右から左であったが、とにかくカラは私が思っているものでも韓国の女性アイドルグループでもなく、ウズベキスタンの見どころのひとつ。

そうだ、近くの宿には早大卒のユメちゃんが泊まっているし、考古学を研究する彼女ならきっと興味があるはずだから誘ってみよう。

3人で“カラまわり”だ!

ブハラから6時間運転してくれたシェアタクシー運転手

世界遺産に登録されたヒヴァの街

早速、運転手付きの車をチャーターし翌朝出発すると、車内では高学歴ふたりの“歴史トーーーク!”が始まった。

そのレベルの高さについて行けない私が、「スキタイって何? “スキ焼き食べタイ”の略としか思えないんですけど!」と話の腰を折ると、ふたりは「遊牧騎馬民族のことだよ。マニアックな話だから知らなくても大丈夫(笑)」と慰めてくれた。

シルクロードを旅する者として、自分の“おバカ”加減を情けなく思いつつも、白熱する歴史トークにウトウトしていると、ひとつ目のカラに到着。

車を降りる時、運転手が私に向かって「バカ~」と言ってきたのでドキッとしたが、それは「馬鹿」ではなく「パカ」で、ロシア語で「バイバイ」とか「またね」という意味だったようだ。

イスラム以前に西部ウズベキスタンの要衝として栄えた古代遺跡アヤズ・カラ

そして、カラに向かって歩き始めると、砂漠の中にポツンとある、小高い丘の上のアヤズ・カラは想像していたよりもカッコイイ。

丘の頂上に上りつめると、そこには明らかに人がいたであろう形跡が残されていた。城壁の中には、階段や部屋のようなところやアーチなどがあり、謎めいた遺跡に私はワクワクしてきた!

アーチのようなところ

アヤズ・カラの麓にあるユルタ(移動式住居)では宿泊もできるらしい

ブランコが大きすぎて全然こげない

奇跡の大発見に爆笑!?

そして私が、やれこの地層がミルフィーユみたいだとか、地面がチョコレートブラウニーみたいだとか言っていると、ふたりがその表現を感心してくれる。誉められて気分の良くなった私はやる気スイッチを押され、なんだか勉強する気になってきたぞ!

先生方に何か面白い歴史を簡単に教えてくださいと頼むと…、

「モンゴル人のアミール・ティムールはサマルカンドを中心とした巨大帝国を作った人でね、今、この国はティムールを国一番の英雄として持ち上げまくっているけど、実はウズベク人はティムール帝国を滅ぼした人たちなんだよ。

インドに逃れたティムールの子孫が建国したのがムガル帝国。だから、あの有名なタージ・マハルを作ったシャー・ジャハーンは実はティムールの子孫なんだ…」

おお、さすがわかりやすい! ふたりのおかげで不思議と勉強が楽しい。しかし、いきなり詰め込んだせいか、学んだ内容も時間が経つにつれ忘却へ…。私の脳ミソよ、カラまわりしてないで活動してくれ。

脳ミソがカラまわりするマリーシャ

カラまわりを続けていくと、それぞれ作りに個性があったり、石器のようなものも落ちていたりして面白い。私たちは考古学者や探検家にでもなったような気分で夢中になっていた。

これは石器かな?

穴があったら入りたい

「もしかしたら、ここで偉大なる遺跡を発見しちゃうかもね!」などと言っていると、ふたりが私に向かって叫んだ!

「ヤバイ! マリーシャ、こっち来て! 奇跡の大発見であります!

マジ!? 私がダッシュで駆け寄ると、そこにあったのは、な、な、なんとまさかの…!

「おチン〇ン!!」

低学年男子が大喜びのあれです。

石を並べて作ったおチン〇ンの絵と、何語であろうか、たぶん「チ〇コ」と書かれているであろう文字(日本語でなかったことにいささか安心)。広々としたスペースにのびのびと作られたアートはなかなか巨大で立派な作品であったが、この偉大なる古代遺跡の中に一体、誰がこんなものを…。

まさか古代人の残したものであるはずがなく、きっと現代人のイタズラでしょう。

「やだ~」と言いながら、このくだらなすぎるアート作品に、東大卒生も早大卒生もおバカな私も学歴関係なく、一同大笑いしたのであった。

奇跡の大発見! 古代遺跡に残された石のアート

地球を見晴らしている気分

高学歴の旅人ふたりとおバカ旅人の私

【This week’s BLUE】アヤズ・カラの麓に落ちていた謎の植物

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第177回「どこか日本人に似ている? 私も誇りたい! ウズベキスタン人が親日の理由」

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898