格闘家、芸人を経てeスポーツに殴り込みをかけたジョビン氏

国内初のプロライセンス認定団体が登場したり、吉本興業やJリーグが参入を発表したり、今年に入って日本で「eスポーツ」が急に盛り上がってきている。果たしてプロゲーマーは食える仕事なのか?

インタビューマン山下が吉本興業が契約した初のプロゲーマー・ジョビンに聞く!

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私、インタビューマン山下とジョビンさんの出会いは今から12年前。「プロ格闘家より強い芸人が大阪にいる」という噂を聞きまして、実際に会ってみたら、確かに強い!ってことで、今田(耕司)さんがつくった「今田道場」に招いて、格闘家デビューさせました。

その後、ジョビンさんは格闘技団体「DEEP」のチャンピオンになるなど、実績を残していったのですが、2011年に突如、「やっぱり芸人をやりたい」と希望しまして格闘家を引退、芸人に戻りました。そしたら今度は、「プロゲーマーになる」というから、なんやそれ!と。早速、彼を直撃しました。

山下 ジョビンさんは自身のツイッターで格闘ゲームのことをよくつぶやいていたので、「ゲームが得意なんやな」とは思っていましたが、まさかプロになるとは。

ジョビン 正直、芸人「松本晃市郎(こういちろう)」よりもゲーマー「ジョビン」のほうが、知名度が高かったんですよ。ただ去年までは、プロゲーマーになるつもりはなかったんですけど、吉本がeスポーツに本格参入し、プロゲーマー契約の第1弾として、僕に打診してくれた。だったら、「やろう」と。

山下 吉本との契約は、「毎月の基本給」+「賞金などのインセンティブ」に、大会出場のための渡航費も支給されるそうですね。ぶっちゃけ、それぞれいくらですか?

ジョビン ええと、具体的な金額については勘弁してください(苦笑)。まあ、生活に困らない程度はもらえています。大会の賞金は吉本と分割しますが、大半は僕の手元に残るようになっています。ただ、結果を残さないと、クビになるので、ちゃんと大会でいい成績を収めないと。

山下 尊敬しているプロゲーマーは誰ですか?

ジョビン やっぱり、ウメハラ(梅原大吾)さんですね。彼は本当にスゴい! ある日、僕は自分の『ストリートファイター5』の実力を知りたくて、ウメハラさんに対戦をお願いしたんですよ。そしたら、僕がギリギリ勝って。

山下 スゴい!

“プロ練習”をゲームセンターで毎日やっています

ジョビン それから2ヵ月後に、もう一度ウメハラさんに対戦を申し込みました。『スト5』には“キャラ相性”があって、僕が使う「ネカリ」とウメハラさんが使う「ガイル」の対戦は、ネカリのほうが有利とされている。2ヵ月前の勝利から、ネカリでのプレイをさらに磨き上げたから、今度は、もっと差をつけて勝利できるはず、と思っていた。

それで、「10先」(10本先取で勝利の試合形式。ゲーマー同士の実力差が反映されやすいとされている)で、僕、いきなり2連勝したんですよ。

山下 おお!

ジョビン でも、そこから10連敗(笑)。「トップって、こんなに強いんや」ってむしろワクワクしました。今では少しでも彼に追いつくため、“プロ練習”をゲームセンターで毎日やっています。

山下 プロ練習?

ジョビン はい。意外かもしれませんが、『スト5』にはアーケード版がないんです。でも、「プラサカプコン吉祥寺店」というカプコンが運営するゲームセンターにはPS4を何台か置いてあって、そこにプロが集って切磋琢磨(せっさたくま)している。僕もそれに参加しています。

山下 やっぱり、レベルは高いですか?

ジョビン そりゃあもう。ほんとゲームは格闘技と一緒で、強いヤツと戦わないと強くなれない。

僕は格闘技でチャンピオンだけじゃなく、格闘ゲームでもトップに立ちたい。甘い世界じゃないことはわかっていますが、自信はあります!

★『週刊プレイボーイ』17号(4月9日発売)「『プロゲーマー』という仕事のリアルなおカネ事情!」では、競技人口が1億3000万人にも及ぶ世界のeスポーツ界の盛り上がりや、暗中模索が続く日本のeスポーツ界の現状、さらに気になる“食えるのか?”問題まで迫る!

(撮影/五十嵐和博)

●ジョビン(本名:松本晃市郎)1986年3月7日生まれ、徳島県出身。芸人を経て、2006年に格闘家デビュー。10年に格闘技団体「DEEP」の王座獲得。11年に引退、再び芸人に。その頃から『ストリートファイター4』プレイヤーとして台頭。18年3月によしもとクリエイティブ・エージェンシーとプロ契約