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「18歳成人式」ショックで激震に怯える着物業界ーー逆転の発想で“振袖特需”を仕掛ける革命児とは

[2018年03月04日]

着物業界の“革命児”、東京山喜の中村社長

今年1月に起きた成人式“はれのひ騒動”の最中、着物リサイクル店・たんす屋を展開する東京山喜の中村健一社長は『はれのひ』破たんの予兆をいち早く察知し、“被害者救済”の流れを作り、業界への風評被害を最小限に食い止めた。その判断の的確さと初動の早さは見事なものだった(前回記事参照)。

取材中、中村社長の先見性の高さには何度も驚かされた。例えば、『はれのひ騒動』が何を意味するか?を問うと、「この騒動を契機に、着物業界の旧態依然としたビジネスモデルに引導が渡される」と即答した。意図するのはこんな見通しだ。

「着物マーケットは全体で2800億円。そのうち、成人式の振袖の市場規模は680億円と大きく、パイの奪い合いは激しさを増すばかり。需要を先取りしようと、2年先、3年先の成人式を見越して、業者はグレーな方法で入手した個人情報を頼りにDMを送りつけ、家の固定電話にガンガン営業をかける。『はれのひ』の場合も、元従業員が複数のワイドショー番組に出ては『1日400件、電話させられていた』なんて話していました。

これは、30~40年前の業界の“必勝パターン”。ただ、個人情報保護法が施行され、今やスマホが当たり前の時代。固定電話への営業は今回の騒動をきっかけに決定的な打撃を受けます。そこから抜け出せない会社は『はれのひ』と同じ道を歩むことになるでしょう」

東京山喜の場合、90年代から従来の販売事業を脱却し、消費者のタンスに眠る“40兆円分の着物”に目を付け、99年に立ち上げた着物リサイクル店『たんす屋』がヒット。全国120数店を構える業界のトップ企業へと躍進した。(前編記事参照

「社長についていけば間違いない」「どんどんアイデアが湧き出てくる人で、刺激になる」「社員に寄り添い、社員に夢を見せてくれる」――東京山喜で働く社員の中にはその経営手腕に魅せられている人が少なくない。同じくそこに吸い寄せられるのか、同業他社からの転職組が多いのもこの会社ならではだ。

中村社長が経営者として意識していることはひとつ、「時代の変化を会社の成長エンジンにする」だ。そして近い将来、業界を崩壊させかねない「大きな変化が起きる」とも予見する。

それは成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることによって起きる。昨年末、政府は民法改正案を提出する方針を固めた。今年の国会で成立すれば、3年程度の周知期間を経て、2022年には“18歳成人”が施行されることになる。

この変化に着物業界は反発。成人が18歳になれば、成人式も18歳時になる。18歳は高校3年生。高3の1月といえば、センター試験など大学入試の直前だ。そんな時期に開催すれば、参加者も振袖需要も激減するのは必至…。これを阻止しようと、18歳成人になっても「成人式の挙行は20歳で維持してほしい」というのが業界団体の言い分で、昨年12月には法務省など関係省庁の大臣に要望書を提出している。

目下、『はれのひ』騒動の余波で、2、3年先までの顧客を囲い込んでいた業者に「二の舞いはご免」と予約キャンセルが相次いでいる。完全に冷え切っている中、“18歳成人式”が加われば、680億円の振袖市場は吹っ飛びかねない。業界が猛反発するのも当然といえば当然なのだ。

だが、中村社長はこの動きに加わらない。むしろ「“18歳成人”に合わせて成人式を2年前倒しにする自治体は多いだろう」と冷静だ。その上で、早ければ2022年に訪れる時代の変化を会社の成長エンジンと捉え、粛々と“仕込み”を始めている。


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