観光地にありがちな記念撮影用顔出し穴を開けた立て看板。

東の東京大学と並ぶ国立大学の西の雄、京都大学の名物は、自由な校風を象徴するキャンパス周辺の立て看板(タテカン)の数々。ところが5月13日、大学当局は「景観保護条例の順守」を理由に、吉田キャンパス周辺のタテカン撤去に踏み切った。

この強硬措置に学生らは「風情がなくなった」「表現の自由への弾圧」と猛反発。一体、何が起きているのか? タテカン撤去から2日後の5月15日午後、吉田キャンパス周辺を歩いてみた。

最初に訪れたのは、最も多くの看板が立っていた百万遍交差点前付近。撤去直後だけにこざっぱりしているかと思いきや、すでに再びタテカンが10枚ほど並んでいる。

「これが俺たちの景観だ!」「撤去すると増えます」「それいけ! タテカンマン」

など、フザけながら大学に抗議するものもあれば、看板ではなくシャツにメッセージを書いて干すなど、一休さん顔負けのとんちも。同じく大学正面付近でもタテカンは復活し、しかも昼過ぎに5枚程度だったものが夕方には10枚に増えていた(笑)。

ところが、実はその前夜、大学はいったん撤去したタテカンの保管場に何者かが侵入したとして、警察を呼ぶ事態にまで発展していたという。どうやら学生たちがタテカンを強奪し、ゲリラ的に再び設置したようだ。

「タテカンが戻ってうれしい。このほうが落ち着く」「京大のタテカンは大文字の送り火や夏の川床などと並ぶ京都の名景観。なくそうなんてアホとちゃうか?」など、多くの学生はタテカン復活に賛成だが、大学側は、

「昨年10月に京都市から文書による行政指導があり、周辺の歩行者の安全も考えて12月19日に『京都大学立看板規程』を策定しました。それを今年5月から実施に移しただけのことです」(広報担当者)

と、しゃくし定規な回答。だが、これは表面的な言い分にすぎないと、この問題を取材する全国紙社会部記者は語る。

ストレートなメッセージの立て看板。

狙いはタテカン撤去をテコにしたセクト系学生の放逐

なぜか「すごろく」になっている立て看板。

「京大は市から毎年のように口頭で注意されても、なんの対策も取らなかった。それなのに、昨年10月の文書による指導で急に『待ってました』とばかり、たった2ヵ月で学内規程を作ってしまった。本来、自由な校風を是とする京大なら突っぱねて当たり前ですが…。これは市と大学によるデキレースで、そもそも文書による行政指導を要請したのは京大側だったのではないかとすら思えてきます」

学生自治に関心の深いある京大生もこう言う。

「国立大学が独立行政法人になって以降、従来は金は出しても口は出さなかった文部科学省が、成果を出せ、さもなくば金は出さないぞと大学にプレッシャーをかけるようになった。それに伴って、大学側から学生への締めつけも強まりました。今回の狙いは、おそらくタテカン撤去をテコにして中核派などのセクト系学生を放逐すること。学内をクリーンに見せて、文科省にいい顔をしたいのでしょう」

天下の京大が文科省への“忖度(そんたく)”を見せた!? この問題、実は意外と根が深いのかもしれない。

(取材・文/ボールルーム)