トリプルスリー、三冠王、200 本安打、打率4割。そのどれもが目標圏内というすさまじいペースで打ちまくっている柳田。弱点は見えない。

ペナントレースを大きく左右する“確変イベント”、セ・パ交流戦が今年も開幕する。

復活に懸ける者あり、勢いに乗る者あり、そして“因縁の対決”あり…。絶対に見逃せない男たちの戦いが始まる!!

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打率は.390でリーグトップ、本塁打と打点も2位。4月21日の日本ハム戦でサイクルヒットを達成したかと思えば、その後も5月3日のロッテ戦をはじめ3度にわたる“サイクル未遂”…。3年前にトリプルスリーを達成した“ギータ”ことソフトバンクの柳田悠岐(やなぎた・ゆうき)が、異次元の打棒を見せつけて“無双”を続けている。

パ・リーグ某球団のスコアラーはこう分析する。

「もともとパワフルなスイングが持ち味ですが、特に今季は初球から振りにいく積極性が目につきます(10本塁打のうち3本が初球打ち)。よほどボールが見えているのでしょう。それと同時に、追い込まれてからは軽打でレフト方向に打つなど柔軟性も増したため、これだけの高打率をキープしているんです」

このままならトリプルスリーのみならず三冠王も狙えそうだが、本人はそれ以上にこだわる数字があるという。

「これは人づてに聞いた話ですが、ギータは三冠王よりヒットの量産にこだわりがあるようです。派手なタイトルよりチームの優勝に直結するプレーを、ということ。もし本気で『本塁打を捨ててもヒットを優先したい』と考えるのなら、打率4割を達成できるかもしれない。それくらいの勢いが今の彼にはあります」(パ某球団スコアラー)

絶好調は交流戦でも続く? 名打撃コーチとして知られる野球評論家の伊勢孝夫氏はこう見る。

「柳田に対しては確実な攻め方はなく、基本的にどんなコース、高さでも対応してきます。強いて言えば、150キロ級の真っすぐで高めを意識させ、低めのボールゾーンに落ちる球で空振りを取るくらいでしょう。しかし今、セ・リーグでそれだけの球威ある真っすぐを高めに投げ切れる投手が見当たらない(苦笑)。抑えるイメージが見えるのは、独特のカーブで打者のタイミングを外せる阪神のメッセンジャーくらいでしょうか」

柳田のモチベーションはメジャー進出

一方、横浜(現DeNA)の元エースで野球評論家の野村弘樹氏はこう分析する。

「あんな絶好調の打者に普通の配球でいったら、間違いなく餌食にされるだけです。また、全打席抑えようと思っても無理でしょう。ならばいっそのこと、普通ではない攻め方で攪乱(かくらん)させるのもひとつの方法かもしれません。

例えば、第1打席は四球も織り込み済みで内角の厳しいところを徹底して攻めるとか、逆に外角一辺倒とか、そういった型にはまらない攻めをすれば、2打席目、3打席目に違う配球も生きますからね。いずれにしても、通用するのは右投手より左投手。DeNAの今永昇太あたりが元気だったら面白いんですけどね」

ただ、実は柳田の気持ちをかきたてる存在が海の向こうにあるという。

「今の柳田のモチベーションはメジャー進出です。ソフトバンクはポスティングを認めておらず、移籍できるのは最短でも2年後のオフ。しかし、それでも連日、テレビで流れる大谷翔平の活躍ぶりは大きな刺激になっているようです」

メジャーで大谷の活躍が続く限り、“柳田無双”も終わらない?

◆『週刊プレイボーイ』24号(5月28日発売)「交流戦に懸ける男たち」では、中日・松坂&日ハム・清宮、巨人・阿部&上原、阪神・鳥谷&藤浪なども分析、そちらもお読みください!

(撮影/小池義弘)