Good Tearsのメンバーとして活躍する相澤瑠香

2018年3月31日、深夜0時20分。テレビ朝日系のオーディション番組『ラストアイドル』セカンドシーズン最終回で、アイドル史に残る名言がひとりの少女の口から発せられた。

「なんで!?」

そのシンプルな3文字は、トップアイドルを夢見る少女達を「勝者」と「敗者」に分ける番組システムの過酷さと共に、アイドル及び芸能界の不条理を糾弾するものだった。

誰もが感じていたけれど、舞台上では誰も口にはしなかった3文字を声に出した少女の名は、相澤瑠香。5つのグループで構成されたラストアイドルファミリーのひとつ、Good Tearsのメンバーだ。

昨日配信した前編(相澤瑠香「なんで!?」の背景とは…)に続き、彼女が「なんで!?」と叫んだ真相。そして、その後に続くはずだった言葉に迫る。

* * *

「Good Tearsは悔しい思いをすればするほど輝くグループだと思っているので。必ず上位3チームに残って、次こそ5人の悔しい気持ちを嬉し涙に変えたいと思います」

実際、彼女が発したその言葉が快進撃のスタートの合図となった。つんく♂率いるLove Cocchiとのバトルで初勝利。秋元康率いるシュークリームロケッツも撃破。そして、指原莉乃率いるSomeday Somewhereにも勝利し、最終結果は「3勝1敗」。リーグ戦を1位通過し、決勝トーナメントのラストバトルに駒を進めることとなったのだ。

「3連勝ってなった時は、腰が抜けたみたいな感じになって立てなかったです。膝、黒くなりましたもん(笑)。一番最初のバトルで負けたからこそ勝てたんじゃないかな、と思うんです。そこで悔しい気持ちを味わったからこそ、私たちはこれからもっと輝けるって思えたし、5人で冷静に敗因を話し合っていくうちに、私たちはバトルを甘く見ていたんだなってわかったんですよね。

バトルってライブなので、スタジオに来てくださったお客さんに楽しんでもらわないといけない。審査員の方もお客さんじゃないですか。でも、自分たちのパフォーマンスを完璧に近付けることばかり意識がいって、楽しんでもらうための努力を忘れてしまっていたんです。自分たちでやり切れば、結果がついてくると思っていた…その考え方が間違っていたんだなって気付いたから変われたんです」

SCENE.3 セカンドシーズン決勝戦「表題曲バトル」

準決勝は、総当たり戦で2位となったLove Cocchiと3位のシュークリームロケッツがバトルを行なった。結果、シュークリームロケッツが辛勝。総当たり戦では勝利している彼女たちにもう一度勝てば、セカンドシングルの表題曲はGood Tearsの『スリル』となる。

週プレ取材陣はその日、収録現場に潜入していた。決勝戦が始まる直前のステージ裏で、Good Tearsの5人がお互いをハグし合い「ありがとう」と言葉を掛け合っていた姿が印象的だった。ファーストシーズンで負けたらからこそ、今のメンバーと出会えた。一番強いスポットライトが当たる場所まで、あと一歩のところまで来た…。

先行はシュークリームロケッツ。そして、Good Tearsの出番が訪れた。「自分たちにとって最高のパフォーマンスができたし、お客さんの顔をしっかり見て楽しませることもできた。表題が取れるっていう自信がありました」

もう無理だって思いました

力のこもったパフーマンスを披露したGood Tears

だが、「天の声」に指名されたのは、ファーストシーズンから審査員として参加し、幾度もジャッジを下してきたシンガーソングライターの大森靖子だった。そして…「勝者は、シュークリームロケッツです」。

勝者コメントの後、涙をこぼしているGood Tearsもコメントを求められた。リーダーの池松愛理は気丈に振る舞った。センターの高橋真由もなんとか持ちこたえた。だが、彼女達の中にこらえているものがあるのは、誰の目にも明らかだった。

3人目にコメントを求められた相澤は、泣き腫らし呆然とした表情のまま、何も語り出せずにいた。数十分にも感じられた沈黙の先で…

「なんで!?」ーーそう叫んで、崩れ落ちた。

「なんで!?」と叫び崩れ落ちた相澤瑠香

視聴者の中には、その叫びはジャッジの大森靖子に向けられたものだと感じた人がいるかもしれない。「なんでシュークリームロケッツを選ぶの?」と。でも、それは違った。

「大森さんに対する“なんで”って聞こえるかもしれないんだなって、本当に失礼なことをしてしまったと後から気付いてすごく反省しました。違うんです。ここまで頑張ったのに“なんで届かないの?”って意味だったんです。

