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レスリング「パワハラ騒動」にある美談と根性論──欧米では受け入れられない“体育会系の闇”

[2018年03月29日]

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スポーツに限らず、「愛」や「情熱」といった美辞麗句の中に日本社会における「体育会系の闇」を感じると語る、サンドラ・ヘフェリン氏

多くの金メダリストを輩出してきた女子レスリング界を揺るがす「パワハラ騒動」。

日本レスリング協会強化本部長の栄和人(さかえ・かずひと)氏によるとされるパワハラの被害者は伊調馨(かおり)だけではなく、暴力やセクハラの被害にあった選手も多数いるという。パワハラは一般的に「権力を利用したイジメ」と定義されるが、その根底には何があるのか?

『週プレ外国人記者クラブ』第112回は、「かねてから日本のスポーツ界やスポーツを取り巻く環境に違和感を抱いていた」という、日独ハーフのコラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏に話を聞いた──。

***

―サンドラさんは、レスリングのパワハラ騒動をどう見ていますか?

サンドラ ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ事件もそうですが、組織内で権力を握る人が男性で、その下に女性が多い場合、パワハラとセクハラがセットになることが多いですよね。伊調選手へのパワハラが大きく注目されていますが、栄氏による他の女子選手たちへのセクハラ疑惑も報道されています。

「タックルの姿勢が悪い」と言われてTシャツの中に手を入れられ体をまさぐられたり、キスを迫られたり…。セクハラだけでなく、顔が腫れるほど殴られた女子選手もいるようですね。

―欧米のスポーツ界にもパワハラやセクハラの問題はあるんですか?

サンドラ もちろん欧米にもあって、最近ではアメリカのスポーツドクターのラリー・ナッサーが368人もの体操選手に性的虐待やセクハラを繰り返していたというニュースが大きな話題になりましたよね。これはセクハラ事件ですが、彼が五輪チームのドクターという立場を利用してセクハラをしていたという意味ではパワハラでもあります。

選手たちは「彼に逆らったら五輪に行けないかもしれない」と恐れて、逆らうことができなかったわけですから。でも欧米では、セクハラやパワハラをした人物に対するバッシングや社会的制裁は、日本よりもはるかに厳しいです。

―実際、ナッサー氏は「禁固175年」という判決を受けています。

サンドラ 一方で、日本では「被害を受けたほうも悪い」と逆に非難されることも多いですよね。大相撲の暴行事件でもそうでしたが、たとえ加害側であっても「組織は力の強いほうを守る」という構造は、レスリングのパワハラ問題でも見られました。

栄氏がレスリング部の監督を務める至学館大学の谷岡郁子学長は記者会見で、パワハラの存在を否定するだけでなく、「そもそも伊調馨さんは選手なのですか?」と発言しました。学長は「馨は周りへの気配りみたいなものが(吉田)沙保里のようにはない。人の好き嫌いが激しくて露(あら)わにしちゃうところがある」とも言っていて、日本相撲協会の貴乃花親方への扱いもそうですが、権力を持つ人が被害に遭った側を「ワガママ」呼ばわりするのは「いつものこと」ですね。

―栄氏は「指導者としてのモットーは選手と恋愛すること」と語っていますが…。

サンドラ そんなことを公言してしまう常識の無さが、今回のパワハラ・セクハラ問題のすべてを物語っていると思います。比喩として「選手と恋愛する」と言っているのだとしても、教え子や部下との恋愛はセクハラやパワハラの温床になるという自覚もなく、本気でそう思っていたのだとしたらイタイですね。

また、栄氏は自身の著書で「厳しさと共に愛情も大事。私は、自分を頼ってきた選手や、一度でも関わったことのある選手は、自分の子供のように思っています」と書いていますが、まるで「社員はみんな家族」みたいな、ブラック企業の求人広告の文言のような発言です。

私が先日、ランチで訪れた店に求人の貼紙がありました。そこには、「才能」「情熱」「継続力」「野心」「元気・笑顔は当たり前」と書いてあり、時給など労働条件は一切記されていませんでした。

スポーツに限らず、「愛」や「情熱」といった感動的なマジックワードを振りかざすことにより、立場の強い者が弱い者を支配するパワハラの構図を見えにくくするという、日本社会における「体育会系の闇」を私は感じます。


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