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震災を過去の「終わったこと」にして前に進むべき? 原発事故避難者たちに強いる、理不尽な“帰還のプレッシャー”

[2018年03月16日]

事故を起こした当事者たちによる「除染事業」「事故処理事業」が大きなビジネスになっている、と語るマクニール氏

3月11日、安倍首相は政府主催の東日本大震災の追悼式で「原子力災害被災地域における帰還に向けた生活環境の整備、産業・生業の再生支援など、復興を加速してまいります」とアピールした。

しかし、政府の思惑通りには避難住民の帰還は進んでいない。あれから7年、「復興」の名の下に前向きな話題が増えてきた2018年の日本社会の姿を、海外のジャーナリストはどう見ているのか?

「週プレ外国人記者クラブ」第110回は、震災発生直後から福島への取材を重ねてきたアイルランド出身のジャーナリスト、デイヴィッド・マクニール氏に話を聞いた──。

***

─3.11から「もう7年」なのか「まだ7年」なのか、捉(とら)え方にもよりますが、年々、あの悲劇を検証する報道よりも、復興の成果を前向きに明るく伝える報道が増えてきているようにも見えます。

マクニール そうですね。ただ、多くの日本人が「過去ばかり見ないで未来に向かおう」と思っているとか、震災の記憶を忘れかけているというよりも、政治や産業界、メディアも含めた日本社会全体が「あの震災を過去のものにして、我々は前向きに進まねばならない」という一種のプレッシャーに覆われているようにも感じます。

そして、そうしたプレッシャーを最も強く感じるのが、福島の原発事故によって強制避難させられた地域住民の「帰還政策」を巡る状況です。私は2011年以降、2度の原発敷地内の取材を含めこれまでに17回、福島を取材していますが、昨年、避難指示が解除された飯舘村を訪れた時にもそのことを強く感じました。

人口約6500人の住民のうち 、その時点で村に戻っていたのは200人以下でした。しかも、その多くがお年寄りです。しかし、政府は「除染が終わり、放射線量が下がっているから大丈夫」と、住民の帰還を進めたいようです。

昨年9月から10月にかけて環境保護団体のグリーンピースは、飯舘村と浪江町の避難指示解除区域、浪江町の帰還困難区域の民家や森、道路などで放射線量を測定しました。飯舘村の民家6軒のうち4軒で政府が除染基準とする毎時0.23マイクロシーベルトの3倍もの空間放射線量が計測されています。

浪江町の避難指示解除区域でも、市街地の小学校の向かいの森では平均値で毎時2マイクロシーベルト、最大で毎時5マイクロシーベルトという、非常に高線量のホットスポットが確認されています。これでは、国連人権理事会が日本政府に勧告している「住民の健康への権利を尊重し、許容放射線量を年間1ミリシーベルトに戻すこと」を満たすことはできません。

取材した飯館村の住民の方も「村が元のように戻ることはないだろう」と話されていましたが、原発事故で避難を強いられた多くの住民は、生活を再建するには決して十分とはいえない保証金だけを受け取り、今もあちこちで離れ離れになって暮らしています。また、政府がいくら「除染したから安全だ」と言っても、本当は故郷に帰りたくても不安で帰れない、子供を持つ親たちの気持ちもよくわかります。

皮肉なのは、数兆円規模と言われる「除染事業」や福島第一原発の「事故処理事業」を、原発事故を起こした当事者の一部でもある原発業界やゼネコンが受注しているという点です。つまり、「汚した人」が「掃除」を請け負って、それが大きなビジネスになっている。

そもそも原発事故で根こそぎ失われた地域社会は除染だけで再生できるはずがないのに、大量の予算を投じて除染して住民に帰還を促すことで、この問題をできるだけ早く「終わったこと」にしたい…という思惑が透けて見える。原発事故の直接の被害者である住民の人たちが、そうした「早く過去のことにしたい」という雰囲気に支配されたり、圧力を感じたりするというのは、実に理不尽なことだと思います。


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