-じゃあ、岩見さんがノートを見つけなければ、今の状況はなかったんですね! ちなみに大城さんって、そんな風には見えないですが、実はクリスチャンなんですよね…。
大城 家族全員そうです。クリスチャンって、教会に行って神父さんに懺悔(ざんげ)するんですが。それにまつわる話がありますね。
もう随分と昔の話になりますが、当時の尼崎には野良犬がいっぱいいたんですよ。そんな犬を斎藤という友達が捕まえて、うちに連れてきたんです。狂暴な犬で、噛まないように口輪をはめているんですよ。
-危なすぎです!
大城 でね、当時、父親は夜勤をしていて昼間は家で寝てたんです。斎藤はその父親が寝ている部屋に野良犬を入れたらどうなるかって言って、ズカズカとウチに上がってきたんです。
-えっ、止めなかったんですか…。
大城 もちろん止めたけど、言うことなんか聞きませんよ。で、うちの父親っていびきがすっごくでかくて、ドアを閉めてても外まで聞こえるんです。どんなイビキをかくかというと、「ウィー!!!! ウィー!!!」って感じ。最初、外野を守ってる選手かと思いましたよ。
それで寝ているのを確認して犬の口輪を外して、部屋の中に投げ入れた。するとしばらくは父親のいびきが聞こえていたんです。「ウィー!!!! ウィー!!!」ってね。
でもすぐにそれが「ギャーッ」って絶叫に変わって、ドッタンバッタン、すごい音が聞こえてきた。こら、あかんとドアを開けたら最初に飛び出してきたのは犬でね。続いて顔面血まみれの父親が出てきたんです。
それで父親が斎藤の胸ぐら掴んで「状況を、とにかく状況を説明してくれ?!」って。斎藤、バカ正直に答えて、ぶん殴られました。僕も殴られたんですよ。
-いたずらの度合いが違いますね。でも、それが教会とどう繋がるんですか。
大城 いや、それで次の日曜に家族で懺悔に行ったわけですよ。で、僕にしてみればそれが一番最近の謝る話でしょ。だから神父さんにしたんです。
小部屋にひとりづつ入るんですけど、小窓が開いた衝立(ついたて)があって、その向こうに神父さんが座ってる。で、「なんでも話しなさい」と仰るから「友達が野良犬を連れてきて、父親の部屋に放ったんです。そしたら血まみれの父親が出てきて…」って話したら、急にその小窓が閉まったんですよ。
どうしたのかなと思ってたら、しばらくしたら小窓が開いて、神父さんの荒い息遣いだけ聞こえるんです。神父さん、後ろ向いて、震えてる。爆笑したいのを必死にこらえてたんですよ。
僕の次が父親だったんですが、その時はまだ顔が包帯ぐるぐる巻きでね。で、父親がまた野良犬の話をしたわけ。もう、神父さんも限界みたいで、こまめに小窓が閉まる音が外まで聞こえるんです。
そのたびに父親のでっかい声が聞こえましてね。「神父さん、どないしたんですかぁ。神父さん?」って。もう、ご本人登場ですからね。僕がフリになってますから。
で、ついに父親が外に出てきて「いかん、神父さんが大変や。様子が心配だから見てくる」いうて、裏から神父さんのいる部屋に入って行った。そしたら、ヒーヒー言っててね。息できないくらい笑って苦しくなってたみたいで、思わず神父さんのほうから「もう、許してくれー」と赦(ゆる)しを乞うてました。
-はははっ、神父さんも大変ですね。それでは最後にこれからの活動予定を教えてください。
大城 とにかく、姉貴に言わせれば、僕のプチブレイクは54歳。長いなぁ~。昨日、麻生太郎さんの物真似をしながら「X JAPAN」の『紅』を歌うというネタが完成したので、是非、TVのオーディションにいきたいです! 本当に、僕に関わる全ての皆さんに感謝です。頑張りますね。
(取材・文/長嶋浩巳 撮影/八坂悠司)
■チャンス大城(ちゃんす・おおしろ)
1975年生まれ、兵庫県尼崎市出身。中学3年時に大阪NSC入り。同期には千原兄弟、FUJIWARA、バッファロー吾郎がいるが退所し、定時制高校に通う。その後、再び大阪NSCに入るも、また退所。その後、親友に背中を押されて上京。現在、地下芸人として注目されている。