本気になれば地方議員に転職できる!? その方法を考えてみた! *写真はイメージです

子育てや教育、高齢者の介護など、日々の生活に身近な問題を扱うのが市区町村などに設置される「地方議会」だ。そのため「地方自治は民主主義の学校」ともいわれる。

それを担う地方議員たちはというと…なんだか“やらかし”が多すぎ! だが、俺でもやれる!?

そこで、月5日出勤で月収60万円超も可能だという地方議員の“オイシイ”実態を紹介した前回記事に続き、新時代(?)の転職先として「地方議員」になる方法をマジメに考えてみたい!

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当たり前だが、議員になるためには選挙で勝たなければならない。地方議会選挙の当選難易度は、どのくらいなのだろうか? 大田区議のおぎの稔(みのる)氏(日本維新の会)はこう話す。

「私が初当選した15年の大田区議選では、定数50に65人が立候補しました。競争率でいえば1.3倍です」

倍率はそんなに高くないように見えますね。

「確かに衆議院の小選挙区のように、定数1を争う選挙と比べれば競争率は低いでしょう。ただ、定数は50でも、45議席ぐらいは現職が固めてしまうんです。残りの5議席をまったくの新人と“選挙が弱い”現職が争うイメージです。私自身、偉そうなことは言えませんが」(おぎの氏)

実際は狭き門?

「意外とハードルは高いですよ。特に地方選は投票率が4割、低いと3割台のこともあり、無党派層の影響があまりなく、基本的には固定層を積み上げた人が当選する。現職は、4年間公費で報酬をもらいながら、自分の政治活動もできるというのも強みです。

大田区議の場合、報酬月額は61万8000円でボーナスは年3回。23区の区議なら、所得税や年金・保険料を引かれた手取りは、年収換算で800万から900万円ぐらいです」(おぎの氏)

ちなみに前出の立花孝志氏が当選した昨年の葛飾区議選は、定数40に対して候補者は59人。競争率は約1.5倍だった。

ここでもうひとつデータを紹介しよう。15年4月に行なわれた統一地方選では、全国372町村のうち、89の町村議会が無投票当選だった。北海道浦幌(うらほろ)町議会議員選挙のように、定員割れしたケースは4町村(ほかに東京都神津島村、新潟県粟島浦村、長野県南牧村)。当時の浦幌町議の報酬は月額17万5000円だが、誰かが立候補すれば当選する可能性は低くなかった。

楽をしようと思えばいくらでも楽はできる

「ただ、市区町村議会の選挙なら有効投票数の1%台の得票でも、当選することもありますが、範囲が大きい都道府県議会は定数も減るので10%程度は獲得しないと当選できないですよ」(おぎの氏)

さて、先ほどの立花氏に聞いた限りでは地方議員はかなり楽な仕事に思えた。おぎの氏はどうだろうか?

「忙しいですよ。ただ、確かに地方議員は、楽をしようと思えばいくらでも楽はできると思います。でも、普段からまじめに活動しようと思うと、やっぱり時間もお金もかかる。私は地元のお祭りやイベントの手伝いなどで、土日は完全になくなりますし、区政レポートを作って有権者に政策を伝え続けなければならない。だから『楽です』とは決して言えませんね」(おぎの氏)

■立花氏直伝の地方議会選必勝法!

地方議会の議員選挙には、日本国籍を有する25歳以上の人で、選挙区の住民票と3ヵ月以上の「居住実態」があれば誰でも立候補できる。

居住実態とは、実際に選挙区に住んでいるかを問うもの。水道や電気といった公共料金の支払い額が著しく低いと、議会や選挙管理委員会の調査が入り、最悪「当選無効」とされることもある。

その代表例は、「美人すぎる市議」として話題を集め、12年2月に埼玉県新座市議に当選した立川明日香(あすか)氏(当時27歳)だ。新座市内にある彼女の住居において、選挙前の3ヵ月における水道などのライフラインの使用実績がほぼなかったことが判明。選挙管理委員会に「居住実態なし」と判断され、「当選無効」となってしまった。

