週プレNEWS TOP 連載コラム こんな会社で働きたい! 倒産寸前の老舗有名旅館が一家離散の危機から脱し、業界の革新的システム『陣屋コネクト』を実現した苦難のドラマ

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倒産寸前の老舗有名旅館が一家離散の危機から脱し、業界の革新的システム『陣屋コネクト』を実現した苦難のドラマ

[2018年04月15日]

そんな中、接客係の穴埋めのために求人をかけると、面接に来た男性が幸運にも「SE以外の仕事をしたことがない」という経歴の持ち主で、なぜそんな人材が旅館で接客しようと思ったのかは謎だったが、システム開発の話を持ちかけると「面白い、それならやってみたい」と乗ってくれた。その森元博幸さんからは「クラウドならセールスフォースがいい」などと提案され、「やっぱそうだよね」といった具合で「面接そっちのけで話が盛り上がった(苦笑)」(知子さん)という。

そこからはトントン拍子で話が進む。翌年、正月明けに外資のIT大手・セールスフォース社に連絡すると、1月10日には契約、その夜に月額15000円でライセンスを発行してもらった。その後、専用のパソコン1台を購入し、同社のクラウドプラットフォームを土台にしつつ、富夫さんと森元さんは夜勤対応でシステム設計に取りかかった。

2ヵ月後に形にしたのが、従業員の働き方を劇的に改革した『陣屋コネクト』である。当時は予約や顧客情報を管理するだけの機能にとどまっていたが、ふたりはその後も従業員の要望を聞きながら開発を続け、機能性をどんどん高めていった。

導入後はオンライン上での予約受付けが可能になり、紙の予約台帳は不要に。予約情報は瞬時に全スタッフが携帯するiPadに配信され、事前チェックが可能になった。現在は機能が進化し、車が駐車場に到着すると『ご予約の○○様が到着されました』という自動アナウンスがイヤホンに流れる仕組みになっている。さらに、過去の宿泊履歴から同伴者の情報、好みの料理やお酒、浴衣のサイズまで検索情報で表示され、スタッフは十分に“予習”して接客にあたれるという。

また、それまではインカムに頼っていた業務上の指示や“報連相”も音声認識機能が付いた社内SNSでできるようになり、胸元に装着したマイクに話しかければ、その内容がチャット形式で活字化され、履歴も自在に閲覧できる。これにより指示や連絡事項を忘れたり、聞き漏らしたりすることもなくなった。接客係の江畑真理子さんが「スタッフはいつどこにいてもお客様の情報を瞬時に共有できます。忙しく館内を走り回ることがなくなり、余裕を持ってお客様との接客を楽しめるようになった」と嬉しそうに明かしてくれた。

その一方で、ベテランを中心に多くの従業員が辞めていったという。50代、60代という高齢の影響も大きかったが、ひとりにマルチタスクを求めたり、代々守り続けてきた“聖域”ともいえる炭焼きレストランを潰してブライダル会場にするなどドラスティックな改革に不満を抱き、「ついていけない」と去っていった人も少なくなかった。

当初、改革の途上で手薄になった接客係に若い人材を採用しても、多忙を極める業務についていけず、「ほとんどが数ヵ月で辞めていった」という。

こうして09年時点で120人だった従業員は現在、40人までスリム化された。しかし、逆をいえば3分の1の人数でも旅館とブライダル会場、レストランの3つの施設を切り盛りできる身の丈経営になったということ。「3人分の仕事をひとりで回せるようになった」(富夫さん)のは、まず『陣屋コネクト』がバックヤードの業務を省力化した成果が大きい。

運用開始から約1年後、富夫さんは『陣屋コネクト』を他の旅館にも販売することを決断する。それも1ユーザーの月間利用料3500円という破格の安さでだ。劇的なコスト削減効果を生む自前のシステムなのだから、もっと高値で売っていいし、専売特許として自社だけでそのうまみを享受し続ける選択肢もあったはずだが…。これをあえて、安価な料金でオープン化したのは?


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