女子プロレス界の注目株・伊藤麻希(右)と『アイドル×レスラー展』を企画したフォトグラファー立花奈央子氏。自虐的な発言を連発する伊藤の魅力とは?

女子プロレスラーたちのリング上では見せない表情や大胆露出を気鋭の写真家たちが捉えた合同写真展『アイドル×レスラー展』が東京・銀座の「ヴァニラ画廊」で開催中だ。

これを記念し、写真展を企画したフォトグラファー・立花奈央子氏と女子プロレス界の若手注目株・伊藤麻希が対談。前編記事(アイドルレスラーが大胆露出する写真展開催で、若手注目株・伊藤麻希が裏ネタまで赤裸々にぶっちゃけ!)では、アイドルレスラーたちの魅力や知られざる苦闘の舞台裏を語ってもらった。

後編では「自殺するヒマがあるなら伊藤の試合を観に来い!」など過激なマイクアピールでも評価が高い伊藤をさらに深堀り!

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―私生活はどんな感じ?

伊藤 マンガを読んだり映画を観たり、あとは適当に時間を潰してますね。料理もできないんでずっと同じものをスーパーで買う生活で、生きてて楽しくないですね。

-(笑)マンガはどんなものを読む?

伊藤 『NARUTO』とか『銀魂』『DEATH NOTE』もすごく好きですね! 人生の教科書になるというか、小さい頃から読んでていろんなことを学ばされました。

-好きなキャラクターは?

伊藤 『NARUTO』だったらサスケが好きすぎて! ある日、似た人間を見つけてしまったんですよ。当然、好きになるわけですけど、人間だから口から火も吹けないし、なかなか本気にはなれなくて…。しかも(マンガの)サスケは結婚して子供もできるからそれもまたショックで! でも応援はしなくちゃいけないから悩ましい。

-イイこじらせ方してますね~(笑)。

伊藤 なんで自分と結婚してくれなかったんだろうなって本気で思いました。

-他にも、うまくいかないことは多そうですね(笑)。

伊藤 うまくいかないことばっかりですよ! 世界には私より輝いてる人たちがいっぱいいるんで、なぜ私はその人たちみたいに輝けないのかって朝から悶々としてます。今朝は『スッキリ!』に広瀬すずさんが出てたんですけど、なんで広瀬すずはみんなからこんなに注目されて、私は朝からボーッとTV観ながら劣等感を抱えているのかなって。

-劣等感を持っている?

伊藤 リング上では「スーパーアイドルだ!」って自称してますけど、小さい頃からずっと劣等感の塊ですよ。鏡を見ていると自分は「世界一カワイい!」と思うんですけど、街を歩いてると悔しいことに世界一カワイいコで溢(あふ)れてて、「あれ!?」って。

-その反面、「クビドル(クビになったアイドル)」と自称する自虐的な要素も盛り込んでますけど。

伊藤 それさえも何か利用したいというか(笑)。

-でも「世界一カワイい」っていうのは突き通すんですね(笑)。

伊藤 いや、本当に鏡を見てるとそうなんですよ! 皆さん、他のメディアに触れるからダメなんです。私のことだけ見てたらカワイいですよ!

「伊藤を食べて」というコンセプトのセミヌード。撮影した立花奈央子氏は伊藤麻希を「アイドル出身なので表現力も素晴らしい」と評する

「私は死ぬまでそういう人生なんだろうなと…」

「プロレスリング我闘雲舞(ガトームーブ)」のエース・里歩(撮影/立花奈央子 『アイドル×レスラー展』より)

-(笑)他にも気に入らないことはまだまだありそうですね。

伊藤 自分からプロレスを取ったら本当に取り柄がない人間だと思ってしまうので、それがすごくイヤですね。

-それはどういう経験があって?

伊藤 私は普通の仕事ができなくて、前にバイトしてた時も“仕事できないヤツ”的な扱いをされて、どこに行ってもイジメられるんですよ。学生の時もそうだったのに社会人になってもまだイジメられるのかよって、私は死ぬまでそういう人生なんだろうなと思うとすごくイヤになりましたね。

頭のいい人って気を利かせたり先を予測したりできて、世の中的にはそれが“仕事できる”とされるじゃないですか。私はそれができないんだけど、でもわかんないものはわかんないし、おまえらの常識で世界が回ってるワケじゃないんだけど…って思うけど、でもやっぱり仕事ができる人はカースト的には上に行くから黙って従うしかないんだろうなとかも思うし…。

立花 (笑)でも仕事ができる人は「今ここでこんなこと言ったら…」って気にして、言いたいことが言えなくなるから、表現者に向いてるのは伊藤ちゃんみたいなタイプだよ。あと、今の世の中、イライラしている人が多いけど、自分にムカついてる伊藤ちゃんは他の人にヘイトをぶつけないから素晴らしいと思います!

