説明書を見ながら「おうちでドック」のキットでセルフ血液採取にトライ

近年、病院に行かず、自宅で受けられる健康診断サービスが増えている。中でも「生活習慣病」と「がん」のリスクチェックが一度にできるのが「おうちでドック」だ。

男性は7種、女性は9種のがんと動脈硬化や糖尿病、肝臓疾患など生活習慣病のリスクチェックが可能。また、レントゲンなどの画像検査はないが、19800円(税別)と通常の人間ドックよりも安価。自宅でできるという時間的拘束と価格面でのハードルを下げて、受診しやすくしている。

前編記事でも紹介したが、同キットを販売するハルメク・ベンチャーズ松尾尚英氏によると、ターゲットは「専業主婦」「派遣社員」「フリーランス・自営業」と定期的な健康診断を受ける機会が乏しい、受診のハードルが高い人々だ。

そこで今回は実際に体験し、おうちでドックの特徴のひとつ、検査後のアフターサービスである「医師からの個別結果説明」を受けてみた。

記者は大学卒業以来10年間、健康診断を受けていないフリーランス。年に1度、風邪をひくくらいで、気になるのは太ったことだけ。生活リズムが不規則という自覚はあるものの、1日平均1万歩歩き、週に2度は水泳をしているから運動不足でもないはず…。つまり、“健康”の範囲内であるはずという自己認識の下、単純に“面倒”との理由だけで健診は放置してきた。まさに同社のターゲットだ。

実際に「おうちでドック」のキットを開けてみると、血液の採取用の針やボトル、濾過する道具など様々な器具が並ぶ。尿に関しては朝イチで、血液は6時間以上食べていない状態で採取する必要がある。検査当日は4時間ほどの睡眠だったが、尿検査はそれでも問題ないそうだ。

採血や採尿のための器具が並ぶ検査キット

採取方法は初めてだと多少ややこしく感じるが、イラスト付きの説明書をみれば難なく完了。血液が血漿と赤血球に分離する様子は実験しているようで面白い。

事前の説明では15分ほどかかると聞かされたが、10分もかからず終了。2度目(がん検査用と生活習慣病用で2回採取する)の採血も5分程度で終わった。体重や喫煙習慣などのアンケートを記入し、そのまま付属の封筒に入れて送付。

自身の指に針を刺して採血する

待つこと約2週間で結果が郵送されてきた。「がんのリスク」に関してはすべて基準値以下で安心する。

しかし、「生活習慣病のリスク」ではなんとBMI・腹囲・血糖値・HbA1c・尿素窒素・ASTでC判定(基準値から大きくはずれている)。さらに、ALT・γ-GTPに至ってはD判定(基準値からとても大きくはずれている)! 

特に、尿素窒素やγ-GTPなど肝機能障害に関わる5つの数値のうち4つが基準値オーバー。同封された検査項目の説明を見ると、具体的な基準値が記載されていて、改めてひどい数値であることを突き付けられる。BMIや腹囲は予想していたが、週に1度、飲酒するかしないかの記者にとっては意外すぎる結果だ。

記者の検査結果。すぐに近くの病院に行き、治療を実施せよとの強いアドバイスが…

自分の健康に過信を持っている人ほど…

とりあえず、医師からの説明を受けようと、日時を予約して電話を待つ。相談時間は15分。異常値が出た項目の説明から入り、途中いくつか検査時のことや日常生活に関する質問をされ、「境界型糖尿病(糖尿病予備軍)」「脂肪肝」の可能性を指摘される。もちろん確定しているわけではないが、実際に病名を出されるとビビる。

また運動習慣や食生活の見直しの他、尿素窒素に関しては普段の水分摂取量が少ないことを伝えると、水分を多めに取ってから再検査したほうがいいというアドバイスも。全体的に「今すぐ治療が必要という状態ではないと思うが、再度、検査したほうがいい」そうだ。

ひと通りの説明やアドバイスが終わり、今度はこちらの質問。境界型糖尿病でも正常値に戻せると聞いて安心したり、どんな検査をしたらいいかを聞いたりと不安を解消しながら深刻さを受け止める。

さらに、このタイミングで3日に1度程度、後頭部の頭痛があることを申告。今回、血圧がわからなかったので記載しなかったが、もし高血圧の場合、血糖値が高いため動脈硬化の可能性があるという。

動脈硬化で頭痛があると脳血管障害が起こり、最悪の事態としてくも膜下出血、脳梗塞などの危険性も…積極的に血圧を調べて再検査することを念押しされる。(ちなみに後日、計ってみたところ132-88と基準値よりやや高めだった)

今回、説明いただいた鶴田加奈子医師(※)によると、「あくまで健康維持のサポートで実際の医療とは異なる」としつつも、こうしたアフターサービスについて意外なメリットがあるという。※通常は匿名だが、今回は取材のため特別に名前を記載

「かかりつけの医師の場合、利用者が気を遣ってしまい、不明点があっても聞けないこともあるそうです。その点、顔も知らないし見えない電話であれば、知らない分、個人的なことも伝えられるので話しやすいこともあるんだなと感じています」

もちろん、逆に情報量が少ないため、生活習慣や過去の病歴などがわかると、より具体的なアドバイスができるので、それを伝えた上でなんでも聞いてほしいという。また、もし医療機関を受診するようであれば、この結果を一緒にもってきてもらいたいとのことだ。

検査結果があると、この人にはこういう検査が必要だなと組立てがしやすくなります。もし本当に危険であれば、血液検査だけでなく画像検査も必要だと判断できて、患者さんにとっても手間が省けると思うので、絶対持ってきてもらいたいと私は思います」(鶴田医師)

健康だと思い込んでいたものの、全くの勘違いであることが判明した今回。自分自身に裏切られたような感覚だが、同じような人もかなり多いはず。健康診断を受けていない、もしくは自分の健康状態に過信を持っている人などは試してみることをオススメしたい。

(取材・文/鯨井隆正)

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