さて、政令指定都市以外の市議や区議の場合、選挙への出馬に必要な供託金は「30万円」とされている(町村議会の場合は0円)。

ただ、地方議会だと供託金が没収されるのは、

「有効投票総数の10分の1を定数で割った数以下の得票」

の場合のみ。例えば定数50、有効投票数10万の地方選に出馬した立候補者は、仮に201票で落選したとしても、供託金は戻ってくることになる。国政選挙が「供託金300万円で、得票が有効投票数の10分の1以下だと没収」ということから考えると、ずいぶん甘めな設定といえる。

「生活保護受給者も出馬できます。わが党には執行猶予中に当選した議員もいる。ある意味、地方議会選は、すごく公平な競争を実現していると思いますよ」(前出・立花氏)

それでは、当選するにはどうすればいいのか?

西東京市で、政党の後ろ盾がない無所属ながら3期連続トップ当選を果たしている森てるお市議(通算5期)に勝つ秘策を聞いた。

「『秘策』といえるものはありませんが、選挙公報をしっかり出すことは有効です。私の場合は選挙6ヵ月前から個人通信で日頃の政治活動を広めていきました」(森氏)

「無所属」で出馬するのはやめたほうがいい

森氏によると、西東京市議の報酬は年間約900万円。年間拘束日数は約150日という。

「私の3期目に市議の報酬引き上げが持ち上がった際、私は強く反対し、次の選挙では『引き上げに賛成した議員を落とそう』と主張して戦いました。その結果、トップ当選しました」(森氏)

このときの選挙では、議員報酬引き上げに賛成した現職4人が落選している。

前出の立花氏も具体的なアドバイスをしてくれた。

「既存政党の支援なんて、簡単に得られるものではありません。でも『無所属』で出馬するのはやめたほうがいい。自分の訴えたいことが決まっているなら、その主張がひと目でわかる名称の政治団体を作るべきです。私の場合は『NHKから国民を守る党』でしたが、これは投票所の記入台にも記載されるので、最後までアピールできた。

どんな政党だって名乗るのは自由! 『犬猫殺処分ゼロ党』とか『LGBT偏見差別なくそう会』とかね。もちろん、それが有権者に本当に訴えたいことならば、ですが」

立花氏が続ける。

「できるだけ早くに引っ越して地元になじむ。そして、まずは自分の政治活動内容を書いたビラをポスティングして空気を温め、アウェー感を除去することが大事です。ポスティングを業者に頼むと1軒当たり約7円。5万世帯で35万円。葛飾区のように20万世帯だと140万円くらいかかります。わが党の実例としては、選挙3ヵ月前に引っ越して尼崎市議になった武原正二くんがいます」

17年6月の尼崎市議選には42の定数に61人が立候補。武原氏は2780票を得票して24位で当選した。

「彼は仕事をしながらの立候補だったので、30回ほどしか駅前で活動していません。ただ、その前に党としてポスティングはした。その結果、約35日の政治活動で当選したんです」(立花氏)

ところで、立花さん……あまりにも、いろいろぶっちゃけすぎじゃないですかね?

「確かに、この記事で『自分も葛飾区議選で立候補したい』という人が増えたら次の選挙でライバルが増えるわけで、私にとってはデメリットです。

でも、それは私利私欲でしかありません。有権者に立候補への興味を持ってもらうことは、公務員たる区議としてやるべきこと。最終判断はあくまでも有権者です!」(立花氏)

筋が通っているような、開き直りのような……。

とにかく、ひと口に地方議員といっても幅広く、バラエティに富んでいることは、今回登場してくれた人たちを見ればわかってもらえたと思う。

次回の統一地方選挙は来年4月。みんな、準備期間は十分あるぜ!?

(取材・文/畠山理仁)