昨年12月25日にデビューしたスズキ クロスビー。

私、小沢コージがクルマを見た瞬間、「こりゃ売れる!」と確信したのが、そう、スズキの新型コンパクトSUV「クロスビー」。最大のキモは“おっさんキュート”にある。

クロスビーは昨年12月25日にデビューした。そのスタイルは軽自動車で大ヒットを飛ばしたハスラーまんま。ハスラーとは、2013年12月に発表された軽自動車SUVで、予想以上に売れた。すでに累計販売台数は36万台を突破しており、2014年にはRJCカーオブザイヤーを受賞するなど、もはやスズキの“顔”へと成長している。

ハスラーの大ヒットの理由は、そのキュートなデザインと実用性の高さにある。実はプラットフォームが当時のワゴンRだったので室内は広く、燃費はまさかの32・0㎞/リットル! デビュー直後にハスラーのデザイナーを取材したら、「かわいい軽を造る気はなくて、自分たちでも乗りたくなる軽SUVを造ってみただけ」と話していた。

取材時、このデザイナーは50代のおっさんだった。それを踏まえてスタイルを見ていたらピンときた。ハスラーはかわいすぎないのだ。フェンダーやライト類の造形には、昔のクロカン4WD的なワイルドっぽさが残っていて、おっさんでも無理なく愛せるキュートさに仕上がっているのだ。

それはクロスビーも同じ。見事にハスラーの魅力が移植されている。肝心のデザインだが、フロントマスクはハスラー譲り。バンパーはいかにも4WDっぽい。欲を言うならこのままのバンパー形状で素材を樹脂から鉄板にしたいところ。

全体フォルムもハスラーの延長。サイドパネルはよりマッチョに盛り上がってはいるが、大径のフェンダーアーチといい、後部にいくほど絞り込まれたサイドウインドウといい、意外にシャープだ。

インテリアも同様。ハスラーはキュート系とはいえ、曲線はほぼ使われておらずメーターやエアコン吹き出し口を除いて全面的にスクエア。それはクロスビーも同じだが、普通車らしく、パーツの質感やデザインはハスラーに比べて格段にレベルアップしている!

シフトレバー回りは全面的にメタリック調のパネル、ナビモニターはハスラー同様の独立デザインのまま見やすくなり、メーターパネル右側には各種情報の表示が可能な3.5インチマルチインフォメーションディスプレイを装備。

さらに重要なのがリッターカーならではの走り味と実用性の高さだ。コンセプト的にクロスビーは完全にハスラーの延長線上に位置しているが、車名をビッグハスラーにしなかったのには理由がある。ワゴンRの拡大版であるワゴンRワイドの失敗があり、たとえイチから造り直しても、名前とデザインが似ていると、「単なる軽のワイド版」と誤解されかねないからだという。

予想外なのが室内の広さ!

●6速AT●全長×全幅×全高:376mm×1670mm×1705mm●車両重量:100kg●エンジン:1リットル直列3気筒ターボ+モーター●最高出力:99PS●モーター出力:3.1PS●最大トルク:15.3kgm●モータートルク:5.1kgm●使用燃料:無鉛レギュラー●車両本体価格:218万9160円(税込) 【SPEC】

よってクロスビーもイチから造り直されている。ハスラーがワゴンRをベースにしているのに対し、クロスビーはスズキの新世代リッターカーのイグニスやソリオがベースだ。しかも、この2台は新開発の専用プラットフォーム。当然、質感はバッチリ。乗り心地もコンパクトカークラスらしく、がっちり&しっとりしている。ハンドリングの手応えも実にシャープだ。

エンジンは去年デビューの新型スイフトRStに使われている直列3気筒DOHC1リットル直噴ターボエンジン+マイルドハイブリッドを搭載。最高出力は99馬力だが、1tの軽量ボディなので楽に引っ張り、スポーティな加速が味わえる。トランスミッションは燃費を意識したCVTではなく、オーソドックスなトルクコンバーター式の6速ATだ。走行モードをスポーツモードに切り替えると、高回転域まで吹け上がる。足回りにはフロントにスタビライザーがつき、専用チューニングのサスペンションが採用されている。

加え、予想外なのが室内の広さ。クロスビーはこの手のコンパクトSUVとしては全長が短く3.7m台と扱いやすい。それでいてパッケージが優れてるから身長176cmの小沢がフロントに座ったポジションで、リアシートでも余裕で足が組める。

先進安全支援装備も超充実で、単眼カメラとレーザーレーダーでクルマや歩行者を検知する衝突回避&被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」、後退時の「ブレーキサポート」もスズキの小型車として初搭載している。

クロスビーは単なるハスラーの5ナンバー版ではない。断言する、こりゃ絶対売れるって!

小沢コージ1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。90年に自動車誌の編集者に。著書に『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)など多数。TBSラジオ『週刊自動車批評』レギュラー出演中。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。