大谷の初登板は1回1/3を2安打2失点(自責点1)。投じた31球の内訳はストレート22、フォーク6、スライダー2、カーブ1。地元紙は「記念品を(外野のファンに)与えるのはうまかったが、ほかはさえなかった」と辛口評価

品定めを目論(もくろ)んでいた向きからすれば、一本目の刀は「思ったほどでは」というのが正直なところだろう。

2月24日、大谷翔平はブルワーズとのオープン戦でまずピッチャーとしてデビューした。ふたつの三振を奪ったものの、ホームランを打たれるなど2失点。最速156キロのストレートは指にかかりすぎたり抜けたりと、メジャー球を操ることはできなかった。

しかし、大谷にとってこれは想定内だ。これまでも彼はオフの間に鍛えた体と磨いた技術を、開幕までに「音合わせ」(大谷)してきた。まして今年はボールやマウンドなど、これまで定数だった値が変動している。それだけ音合わせの作業は煩雑になり、時間がかかるのも当然だ。

ピッチャーとしては伸びしろだらけの大谷だが、それでもメジャーリーガーを驚かせるだけのスペックは持ち合わせている。大谷は言った。

「1回目の登板からビシビシ決まることはないので、例年通りかなという感じです」

誰よりも冷静で客観的なのは、大谷自身だったようだ。

(取材・文/石田雄太 写真/共同通信社)