映画『坂道のアポロン』で深堀百合香を演じる真野恵里菜ちゃん

3月10日公開の映画『坂道のアポロン』。昭和の長崎を舞台に高校生たちの友情と恋、そしてジャズをテーマに描く青春ストーリーだ。

その中で、重要な存在となる深堀百合香を演じる真野恵里菜ちゃんに「女優」インタビューを決行! 週プレ本誌に何度も登場してくれた真野ちゃんはいつの間にか“大人”になっていた?

* * *

―『坂道のアポロン』素晴らしかったです。本当に「立派に女優さんになったなぁ」と感動しました! ハロプロを卒業して女優になって、もう5年が経つんですね。…というか、アイドルを始めた頃から考えると、もう10年!

真野 そうなんですよ。デビューが16、17歳なので。今年、27歳になります。そういえば、今年はちょうど「アイドルとして5年」「女優として5年」の年なんですね。全然意識してなかったですけど。

―ということで、今回は「女優」をテーマにお話を伺えればと! まずは、この10年を振り返って…記憶としては女優としてのほうが近いから、この5年のほうが印象深いかもしれないですけど。

真野 でも、芸能界って「この世界に入った時に精神年齢が止まる」みたいな話をよく聞くんですよ。もちろんアイドルを卒業して環境が変わった分、大人になったなって部分もあるんですけど。根本的なところは変わらないなって思いますね。ワガママだし、すぐ悔しかったり、不安になって泣くし、怒るし(笑)。デビュー当時と変わらないなって。

―今も泣いたりするんですか?

真野 あります。例えば、お芝居をしていて「今のままじゃダメだな」ってわかってるんですけど「じゃあ、変えるにはどうしたらいいか?」って考えると、いろんな感情が溢(あふ)れて涙が出たりするんです。昔は単純にピアノを間違えて泣いて、先輩の加藤紀子さんに「すぐ泣くんじゃない」と叱られて怒られたりしてたんですけど(笑)。今は、涙の形は変化してきてるけど、感情の部分はアイドル時代よりも豊かになったなって思います。

―感情が豊か、ですか。

真野 なんだろう…。歌の上手い下手っていうのは明確にわかるじゃないですか? 踊りも踊れる踊れないとか、喋りが上手い下手とか。でも、お芝居に関しては人それぞれ受け取り方が違うなって。私はこう思ってやっているけど、他の人が見た時には違う意味にとられたりとか。

自分は「この役はこういう人間なんだ」って考えていたけど、監督と話したら理解が違ったということもあるんです。それで「あっ、いろんな角度からの見方があるんだな」って気付いて。以前より、いろんな考え方や感情を受け入れられるようになってきました。

理解できない時は「わからない」ってちゃんと言えるようにもなりましたね。これって“ハロプロあるある”だと思ってるんですけど、とりあえず「ハイ!」って返事をして「返事だけはいいな!」って先生に怒られるっていう(笑)。

―そう聞くと、「わからない」と言えるのも、かなり大人になったと感じますね。若い時はその恥ずかしさやカッコつけに流されて、わかったふりをしてしまいがちですもんね。

真野 そうですね。そういうところが素直になりました(笑)。

真野恵里菜ちゃんが演じる深堀百合香。可憐さと大人の魅力を併せ持つ女性だ

綺麗な姿を見せるだけが役者じゃない

―女優を始めて「アイドルとはこんなに違うんだ!」と思ったことって他にありますか?

真野 ハロプロの時は、いかに大人数の中で埋もれないために自分を見せるか。みんなの視線を自分に集めるかってことを考えていたんです。でもお芝居って、それぞれの役があって、キャラがあって、みんなのピースが集まって作品を作り上げてるから。「自分!」って、埋もれないことばかり考えていたら作品を壊してしまうんだなって。

アイドルを辞めた当時はそんなふうに素直に考えられなかったんです。周りから「真野ちゃんって負けず嫌いだよね」とか「我が強くて頑固な部分があるよね」って言われて。アイドル時代はそれってある意味、褒め言葉だったんですけど、2年くらい経った時に「あれ? これ違う?」って気付いたんです。「真野ちゃんは頑固で話を聞かないよね」って言われてるんだって。

―「私は今、ダメ出しをされているんだ!」って?

真野 そう、途中で気付いたんです。アイドルの時は「みんなに見てもらいたい」「みんなに好かれる真野恵里菜」っていうものを作ろうとしていたんですけど「役者って好かれる、好かれないだけじゃないな」って気付いて。お芝居を通して、人に嫌われる部分を見せたり、時には犯罪に手を染める役をやったりもする。「このコ、可哀想」って思わせたり「このコ、腹立つわー」って思わせられるのは、お芝居の醍醐味なんだ。綺麗な姿を見せるだけが役者じゃない、いろんな感情を見せるのが役者なんだって。

―確かにアイドルとは大きく違いますね。

真野 そういう発見がいろいろありました。撮影現場には演出部、撮影部、照明部、録音部、美術部とかいっぱい部門があって、私たちは“俳優部”で、あくまでスタッフの一部なんです。たまたま前に出る役なだけで一番じゃない。

この作品を作るために他の部のみんながカメラの後ろで一生懸命準備してくださったものを全部受け取って表現する、そういう役割なんだって考えた時に作品作りがより楽しくなったっていうか…。「自分をよく見せよう」って思わなくなったことですごい楽になって。もっと人間的でいいんだなっていう。

アイドルの時は…なんて言うんだろう、みんなにカワイいって言われるのが仕事だったけど、それがプレッシャーになりすぎて、ちょっと太ったりした時期もあったので(笑)。だから当時の自分の写真を見ると、単純に「太ってたなー」っていうよりも「この時期、ギラギラしてたなー」みたいな気持ちになりますね。

―いやー、考え方も本当に素晴らしい女優さんになってます!(感涙)

●後編⇒『坂道のアポロン』でミステリアスな女性を演じる真野恵里菜「大人になって腹黒になりました(笑)」

(取材・文/篠本634[short cut] 撮影/山口康仁 (C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館)

■真野恵里菜(まのえりな)1991年4月11日(26歳)神奈川県出身。2009年にハロー!プロジェクトよりメジャーデビュー。現在は本格的に女優として活動。その他、最新情報は公式ブログ、公式ツイッター【@erina_mano】、公式インスタグラム【@erinamano_official】をチェック!

■映画『坂道のアポロン』は3月10日から全国ロードショー。詳しくは公式サイトまで