歯周病のセルフチェック。6つ以上当てはまる場合は、歯周病の可能性が!

歯が悪いと健康に悪影響を与えるのはなんとなく想像できる。きちんと噛まないと胃腸にも負担がかかりそうだからだ。しかし、それでも普通、ケアしているのは虫歯ぐらいでは? そうでなければ、なかなか歯科医に行かないのが現状。

そこで、様々な病気の原因にもなりうる、実は怖い病気「歯周病」について調べてみた。

■進行具合によっては抜歯するしかない

10代や20代の頃と比べ、「歯と歯の間に食べたものが挟まることが増えた」と感じている人はいないだろうか。「いつの間にか食後のつまようじが欠かせなくなった」とか。なかには「朝起きると歯茎から血が出ている」なんて読者もいるのでは? もし、そうだったら真っ先に疑うべきが“歯周病”だ。

厚生労働省が発表している「歯周病にかかっている人の年代別の割合」の表を見ると、特に30代から歯周病にかかる人が増えているのがわかる。しかも25~44歳あたりが、平成23(2011)年の調査に比べて平成28(2017)年は歯周病にかかっている割合がグンと伸びている。今や「成人の8割が歯周病」というデータもあるほどだ。

歯周病にかかっている人の年代別の割合

そこで、そもそも歯周病とはどんな病気なのか? 日本大学松戸歯学部歯周治療学講座教授で、日本歯周病学会の副理事長でもある小方頼昌(おがた・よりまさ)先生に聞いた。

「歯周病とは、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)に歯周病原菌が感染することで引き起こされる炎症性疾患です。虫歯は歯の表面や歯そのものが破壊されてしまう病気ですが、歯周病は進行すると歯の土台となる骨から破壊されてしまいます。ですから、歯周病を放置しておくと最終的には抜歯しなければならない場合もあります」

歯周病は、その進行具合によって、さらに“歯肉炎”と“歯周炎(歯槽膿漏[のうろう])”に分かれるという。歯肉炎は、歯周病としてはまだ軽度の状態で、“歯肉が赤く充血して腫れる”“時々血が出る”などの症状が出る。

それが進行すると歯周炎と呼ばれる状態となり、“歯磨き時にいつも血や膿(うみ)が出る”“歯肉が赤紫色になり、触るとぷよぷよする”などの症状が出てしまう。この段階まで進行すると、歯茎に痛みがあったり、歯がグラつくなどの症状も出てくる。これは、歯の土台となる骨が溶け始めている証拠なのだそう。

「虫歯と違い、なかなか痛みを伴わないため、自覚症状を持ちにくいのが歯周病の特徴です。それがこの病気が“サイレントキラー”(静かなる殺し屋)と呼ばれるゆえんです」

まさに口内で静かに進行していく恐ろしい病気なのだ。では、その原因となる細菌はどうして増えてしまうのだろう。少なくとも社会人であれば、出社前には毎日歯を磨いているし、寝る前にも磨いているはずだが。

「歯周病などの原因になる細菌のことを“プラーク(歯垢)”といいます。このプラークは、しっかりと歯を磨いたつもりでも、歯と歯の間や歯と歯茎の間にどうしても残ってしまいます。それが歯周ポケット(歯と歯茎の間にできる溝)にたまり、増殖すると、さらに歯周ポケットを深くしたり、歯を支えている土台の骨を溶かしてしまう。

歯周ポケットの溝の深さが4mm以上になっていることが歯周病のひとつの目安です。そうなってしまうと歯茎から出血したり、歯がグラグラするなどの症状が出てきます。歯周病になると口臭がひどくなったりもしますが、それもこのプラークが増殖していることが、ひとつの原因です」

急に口臭が気になり始めたなどの変化があれば、それも歯周病の兆候なのだ。

歯周病の専門医はたった1000人だけ

さらに歯周病の原因には、(1)喫煙やストレス、食生活の乱れ、ブラッシング習慣といった「環境因子」、(2)年齢や性別、その人の持つ遺伝子といった「宿主因子」など、様々な要素があるという。

「ですから、プラークが増殖したからといって、誰もが歯周病になるわけではありません。その人の持つ遺伝子などによって、なりやすい体質の人となりにくい体質の人がいるのです。

ただ、例えば喫煙者は非喫煙者より5、6倍も歯周病になりやすいというデータもあり、やはり生活習慣や環境に大きく左右されるといえます。また現代人は、一般的にアゴが細く、それが歯周病を引き起こす原因にもなるという研究結果もあります」

さらに歯周病は感染症なので、人間同士はもちろん、犬や猫といった動物からも唾液を通して感染する可能性があるそうだ。

では、実際に自分の“歯周病度”をチェックしてみよう。冒頭の表のセルフチェック項目に、3つ以上当てはまれば「歯周病の疑いアリ」、6つ以上なら「歯周病が進行している可能性がある」。もし、すべてに当てはまってしまったら、「かなり進行している可能性が大きい」そうだから、一刻も早く専門医に診断してもらうことが必要だろう。

■歯周病の専門医はたった1千人だけ!

とはいえ、「万全を期して歯周病の相談に行くなら、“歯周病専門医”がいる歯科医へ行くのがベストの選択です」と小方先生。歯周病専門医は、日本歯周病学会が認定する制度で、まずその前段階の“認定医”を経なければ、歯周病専門医にはなることはできません。

認定医になるためには、学会に入会後、経験を3年以上積むことが必要で、そうすると認定医になるための試験を受ける資格を得ることができます。そして試験に合格し、認定医として2年以上の経験を積むと、歯周病専門医の試験を受ける資格ができる。つまり、歯周病専門医は、ハードルが高い資格といえます」

それだけに日本には現在、“歯周病専門医”を名乗ることができる歯科医は約1千人、歯周病専門の“認定歯科衛生士”も約1千人しかいないのだそう。日本の開業歯科医は全国のコンビニエンス店の店舗数より多く、約5万人もいるといわれているから、歯周病専門医はたった50人にひとりしかいない計算になる。

「もちろん、どの歯科医でも歯周病の検査をすることはできますが、それぞれ得意分野があり、歯周病専門医や認定医であれば、正確な検査結果が得られると思います。例えば、歯周ポケットの検査でも、溝の深さを正確に測ることはとても難しいのです」

ちなみに小方先生は、歯周病専門医で“指導医”という立場。これら認定医、歯周病専門医がいる病院は、日本歯周病学会のホームページで確認することができる。歯周病の相談に行く際は、ぜひ参考にしてほしい。

★後編⇒実は怖い病気「歯周病」を予防するブラッシング“バス法”とは?

(取材・文/井出尚志[リーゼント] 鈴木晴美)

●小方頼昌(おがた・よりまさ)日本歯周病学会の副理事長にして、日本大学松戸歯学部では歯周治療学講座を担当する教授。歯周病学会の専門医であり、指導医でもある