日本のファンとメディアは優しすぎると語るセルジオ越後氏。

アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝トーナメントが始まった。

4チームが出場したJリーグ勢は早くも3チームがグループステージで敗退。残っているのは鹿島のみという例年以上に厳しい状況だ。

特に期待を裏切ったのは昨季のJリーグ王者・川崎。3分け3敗と未勝利のまま大会を去った。今季は主力のケガもあり、いいスタートを切れなかったとはいえ、Jリーグ王者としてはあまりにふがいない。また、柏も早々と勝ち点差をつけられ、最終節を前に敗退が決定。そして、C大阪に至っては、勝てば突破の決まる最終節で、主力の大半を週末のJリーグ(G大阪との大阪ダービー)に備えて温存。当然、試合には敗れ、敗退となった。

昨季は浦和が日本勢としては9年ぶりに優勝。今季の出場チームもそれに続いてほしいと期待していただけに、残念かつ情けない結果だ。

このACLに関して、僕は大きく3つの問題があると考えている。

ひとつ目は、日本のファンとメディアが優しすぎること。いつも「負けてもドンマイ」。今回の敗退にも批判の声が聞こえてこない。だから各チームのフロントもこの結果を深刻には受け止めていないだろう。日本でファンが本気で怒るのは、チームが降格しそうになったときくらいしかない。

もしブラジルで、リベルタドーレス杯(南米クラブ選手権)に出場したチームが大一番で主力を出さずに敗退したら、ファンは大騒ぎするよ。次の試合から観客動員は落ち込み、監督は解任に、会長は辞任に追い込まれる。日本で多少なりともそうした厳しさがあるのは鹿島と浦和くらいだよね。

ふたつ目の問題は、Jリーグ勢のACLへのモチベーションが中途半端なこと。もちろん、試合には勝つ気で臨んでいるだろう。でも、「何がなんでも」「石にかじりついてでも」ではなく、「あわよくば…」という感じ。

なぜそうなるのか。まず、大前提として、財政的な問題からACLとJリーグの両方を狙うための選手層を備えたチームが存在しない。その上でACLとJリーグを天秤(てんびん)にかけたとき、今はJリーグのほうが金銭的なメリットが多いからだ。Jリーグは昨季、DAZNと大型契約を締結。ACLよりも多額の賞金を出せるようになった。だから、C大阪のようにACLで主力を温存する事態が起こる。

現状、各チームのフロントは親会社からの出向組が大半。勝っても負けても親会社の出すスポンサー料は変わらないし、まして、親会社の業績になんらかの影響を及ぼすこともない。だから、決められた年間予算内でやり繰りすればいいと、補強策含めて消極的なチーム運営になる。それではACLとJリーグの両方を狙うのは難しい。

そして、3つ目の問題は前述したACLのステイタスの低さに象徴されるアジアの停滞。Jリーグ勢だけでなく、韓国、オーストラリア、中東勢も強くなるための投資をしている感じはしないし、レベルが上がっているとも思わない。中国にしても最近は少し前までの勢いがない。ロシアW杯でもアジア勢の苦戦は濃厚だけど、このままでは世界との差はますます開く。

そんな現状を打破すべく、Jリーグ勢にはアジアを活気づける、牽引(けんいん)する存在を目指してほしいけど、今季の状況を見てもなかなか難しそうだね。苦しいところだよ。

(構成/渡辺達也)