GRスープラ レーシングコンセプト ●全長4575mm●全幅2048mm●全高1230mm●駆動方式FR●ホイールベース2470mm。

前月6日、トヨタが新型スープラのレーシング用試作車をジュネーブで世界初公開した。

復活したスープラはどんなクルマに仕上がっているのか。現地に飛んだジャーナリストや専門誌などを徹底取材!

■BMWとのコラボで甦ったスープラ!

ついにトヨタのスープラが16年ぶりに復活! 今月18日に閉幕した「ジュネーブモーターショー」で初公開されたのが、上の写真の「GRスープラレーシングコンセプト」だ。2002年に生産を打ち切った当時と同じくFRの2ドアクーペだ。残念ながらエンジンを含めた詳細情報のアナウンスはなかったが、新型の企画とデザインはトヨタ、設計や開発は独BMWが担当。新型スープラは両車の初コラボ車!という面もある。

なぜトヨタとBMWがコラボ?と疑問を持つ方もいると思うが、実はトヨタとBMWは11年にハイブリッド車向けのリチウムイオン電池の共同研究、そして翌年にはスポーツカーの共同開発を発表するなど親密な協業関係にある。

当時、豊田章男社長は「スポーツカー開発は、BMWが最も得意とする分野だと思います。BMWと協業することで、どんなクルマが生まれるのか。両社の強みを生かし、環境にも優しく、世界中のクルマ好きを興奮させるスポーツカーの誕生を、私自身が一番楽しみにしているのではないでしょうか。BMWと一緒に仕事をさせていただくことが、私たちが目指す『もっといいクルマ』造りに必ずつながります」と語っている。

ふり返ると、スープラは1978年、高級スポーツカーとして米国で発売。国内ではセリカXXの名で親しまれていたが、海外での3代目発売時から名称をスープラに統一。今回発表された新型スープラが市販されると米国では5代目、日本で3代目となる。

スープラはレースでも活躍していた。全日本GT選手権のGT500クラスでは4回の年間チャンピオンを獲得し、ル・マン24時間レースにも出場するなど幅広い年代から支持を集めていた。まさにトヨタのアイコン的スポーツカーだったが、排ガス規制の強化を受けて02年に生産中止。だが、豊田章男社長は就任以来、スポーツカー復権を進めており、09年にレクサスのスーパースポーツ「LFA」、12年にはスバルとのコラボスポーツカー「86(ハチロク、兄弟車はスバルのBRZ)」を発売。そして今回、看板スポーツカーをついに復活させたってわけだ。

86の開発責任者でもある多田哲哉氏(右)と、河口まなぶ(左)が指さすのは新型スープラのミニカー。マジ欲しい。

新型スープラがレーシングモデルで復帰

■レーシングモデルで復帰を飾った理由

新型スープラはどんなクルマになったのか。ジュネーブで取材した自動車ジャーナリストの河口まなぶ氏が言う。

「巨大なリアウイングや前後のオーバーフェンダーが装着されているレーシングモデルをあえて試作車として発表したところに、このクルマの未来が見えました。室内も、鉄板剥(む)き出しのレーシング仕様になっていましたし」

わざわざレーシングモデルを出すことで、トヨタはいったい何をファンにアピールしたいのか。スープラの開発責任者であるトヨタの多田哲哉氏を現地で直撃した河口氏がこう明かす。

「多田さんは、『最初にLM-GTE(市販スポーツカーをベースに改造した競技専用車両)を造ることで、レース対応可能なポイントをあらかじめ市販車に入れておける』と話していました」

LM-GTEはル・マン24時間やWEC(世界耐久選手権)などに参加可能。スープラの先代モデルもLM-GTEマシンでル・マン24時間レースに参戦していた。要するに新型スープラはレース参戦が大前提のモデルだと?

「レースに出場すれば、新型スープラのスポーツ性能の高さを世界中にアピールできますから」(河口氏)

空力性能と走行性能を狙い、左右に張り出したフェンダー、そしてド迫力の大型のリアウイングを採用。

新型スープラはポルシェを打ち負かす

■新型スープラはポルシェを超える!?

一方、市販車としての新型スープラがライバルとして意識するクルマはあるのか。

「新型スープラの走りの味について聞いたら、多田さんは『ポルシェを打ち負かすピュアスポーツ!』と語ってくれました」(河口氏)

となると、新型スープラは走りだけを追求したクルマになるのか。

「いや、ポルシェを超えるスポーツカーながら、現代のクルマに求められるコネクティビティや先進安全も盛り込まれているようです」(河口氏)

スープラは、昨秋にトヨタが新設したスポーツカーブランド「GR」から売り出す予定だという。現在、GRはトヨタの既存車を改造して販売しているが、スープラはGR専用車種1号になる可能性が高い。昨年のGR記者発表後、豊田章男社長は「クルマは移動手段ではなく、(運転は)楽しいということを今後もアピールしていく」とコメントしている。この言葉こそがスープラの全貌を解き明かすカギになるはずだ。

最速だと今冬に国内発表、来年前半には国内外で量産型の販売を開始するスープラ。野郎ども、目を離すな!

(取材・文/黒羽幸宏 写真協力/河口まなぶ トヨタ自動車)