Jリーグ創設の理念は、あくまで日本代表の強化にあると語るセルジオ越後氏。

今度はチャンスをムダにしてはいけない。

南米サッカー連盟が来年6月にブラジルで開幕するコパ・アメリカ(南米選手権)に、日本を招待することを発表した。

コパ・アメリカには1993年大会からメキシコやアメリカなど北中米を中心とした他大陸の国も参加していて、今回は日本と2022年W杯開催国のカタールが招待されたわけだ。

4年に一度、南米最強国を決めるビッグトーナメントで過去、日本はトルシエ監督時代の1999年パラグアイ大会に参加。ペルー、パラグアイ、ボリビアと対戦し、1分け2敗と未勝利に終わった。特に2戦目で対戦した地元パラグアイには0-4で完敗。親善試合で来日するパラグアイとはまったく別物のチームだと驚く人も多かったね。

その後、日本は11年と15年にも招待を受けているけど、Jリーグの日程との兼ね合いなどを理由に出場を辞退している。これほどもったいない話はないよ。

今秋からヨーロッパでネーションズリーグが始まるなど、強豪国とのマッチメイクは年々難しくなっている。そんななか、ほぼアウェーの状況で、本気の格上相手に最低でも3試合戦えるというのは、これ以上ない貴重な強化の機会だ。放映権料やスポンサー料などお金目当ての招待なのは明白だけど、利用できるものは積極的に利用すればいい。今回参加するついでに、次回以降も呼んでもらえるように根回しをしてきてほしいくらいだ。

以前より頻度は減ったとはいえ、これまでにも南米勢とは国内で対戦する機会はあった。ただ、彼らにとってはあくまでお金目当ての親善試合。たとえ負けてもそれほど批判されないし、監督がクビになることもない。秋葉原でショッピングを楽しみ、お土産を持って帰るだけだった。

でも、コパ・アメリカでは違う。格下の日本相手に負ければ大騒ぎになる。監督はクビにされても文句は言えない。それだけ南米各国にとっては重要な大会で、プレーの激しさはW杯南米予選と変わらない。

もちろん、スポンサーのノルマをこなすための国内での親善試合にも意味はあるし、僕はそれを全否定するつもりはない。ただ、外に出ていくことでしか見えないこと、経験できないことはたくさんあるんだ。

今年3月には東京五輪世代(U-21日本代表)がパラグアイ遠征を行なっている。チームを率いた森保監督(現在は日本代表のコーチを兼任)と先日会ったんだけど、彼も「環境、選手の意識など、ヨーロッパとは違った部分で南米には学ぶべきことがたくさんあった。また行ってみたい」と話していたよ。

コパ・アメリカは6月から7月にかけて開催される予定で、シーズンオフの欧州組の招集は簡単ではない。Jリーグの日程との重複も予想され、大会参加、メンバー招集に拒否反応を示すクラブも出てくるだろう。

でも、Jリーグ創設の理念は、あくまで日本代表の強化にある。どちらを優先すべきかは、あらためて言うまでもない。コパ・アメリカほどの大きな大会なら「出たい」と思う選手もたくさんいるだろう。だからこそ、できる限りのベストメンバーを招集して、本気で勝ちにいってほしい。

日本サッカー協会の田嶋会長がどこまでリーダーシップを発揮できるかに注目だね。

(構成/渡辺達也)