「いいチームに来たなと常に思っています」と語るエイバルの乾。

ロシアW杯イヤーの今年、ハリルジャパンの攻撃の切り札として期待を集めているのが乾貴士だ。

バルセロナやレアル・マドリードなどの強豪クラブがひしめくスペインにあって、躍動を続けるドリブラーに話を聞いた!

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乾貴士がスペインのエイバルに移籍したのは2015年の夏。若い頃から「スペインでプレーしたい」と言ってはばからず、ドイツでプレーしていた4年間も「別にビッグクラブとかじゃなくていい。スペインの1部ならどこでもいい」と言い続けてきた。その夢を渡欧5シーズン目にしてついに実現させると、当初こそコンスタントな出場機会を手に入れるのに苦労したものの、すぐにチームに溶け込んでいった。

昨年5月、2シーズン目の最終節には敵地カンプ・ノウでのバルセロナ戦で2得点し、一躍脚光を浴びることに。3シーズン目の今季はすっかり左MFのレギュラーとして定着。4得点を挙げるなど(第27節終了時点)、チームを牽引(けんいん)する存在になっている。

―スペインに来て3年目、今はフィジカル、メンタル、プレーと、とてもうまく噛み合っている印象があります。

 それはありますね。俺、スペインに来てから楽しいことしかないです。基本的にプレーを楽しみたいタイプなんですけど、海外に来て初めて「楽しくやれているな」と思えています。

―ドイツ時代は違った?

 ドイツのときは楽しめなかった。試合に出ていてもボールも来ないし、試合に出られなかったら「(チームメイトに対して)なんであの選手が試合に出ているんだ」と思ってしまうし。でも、ここでは1年目であまり試合に出られなかったときでも、別にそれに対しての文句はなかった。試合に出られないのは自分のせいで、誰かのせいにしたり、監督のせいにするというのはなくなりました。

―ドイツが合わなかった?

 ずっとスペインでやりたかったから、そこでやれているのがうれしいんじゃないですか。でも、チームにもよるかもしれないですよね。俺もエイバルしか知らないので、もし違うチームに行っていたら、もしかしたら文句を言っていたかもしれない(笑)。

エイバルは監督にしても、チームメイトにしても、本当にいい人しかいないんですよ。それにこっちの人はみんな腐らないんです。ドイツだと腐る選手がいるから、それに影響されて(自分も腐る)、みたいなところがあった。でも、エイバルではゲーム形式の練習でも、全員が100パーセントでちゃんとやる。だから、ひとりだけ腐ってはいられないというのもあります。

―メンディリバル監督は選手全員にチャンスを与える監督だと聞きました。

 監督は全員のことを信頼していると言っているし、それはウソじゃないと思います。試合に出てないグループの練習も全部見るんです。ドイツでは基本、監督ではなくてコーチが見ます。それに比べたら監督がちゃんと見てくれるのはうれしいし、そこで頑張れば、というのがある。数字に表れない部分も全部見てくれるし、それが自分には助けになりました。めっちゃフランクで、選手と距離も置きませんし。

―でも、そういう監督だと知っていてエイバルに来たわけではないんですよね?

 そう、何も知らないで来ましたからね。それに関しては本当にラッキーでした。

―試合を見ていても、楽しそうにプレーしていますね。

 納得する使われ方をしているということもあるし、あとは普通に試合中でも、味方がふざけてきますからね。味方ベンチの前でプレーしていると、ベンチの選手がふざけて「おまえ、何やってんだ」とか言ってくる(笑)。プレーしながら笑ってしまうんです。そうやって、ちょっとリラックスしながらやれるところも、俺には合うんやろうな。いいチームに来たなと常に思っています。

◆目標としてはW杯よりスペインでの活躍が上! このインタビューの続きは『週刊プレイボーイ』13号「乾 貴士(エイバル) サッカー小僧がスペインリーグ愛を語る!」にてお読みください!

(取材・文/了戒美子 撮影/中島大介)

乾 貴士(いぬい・たかし)1988年生まれ、滋賀県出身。野洲高校から2007年に横浜F・マリノスに入団。その後、セレッソ大阪、ボーフム(ドイツ2部)、フランクフルト(ドイツ1部)を経て、15年よりエイバル(スペイン1部)へ。身長169cm、体重63kg。巧みなボールタッチからのドリブルが武器のアタッカー。日本代表25試合2得点。