選手たちに声を出させ、打撃練習を一斉に行なうなど独自色を出す石井打撃コーチ。昨年まで5年間広島のコーチを務め野手陣強化に貢献した。 ※写真は明治神宮野球場。

長野冬季五輪以来のメダルラッシュに沸く平昌五輪に押され、報道レベルでは明らかに例年より影が薄かった今年のプロ野球キャンプ。そんななか、球界関係者から静かに注目されているチームがある。昨年は球団ワーストの96敗を喫して最下位に沈み、監督含む首脳陣がガラリと代わったヤクルトだ。

「鬼軍曹的な宮本慎也ヘッドコーチの就任で、チームのムードは一変しました。キャンプ序盤、早出の朝8時から居残り組の夜8時までという“12時間練習”が話題になりましたが、ヤクルトではちょっと記憶にない出来事(笑)。それでも選手はへたることなく練習に励んでいます」(スポーツ紙デスク)

さすがに疲労がたまるキャンプ中盤には12時間練習はなくなったというが、それでも夕方まで室内練習場での個人練習は続いているという。球団関係者はこう語る。

「報道では知名度の高い宮本ヘッドが目立っていますが、実際にグラウンドで存在感を発揮しているのは新任の石井琢朗(たくろう)打撃コーチと河田雄祐(ゆうすけ)外野守備走塁コーチ。今やセ・リーグ最強となった広島野手陣を鍛え上げた彼らがチームに元気を注入しています」

例えばキャンプ中盤のある日の練習、石井コーチは常に選手に声を出させ、フリー打撃を5~10人で一斉に行なわせるなど休む間を与えない。河田コーチも細かなベースランニングの指導に熱を入れ、立ち止まるヒマがないほど。グラウンドには昨年までと明らかに異なる活気が漂う。

「多くの場合、野手に対する直接指導は両コーチに任せられ、宮本ヘッドは小川淳司新監督と共に見ているだけ。それでも練習試合の後は、勝ちゲームでもベンチで選手にひとつひとつ“ダメ出し”をする。昨年までの『言わなくてもわかるだろう』という雰囲気は消え、意識から変えようという方針です」(球団関係者)

もちろん、ムードが変わればすぐに勝てるほど甘い世界ではない。セ・リーグ某球団のスコアラーはこう語る。

「打線は上位チームに匹敵する迫力ですが、結局このチームの課題は投手陣の弱さ。新外国人投手が20勝するとか、若手が大化けするとか、そういうプラスαがないと厳しい。それに、毎年ケガに悩まされているチームなので、これから主力に故障者が出ないことも浮上の最低条件になるでしょう」

ただ、それでも前出の球団関係者はこう明かす。

「昨年100近く負けたチームがいきなり優勝だとか、そんなおこがましいことは言えない(笑)。でも、最低でも“G(巨人)”より上には行きたい。外に向けて公言することはなくとも、これが首脳陣や球団幹部の本音ですよ」

同じ東京を本拠地とする巨人のクビを取る―。それは十分にありえる、と思わせるキャンプを新生ヤクルトが送ったことは間違いない。メジャー帰りの青木宣親(のりちか)のプレーも含め、オープン戦も引き続き要注目だ。