-それに「なぜ私は世界一じゃないんだろう」って思うのは、裏を返せば「世界一カワイくなりたい」というポジティブな願望ですしね!

伊藤 いやー、私が余計なこと言っても、皆さんプラスに解釈してくれるんで、今日のインタビューはすごく楽ですね(笑)。

-あ、もっとけなしたほうがいいわけね。

伊藤 いやいや、もっと褒(ほ)めてくださいよ!

-様々な鬱屈がリングでの爆発力に繋がっているんですね。

伊藤 はい、溜まりに溜まってって感じです! あと、人をガッカリさせたくないんですよ。期待された以上のことをやりたいっていう気持ちが強いですね。

-では、期待以上のことができなかった時は?

伊藤 もうダメ! 酒飲んで寝ます。

立花 あはは!

伊藤 でも飲んじゃうと、次の日に顔がパンパンでめっちゃブスなんですよ! それでまた外に出たくなくなって、完全に負のループですね。だって、酒飲んで寝てもパンパンにならない人だっているのに、なんで自分はそうじゃないんだろうって、自分の体質にもまたイライラします!

「名前を呼ばれただけですぐ好きになります」

女優としても活動する志田光(撮影/浮花〈ふか〉『アイドル×レスラー展』より)

―彼氏はいるんですか?

伊藤 私は団体に所属していないので、恋愛禁止とかの縛りは全然ないんですけど、できないっすね~!

-自分にふさわしい男がいない?

伊藤 いえ、結構すぐ好きになりますよ。名前を呼ばれただけですぐ好きになりますから。

立花 (笑)もし付き合ったらすごく尽くす彼女になりそう!

伊藤 どうですかね、ホントに22年間付き合ったことないんで、どうなるかまだちょっとわかんないですね。

立花 でも彼氏ができるとキャラが変わっちゃいそうだから、ひと通り写真を撮り終わるまで作るのは待って! まだもうちょっと伊藤麻希というキャラを掘りたいです!

伊藤 わかりました(笑)。

―そんな伊藤さんには、ライバルはいるんですか?

伊藤 いませんね。自分がライバルです!

立花 ライバルを他人に設定すると、その人がいなくなった瞬間に目標を見失ってしまうものだけど、伊藤ちゃんは自分を抑圧して自分で爆発してるから自分の中で完結してずっと走り続けられる。まるで永久機関のように。

伊藤 永久機関ってなんですか?

立花 エネルギーを補給しなくても動き続けるもの。物理法則に反してるから実在しないんだけど、大丈夫、伊藤は概念だから!

伊藤 私の存在って、もう概念なんだ(笑)。

-「伊藤は永久機関」「伊藤は概念」と名言が出たところで、今後の目標を教えてください!

伊藤 「オンリーワン」を目標に置いて一番輝きたいです! 自分が生きてきた中での一番という意味で、これからも頑張って人に左右されない人間でいたいですね。『スッキリ!』を観て落ち込むこともあるけど、自分は自分だということで負けじと輝きたいです。

まずは女子プロレスラーで一番ツイッターのフォロワーを増やしたい。10万人はいきたいですね。プロレス大賞の新人賞も獲りたいし、演じることもすごく好きだから芝居系のお仕事もしたいと思っています。あと、もっとカワイくなりたいです!

-もう十分カワイいですよ。

伊藤 いや、もうさらに!

立花 自分を超えていくんだ(笑)。

伊藤 そうそう、超えていく! 私の試合を観れば必ず元気になれるというものを提供したい。私は社会人には向いてないって身をもって実感しましたが、皆さんはホントによく働いてスゴイなと思います。そんな働く人たちが元気になれるような試合がしたいですね!

(取材・文/明知真理子)

●伊藤麻希(いとう・まき)1995年7月22日生まれ(22歳)。アイドルグループ「LinQ」の元メンバー。2016年12月に「東京女子プロレス」でレスラーとしてデビュー後、めきめきと頭角を現し注目されている。得意技は頭突き。伊藤麻希も出場!『Judgement2018~DDT旗揚げ21周年記念大会~』が3月25日(日)開催(東京・両国国技館、15時~)

●立花奈央子(たちばな・なおこ)フォトグラファー、プロデューサー。女装に特化した撮影スタジオ「大羊堂」運営の傍ら、レディビアードらタレントのプロデュースも手がけている

●合同写真展『アイドル×レスラー展』ヴァニラ画廊にて開催中(3月25日まで)。立花奈央子個展「DEADLIFT LOLITA(レディビアード&才木玲佳)の世界展」も同時開催