週プレNEWS TOP 連載コラム こんな会社で働きたい! 10億の負債で瀕死の有名老舗旅館を劇的に再生させた“素人女将”の決断ーー従業員が楽しく仕事をする経営とは

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10億の負債で瀕死の有名老舗旅館を劇的に再生させた“素人女将”の決断ーー従業員が楽しく仕事をする経営とは

[2018年04月08日]

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そこには様々な逆転の発想があった。1泊2食付きで9800円~という単価を35000円~に引き上げ、付加価値を高めるためになけなしの資金を投じて客室に化粧室を、ロビーにコンシェルジュデスクを設けるなど施設の改装を断行した。

また、食事処や個室で日帰り客に向けて提供する料理は2千円程度の“安かろう、悪かろう”のメニューを廃止し、高価格な会席料理を開発。10年に12000円、14年に25000円、16年に35000円のコースを取り入れ、段階的に単価を引き上げていった。

先代の頃から接客係を務めるベテラン社員は、この動きを不安な目で見ていたという。

「1泊2食で1万円程度の旅館ですよ? その安さに惹かれて来館されるお客様ばかりなのに25000円のコースだなんて、誰が食べるの?って。と言ってる間に今度は35000円ですから。無理があるんじゃないの?と思って見ていました(苦笑)」

富夫さんと女将はそんな目を背中で感じながら、さらなるスクラップ&ビルドを断行する。別館にある炭火焼レストラン『源氏館』をブライダル会場にリニューアルしたのだ。それはふたりが入社してまもなくの決断だった。前出の社員がこう続ける。

「これには驚きました。『源氏館』といえば、あそこだけは絶対になくさない!と代々守り続けてきた『陣屋』の“聖域”のような場所ですから…。そこで働く従業員にも誇りと愛着を持つ人は多かったですし。それを入ってきた途端にいきなり潰して結婚式場にするっていうんですから、当然、反発する人も少なくありませんでした」

だが、宮崎夫妻に迷いはなかった。女将の知子さんはこう話す。

「旅館を立て直さない限り、私たち家族は一家離散するかもしれないという状況でした。だから、私たちは赤字が続く旅館の出血を止め、一刻も早く借金を減らすという道しか選択肢がなかったんです。やらなきゃいけないことは明確だったので、それに賛同できない人が現れても仕方がないと思っていました」

実は、知子さんが女将になったのは第2子の出産2ヵ月後のこと。新生児と2歳の長男を抱える身で、富夫さんと話し合って『陣屋』を継ぐと決めたのだ。これにはワケがある。

元々、先代社長もその妻の女将も長男の富夫さんに旅館を継がせる気はなかったそうだ。そのため、09年に先代が亡くなって社長になった女将は経営が行き詰まる中、「『もうここで幕を引こうかな』くらいに思っていた」(知子さん)という。だがその後、体調を崩して入院することになり、経営者不在となった『陣屋』にリーマンショックが襲った。

その時点で残った借金は10億円。「バブル崩壊後、祖母や伯母の代からの積もった赤字がリーマンショックによってキャッシュアウトが苦しい状況を生んでしまった」のだという。返済できなければ、借金の影響は義母の長男である夫(富夫さん)にも降りかかってくる…。知子さんが陣屋を立て直そうと決心したのは「とにかく子どもには負債を残したくない、巻き込みたくない」という母親としての思いからだった。

夫の富夫さんは当時、大手自動車メーカー・ホンダの研究者だった。巨額な借金を抱えるリスクを背負いながら、知子さんは「絶望的な気持ちにはならなかった」という。

「その当時、義母も私も共に別々の病院に入院し、義母は外出許可をとって会いに来てくれました。そこで10億円の借金があることを告げられ、私はすぐに主人に電話をしました。すると、主人が電話口で『ホンダの生涯賃金を超えてるんだけど!』と言ったんです。第一声がそれ?って思ったら、なんだか笑いがこみあげてきちゃって。『計算早いね、すごいね』って言ったら、『パッと考えたらわかるだろ!』って叱られました(笑)。

“お先真っ暗”な現実を突きつけられても、いつも通りの冷静さを失っていない主人が頼もしく思えて『この人なら大丈夫かも』って思えたんです。実家の母親にも『人生の中で一度は踏ん張らなきゃいけない局面は誰にでもくるの。それが今なんじゃない?』と背中を押され、私もやってやるぞ!って気持ちになりました」


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