あと一歩だったのに“なんで私はいつもこうなの”って…。あの日のパフォーマンスで勝てなかったら、何が駄目なのかが本当にわからない。私、昔からお母さんに“信じ続ければ夢は必ず叶うよ”って言われてきたんです。でも、叶わなかったってことじゃないですか。自分がずっと信じていたモノに対して“間違いだったの?”って気持ちにもなってしまったんです」

崩れ落ちた彼女は、メンバーに支えられて立ち上がった後もふらふらの状態だった。負けたから、だけじゃない。夢へ向かって駆け出すための心のつっかえ棒を無くしてしまったからだ。

Good Tearsのメンバーに支えられて立ち上がった相澤瑠香

「これから先、どうしたらいいのかわからなくなってしまったんです。…あんまり覚えてないんですよ、負けたショックが強すぎて。ずっと泣いていたから何も見えないし、足も力が入らないし。ただ、“全部が崩されてしまった”という気持ちだけはよく覚えています。

ファーストシーズンで負けた時は、ひとりだけの気持ちだったんですよ。今回はメンバーはもちろん、織田さんや振付のNAOKI先生、担当してくださったディレクターさんや私たちを応援してくださるファンの皆さんの気持ちも全部背負った戦いでした。こんなにみんなが協力してくださって、力を貸してくださって、自分たちもこれ以上出せないぐらい頑張ったのに勝てないんだったら、もう無理だって思いました」

見事にユニットバトルを制したシュークリームロケッツ

次は必ず、もっと輝けます

その状態から再び引っ張り上げてくれたのは、ファーストシーズンでは出会ってさえいなかった、仲間の存在だった。

「負けて全部駄目になっちゃったと思ったけど、私には支えてくれるメンバーがいたんです。ふらふらになっている私の手をずっと握っていてくれたんですよ。負けたからって、解散するわけじゃない。みんながいるならもうちょっと頑張ろうって思えたし、決勝の後で話し合った結果、やっぱり自分たちは最高のパフォーマンスができたって話になったんです。

審査員の方のジャッジは4対0だったんですけど、視聴者の方に“Good Tearsが良かった”って思ってもらえたら、それでいいんじゃないかなって」

もうひとつ、彼女を支え勇気付けたものがあった。セカンドシーズンを戦ってきた記憶だ。

「ファーストシーズンで古賀さんに負けた時は、私はアイドルとして圧倒的に古賀さんよりも劣っているんだなって思いました。でも、セカンドシーズンで対戦相手に勝つっていう経験を初めてした時に、審査をしてくださった方に気持ちがたまたま届いて、たまたま勝てたっていうことなのかなと。勝ち負けがすべてじゃないし、負けるってことが相手よりも劣っているってことじゃないんだなと。その発見があったからこそ、乗り越えることができた気がします」

相澤は3月に仙台の高校を卒業、4月からは東京の大学へ進学が決まっている。上京することで、メンバーと会う機会を増やせることが何よりも嬉しいと言う。

「少し考え方が変わって、夢が叶わなかったで終わるのは信じ続けなかったからじゃないかなと。1回駄目でももっと信じ続ければ、絶対いつかは叶うんだって思うようになりました。

Good Tearsは今回の表題曲は駄目だったんですけど、次の表題曲とか、それが駄目なら次の次の表題曲を…ってずっと目指していけば、絶対いつかはチャンスを掴めると思っていますし、そこまでに自分たちがもっとパワーアップしてもっと魅力的になっていなければいけない。結果を出す前に諦めるのって、一番もったいないと思うんですよ」

決勝で負けて良かった、なんてことはない。でも、負けたからこそ、勝った者には得られないものがある。しかも、Good Tearsは「悔しい思いをすればするほど輝くグループ」なのだ。今回のあと一歩での敗退も、彼女達がいつか大粒の嬉し涙を流すための“壮大なフリ”のはずだ。

「そうですね、最後に一番悔しいって気持ちを持ってこられたので(笑)。次は必ず、もっと輝けます。4月14日から始まるサードシーズンではラストアイドルの2期生を決めるらしいんですけど、いつも通り私たちは何も知らされていません(笑)。

全員集合のわちゃわちゃしたバラエティもやりたいって思いつつ、やっぱりバトルはしたいですね。機会があればリベンジしたいです。最初はあんなに戦うことや勝ち負けを付けることがイヤだったのに、どうしてなんだろう、今は戦いたくてしょうがないんですよ」

(取材・文/吉田大助 撮影/武田敏将)

■相澤瑠香(あいざわ・るか)1999年5月22日生まれ、宮城県出身。ラストアイドル初期暫定メンバー。昨年まで宮城の「sendai☆syrup」で活動。ラストアイドル初の2ndユニット「Good Tears」で活動する。公式Twitter【@Good_tears_ruka】