「国会は公文書管理の正しいあり方を徹底的に議論してほしい」と語る古賀茂明氏

森友学園との国有地取引に関する決済文書を財務省が改竄(かいざん)していた問題。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、自らの官僚時代にも公文書の改竄を目撃したと明かす。

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森友学園との国有地取引をめぐり、財務省の決裁文書が問題発覚後に書き換えられた疑惑があると、朝日新聞がスクープしたのは3月2日のこと。

公文書が改竄(かいざん)されるようなことがあれば、国家は立ちゆかない。公文書は行政手続きの正当性を確保するための最も基礎的な資料となるからだ。なので当然だが、官僚が公文書の改竄に手を出すなんてことは、めったにない。

しかし、忘れてはいけないのは、役人も人間だということ。所属省庁や自分の立場が危うくなれば、信じられないような行動を取ることがある。実際に私も官僚時代、公文書の改竄を目撃した。

2010年秋のこと。当時、私は旧民主党の公務員改革を国会で批判したために経産省で仕事を与えられずにいた。

何もしないで給料をもらうのもいやなので、民主党のおかしな政策を正すようマスコミを通じて発信していた。すると、今度は「古賀をマスコミと接触させるな」ということで、長期の地方出張を命じられた。地域の中小企業を回って、その現状をリポートにまとめよというのだ。

改竄されたのはその出張報告書だった。私はそこに経産省の中小企業政策の問題点を3ページにわたり書き込んでいた。

ところが、国会がその報告書に興味を持ち、経産省は国会から報告書提出を命じられた。すると、官房が「このまま見せるのはまずい」と、その部分をばっさりと削ってしまったのである。立派な公文書改竄だ。これと同じようなことが財務省内でも起きていたのかもしれない。

佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)前理財局長は「森友文書は廃棄した」「学園側と価格交渉をしたことはない」などと、国会で答弁してきた。しかし、決裁文書の原本には価格交渉をしたことが書いてあるとされている。答弁がウソだったとわかれば、処分は免れない。

“暗黙の組織防衛論理”が働いた?

そんななか、「外部に出しても大丈夫?」と、心配の声が省内で上がった瞬間に“暗黙の組織防衛論理”が働き、上司の命令がなくても財務省の誰かが、もしくは組織が一体となって改竄へとひた走ったのではないか?

もちろん、財務大臣や官邸筋から直接圧力がかかり、改竄されたという可能性も否定はできない。だが、長く官僚を務めてきた体験から、この線が一番濃いと私は考えている。

これを機に今後二度と同じことが起きないようにするには、どうしたらよいかを考えなければならない。

まずは公文書管理法を改正して公文書の保存や廃棄について役人の裁量を排除する仕組みにする必要があるだろう。

そのために、記録をすべて保存させる。決裁文書も含め、紙ではなく電子データとして保存すれば、より効率的だ。そして、公文書の廃棄は事前公告し、国民がひとりでも閲覧や保存を希望すれば廃棄できないというルールにすればいい。

もうひとつ、仮想通貨の取引などに利用される「ブロックチェーン」技術の活用も検討すべきだろう。ブロックチェーンなら、記録の経緯までもが永久に保存可能だし、真正性(*)も担保できる。官僚の裁量が入る余地はなく、公文書の管理にこれほどうってつけの技術はない。

いい機会である。この際、国会は公文書管理の正しいあり方を徹底的に議論してほしい。

*文書管理用語。正当な権限において作成された記録に対し、不正が一切なく、第三者から見て作成の責任の所在が明確であること

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中