愛嬌ある低姿勢も忘れない「吉本新喜劇」初の女座長・酒井 藍。

関西で絶大な人気を誇る『吉本新喜劇』。座員は80代の超ベテランから20代の若手までさまざま。

それをうまく取りまとめるのが彼女の新しい仕事だ。

誰からも愛されるキャラはどのようにつくられるのか!? 実社会でも役立つそのテクニックを前編記事に続き、聞いてみた~!!

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【ヨイショ術 その5】困ったら指でも褒めろ!!

―後輩へのヨイショも忘れないと。ちなみに酒井さんは人のいいところを見つけるのが上手と聞きましたが。

酒井 たまに「え! 全然指の毛、生えてへんな!」とか言うたりします(笑)。

―そのレベルから探すということですか?

酒井 はい。そして「見て、私、指毛めっちゃボーボーやで!」と自分を下げる。

―ちょっとでもいいところを見つけたら、口に出していくと。

酒井 はい。それは心がけています。

【ヨイショ術 その6】先輩の行動には意味があると心得る

―ちなみに、座長になって半年たちますが、もめたり、雰囲気が悪くなったりしたことはありませんでした?

酒井 チャーリー浜(はま)師匠が舞台で暴走したぐらいですかね(笑)。本当に言ってはいけないセリフ、例えば「ち○こ!」とか、これはまだギリギリセーフなほうで、もっとひどいことをおっきい声で言いはるんですよ。

そういうとき、ほかの座長さんやったら「コラ!」とか「おい!!」ってツッコむんですけど、私は「えー! どうしたらいいの!?」ってなったことはあります(笑)。雰囲気が悪くなったというよりも私がパニックになった感じで。

―確かに焦りますね。

酒井 別のある日は、幕が上がるか上がらんかぐらいのときに舞台をいきなりダーッと横断しはったんです。ちょっと師匠の足がお客さんに見えてたんと違うの?というぐらいのタイミングで。

でも…ある日気づいたんですよ。これはみんなを盛り上げるためにやってくださってるんやと。長年一線で活躍されてる方からは学ぶことが多いです。「何しとんねん!」とは思いますけど(笑)。

尊敬するのは小籔兄さん!

【ヨイショ術 その7】先輩のいい面はすべて後輩に還元する

―確かに、新喜劇には学ぶべきユニークな先輩がたくさんいますもんね。僕のイメージでは、酒井さんは山田花子さんに似てると思うんですが。

酒井 花子姉さんはホントにいるだけで宝って感じです。花子姉さんみたいになれたら最高ですけど、誰にもマネできない存在だと思います。

―ほかに尊敬している先輩は?

酒井 小籔千豊(こやぶ・かずとよ)兄さんですかね。新喜劇に入ったときからボケ方をいろいろ教えてもらったこともありますし、新喜劇をよくしようという気持ちが一番強い方やと思います。小籔兄さんの新喜劇に対する考えとかを聞いてたら「私は、新喜劇は好きやけど、全然考えてないな」と思って、こんなふうにならないといけないなと常に思ってます。

―小籔さんは新喜劇の後輩には厳しいというイメージがありますが。

酒井 実は小籔兄さんはツンデレで、私が座長になったとき、ちょうど横で打ち合わせをされていたんで報告に行ったら「座長になったからいうて絶対調子乗ったらあかんぞ、なれたことが奇跡やねんから」とそのときは周りに人もたくさんいたんで厳しい返しやったんですけど、後からメールで「ホンマにおめでとう! 今度お寿司食べに行こな」って優しいメールが来たんですよ(笑)。

―うまいですね!

酒井 周りに人がいるときに厳しく言うことによって逆に私の立場をアピールしてくれてるというか、小籔兄さんはいろんな手法を持ってますね。

学びながら自分も後輩にその手法を使おうと思っています。そして、どんどん新喜劇を良くしていきますよ!!

酒井 藍(さかい・あい)1986年9月10日生まれ、奈良県出身。2017年7月、30歳のときに吉本新喜劇の座長に就任。新喜劇史上初めてのレギュラー女座長として注目を集めた。元警察官で、人のことを気遣う姿勢はそこから学んだと語る。「吉本新喜劇全国ツアー2018」が3月21日(水・祝)広島・上野学園ホールを皮切りに開始予定! また、本人主演の映画『女子高生探偵 あいちゃん』は3月17日(土)より全国順次ロードショー予定!

インタビューマン山下(聞き手)1968年10月29日生まれ、香川県出身。お笑い芸人を引退後、フリーのインタビュアーに。芸人の気持ちがわかる身として、酒井藍の魅力を引き出す!!

(撮影/石川耕三)