「春の甲子園」こと第90回選抜高校野球大会が開幕する!

球春到来! 今年の野球シーズンのスタートを切って「春の甲子園」こと第90回選抜高校野球大会(以下、センバツ)が3月23日に開幕する。

記念大会のため、例年よりも4校多い36校が出場する今大会は、今夏に第100回記念大会を控え、そのプロローグとしても有力校、スター選手の動向が注目されるところだ。

優勝争いの中心になるのは、今年も投打にプロ注目の逸材を揃えた大阪桐蔭。「史上最強」の呼び声も高い、この大本命が評判通りの強さでぶっちぎるか? 立ち塞がる伏兵が現れるのか? 恒例企画、大会直前まで取材に余念のない現場記者の展望予想座談会を開催!

A:スポーツ紙アマチュア担当記者   B:高校野球ライター  C:高校野球専門誌編集者

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 センバツというのは秋の公式戦からひと冬挟んでの大会になるので、チームの成長度を読みきれない面がある。みんな秋の成績を元に戦力分析しているから大会前の優勝予想が外れやすいんだ。ただ、今年に関しては大阪桐蔭(大阪)が“絶対的”と言っていい存在だろうな。もしすんなりと優勝してしまうようなら、これは高校野球史上に残る「最強チーム」と呼ばれることになるかもな。

 そうですね。新チーム結成以来、練習試合も含めて、わずか1敗しかしていません。松坂大輔(中日)を擁した横浜高校やKKコンビ(桑田真澄&清原和博)在籍時のPL学園といった過去の「最強」と呼ばれたチームと比較してもスケール的には遜色ない。

 比較ということでは、PL学園の中村順司元監督が、ともに自分が率いて全国制覇を果たしたKK世代のチームと、その2学年下の立浪和義、片岡篤史、野村弘らがいたチームとどちらが強かったか聞かれて「1試合だけなら桑田という絶対的エースのいたKK世代が勝つだろう。でもトーナメントなら野村、橋本清ら投手陣の層の厚い立浪世代のほうが強かったのでは」と話したことがあります。今年の大阪桐蔭というのは、この立浪世代に近いタイプですよね。

 確かに怪物級のエースやスラッガーはいないけど、超高校級が何人もいるよな。立浪世代は春夏連覇(87年)だった。大阪桐蔭は6年前(12年)にもエース藤浪晋太郎(阪神)で春夏連覇を果たしているから、今年、2度目の春夏連覇となれば史上初。センバツは昨年も優勝しているから春の連覇はPL学園(1981年、82年)以来、史上3校目。記録の面から見ても、近年の高校野球は完全に大阪桐蔭の時代ということになる。

 しかも今年の中心選手たちは、みんな昨年のチームからレギュラーとして試合に出ていた顔ぶれですから。松坂世代の時の横浜もそうでしたが、記念大会の優勝を狙って3年計画で作ってきたチームでしょうね。

投打二刀流の根尾昴(あきら)遊撃手を筆頭にU18侍JAPANの1番打者、藤原恭大(きょうた)外野手、主将の中川卓也内野手、大型二塁手の山田健太、投手陣もエース柿木蓮(かきぎ・れん)、大型左腕の横川凱(かい)…。よくぞこれだけ集めたなぁと感心するくらい「ミレニアム世代(2000年生まれの学年)」の有望選手が集結した感があります。毎年、プロ注目の逸材が揃う大阪桐蔭ですが、今年はちょっと群を抜いていますね。

大阪桐蔭には不思議なジンクスとは?

 根尾は岐阜出身、エースの柿木は佐賀出身と今や関西の枠を越えて全国規模で選手が集まってきています。もちろん熱心なスカウティングの成果であることは間違いありませんが、かつてのPL学園のようにシニアやボーイズで日本代表に選ばれるような腕に覚えのある中学生たちが「甲子園に出場し実績を残してプロに行く」という、いわば目標への“最速ルート”の場所として自ら門を叩くようになってきていますね。

 このレベルの選手たちですから高校卒業時にプロに行けなくても大学なら引く手あまたです。今やほとんどの強豪大学で大阪桐蔭出身の選手が主力として活躍しているし、昨年の3年生はバッテリーを早慶に送り出しました。

昔、PL学園が桑田のドラフト問題で早大進学のラインが途絶え、その後の中学生のスカウティングに影響を及ぼしたという逸話がありましたが、大阪桐蔭は有力な大学とのパイプをどんどん太くしています。だから父兄も卒業後の進路まで考えて、安心して入学させられるんでしょうね。

 しばらく、この“一強”時代は続きそうだな。

 ただ、大阪桐蔭には不思議なジンクスがあって、「強い」と言われている年ほど、どういうわけか優勝できていない。逆に、優勝したのは決して前評判が高くなかった年で、春夏連覇した12年のチームは近畿大会で準々決勝敗退しスレスレのセンバツ出場。強いと言われながら春夏とも甲子園出場を逃した前年のチームとの比較で、新チームのスタート時には「史上最弱」とまで言われていました。

センバツで優勝した昨年のチームも秋の時点では府大会、近畿大会とも準決勝で敗れています。「大本命」といえるほどの存在ではなかったですから。そう考えると「最強」とまで呼ばれる今年のチームは…。

 油断とは言わないが、まだまだ高校生。精神的な要素が大きいということだろうな。そこは百戦錬磨の西谷浩一監督のことだから選手たちを厳しく戒(いまし)めていると思う。優勝確実と思われた明治神宮大会、準決勝で伏兵に足を掬われてチーム初黒星を喫した時にも、試合後の囲み取材で「周りの評価ほど実際の力はない」と選手に言い聞かせるように辛辣な言葉を吐いていたからな。

今年に関しては「自滅」みたいな負けは考えにくい。となると、この「最強」大阪桐蔭を倒すチームがあるのか?というのが、このセンバツ最大のテーマになってくる。

◆後編⇒史上最高と称される大阪桐蔭に対抗馬は…ズバリこの4校!