週プレNEWS TOP 連載コラム "本"人襲撃 権力側が空気を読ませる「忖度」のルーツを解明! 戦前日本の「検閲」は何が問題だった?

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権力側が空気を読ませる「忖度」のルーツを解明! 戦前日本の「検閲」は何が問題だった?

[2018年04月10日]

「検閲は白か黒かではなく、グレーと考える。黒と決めつけて思考停止すると、『検閲がなぜいけないのか』という本質を見失う」と語る辻田真佐憲氏

忖度(そんたく)。昨年、森友学園や加計(かけ)学園の問題を報じる際に頻用され、新語・流行語大賞の「年間大賞」を受賞するほど脚光を浴びた、この言葉。何も今に始まったことではなく、ずっと昔からこの国に根づいてきたネガティブな文化なのだ。

近現代史研究家で『空気の検閲 大日本帝国の表現規制』著者の辻田真佐憲(つじた・まさのり)氏は戦前、特に1928年から終戦までの時期に忖度が大きく働いていたと指摘する。当局はメディア側に空気を読ませて意向を忖度させ、自主検閲や自主規制を行なわせていた。いわゆる「空気の検閲」は正規の検閲以上に機能していたというのだ。

戦前日本の検閲の実態に迫ることで浮かび上がってきた、現代まで続く「忖度」の源とは一体、なんなのか?

* * *

―1928年から終戦までの時期を取り上げた理由は?

辻田 まず、具体的に検閲がどのように行なわれていたかがわかる『出版警察報』が1928年から発刊されていたことが挙げられます。それに、ちょうど左翼運動の取り締まりが強化されたことやエログロナンセンスという社会風潮もありました。その後、日中戦争、太平洋戦争に向かっていきましたから、検閲のありようが変わっていく様子もよくわかります。発禁のおかしさ、根拠となる法整備の実務や実態を紹介しています。

―発禁のおかしさとは?

辻田 一般的には、「検閲は戦前の暗黒時代を象徴している」というイメージが強いと思います。でも、権力側が一方的に発禁処分を出して弾圧していたのではなく、検閲官と表現者とのコミュニケーションがあったんです。ただ、不問にするか、発禁処分にするかの基準は非常にあいまい。『出版警察報』には、なぜ問題なのかが綿々とつづられていて、おかしいんです。

特にエロ表現の個別の判断基準は非常に難しい。「近親相姦(そうかん)や獣姦、SMはダメ」「こういう表現ならOK」というようなバカげたことがやたらと起きています。検閲官個人の趣味を押しつけるところも滑稽(こっけい)です。「今回は注意処分で見逃してやるから、次からはちゃんとしろ」とお目こぼしをすることもありますからね。

―言うことを聞かなかったら、発禁処分にするという。表現者に忖度を働きかけるわけですね。

辻田 例えば、レコードの検閲の場合、発売後に発禁処分を食らうと、プレスした費用が無駄になるわけです。ですから、その事態を避けるため、事前に検閲官に確認をしてもらう「内閲」をむしろ積極的に行なっていた。表現側にとってもうまく検閲を利用してビジネスを回していました。ある意味、ウィンウィンの関係だったんです。

―「空気の検閲」がうまく機能していたんですね。

辻田 検閲官も少数精鋭で、柔軟な対応ができていました。しかし、「空気の検閲」は権力側の意向が反映されやすいというマイナス面もありました。さらに、戦時体制になって、表現規制の空気が広がると、みんな畏縮して何も言えなくなってしまった。

―日中戦争後、内務省だけでなく、陸軍省や海軍省も検閲に口出しするようになりました。

辻田 空気の読み合いが崩れて、それまでの慣習が通用しなくなってしまったんです。権力はいろいろな組織が牽制(けんせい)しながら働くもの。例えば、森友学園問題でも巨悪がすべてを統制しているのではなく、さまざまな組織が利害関係のなかで動いている。そこに過剰な力が加われば、どこかにひずみが出てくるのです。現在の政治問題を考える上でも、戦前の検閲の歴史はひとつの参考になると思います。


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