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ヒップホップカルチャーとドラッグは別物――クラブ規制問題で「リスクゼロ」を世間に約束する危うさ

[2018年03月04日]

「ゼロリスク」は、みんなが信じたいだけの共同幻想だと語るモーリー氏。

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがヒップホップカルチャーとドラッグカルチャーについて語る!

* * *

音楽業界やクラブ好きの間ではよく知られていた東京・渋谷の老舗(しにせ)クラブが先日、風俗営業法違反容疑(無許可営業)で摘発されてしまいました。クラブ界隈(かいわい)では同店は“健全に音楽を楽しむ箱”と見る人が多く、SNSなどでは逮捕された店主の人柄や店の素晴らしさを訴え、取り締まりの不条理さを嘆く声が多々見られます。

僕もクラブでパフォーマンスをする人間のひとりとして、現状の“歪(ゆが)んだ法律”はおかしいと思っています(もっとも警察はすべての無許可営業を取り締まっているわけではなく、近隣からの苦情も含め、いろいろ理由はあるようですが)。

一方、その少し前には日本のヒップホップシーンの黎明(れいめい)期から活躍する有名ラッパーが大麻所持で逮捕され、このときは仲間内からも、「ヒップホップが市民権を得ようとしていたときに…」「みんなで襟を正そうとしているときに何をやってくれたんだ」など、非難の声が上がりました。ただ個人的には、ラッパーが大麻をやっていたことはそんなに騒ぐことか?とも思います。もちろん現在の日本では大麻は違法ですし、ただでさえ世間から悪いイメージを持たれがちな業界ですから、彼らがそういうリアクションをするのもわかりますが、あんなに袋叩きにする必要があるのか、と。

なぜ、ふたつの事件をあえて並べたのか。僕はどちらの議論も、あまりにも「健全さ」を前提としすぎていると思ってしまうからです。

風営法の改正運動を契機に組織されたロビー団体は近年、クラブの健全性をひたすらアピールしています。かつてのクラブは確かにドラッグが蔓延(まんえん)していたが、今のクラブにはドラッグなど一切ない。僕らは音楽が好きで、踊っているだけ。だから活動や営業を認めてくれ―。彼らはそう言う。しかし、本当にそんなことを約束できるのでしょうか?

結局、これは原発の安全神話と同じだと思います。市民権を得るために「リスクゼロ」を世間に約束をすることの危うさ。原発は安全です。事故なんて起きません。だから安心してください。それと同じで、クラブは健全です。ドラッグなんて誰もやっていないし、ヒップホップカルチャーとドラッグカルチャーは別物です。そんなヤツらは俺らが許しませんから安心してください…。

交渉時のレトリックとしてはわからないでもありませんが、それで話を進めてしまうと、後々なんらかの問題が発覚したときに一斉に潰されてしまいかねない。すべてのクラブにドラッグが一切ない、という言い分が“方便”にすぎないことは、多くの関係者がわかっているはずです。「ゼロリスク」は、みんなが信じたいだけの共同幻想ですよ。

だから、もうウソはなしで、全部透明に議論をして、最終的にメリットがデメリットを上回ることを証明しましょう。その正攻法でしか、明るい未来は来ません。2020年に向け、日本を訪れる外国人は増える一方ですから、ナイトタイムエコノミーをよりベターな形で推し進めるにはどうすべきか。健全さ、潔癖さだけを追い求めれば、本来得られるべき便益、そして次の文化を育む土壌は手にできません。多少汚い土に触れるからこそ美しい花が咲くのだとすれば、その「汚さの度合い」を議論すべきではないかということです。

Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。『スッキリ』(日本テレビ)、『報道ランナー』(関西テレビ)、『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)、『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)、『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)などレギュラー・準レギュラー出演多数。

■2年半におよぶ本連載を大幅加筆・再構成した待望の新刊書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(小社刊)が好評発売中!


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