キャンプ序盤は「今年は大当たりや」「4番は安泰!」と阪神ファンも盛り上がっていたが…

ああ、やっぱり…。阪神が球団史上最高額の年俸3億4千万円で獲得した右の大砲、ロサリオが交流戦真っただ中の6月3日、無念の2軍降格となった。

「とにかく外角に逃げる変化球が打てず、空振りの山。打率2割3分、4本塁打では助っ人失格です。我慢して使い続けた金本知憲(ともあき)監督も、決断せざるをえませんでした」(スポーツ紙阪神担当記者)

メジャー通算71本塁打、韓国リーグでも2年で70本塁打という実績を引っ提げて来日したロサリオだが、早くもオープン戦の頃には、前述の課題は他球団やマスコミのみならず、ファンの間でも話題になっていた。

それにしても、だ。近年、阪神が連れてきた外国人打者で成功といえるのは、8年前のマートンらごくわずか。スカウトはロサリオの弱点をわかっていたのか? 不振は本人の問題だが、首脳陣はその間、何をしていたのか?

かつて名打撃コーチとして知られた野球評論家の伊勢孝夫氏はこう指摘する。

「仮に放任してこの結果だとすれば、コーチとしてはちょっと情けない。遠征先などで一緒に飯を食い、とことん話し合うのも大事なことですが、そうしたコミュニケーションがとれていたのかどうか…」

チーム内では、「韓国でもコーチ経験がある高代延博ヘッド・作戦兼総合コーチが主に相談相手をしていた」(前出・阪神担当記者)というが、高代氏は守備や走塁が専門分野。どこまで突っ込んだ助言ができていたか疑問だ。

「ロサリオの場合、技術的な欠点も指導方法も明確なんです。具体的にいえば、外角球を右中間へ打てるようなフォームに改造することが重要で、そのためには左腰、右肘など気をつけて見てあげるべきチェックポイントがある。

ただ、ここで問題なのが、プロの世界では一般的に『左打者出身のコーチは右打者を育てるのが難しい』という傾向があること。だから普通は左右ふたりのコーチを置くんですが、今の阪神の1軍は片岡篤史と平野恵一の両打撃コーチとも左打者出身なんです」(前出・伊勢氏)

この“ダブル左体制”の不安は、ロサリオの不振以前からチーム内外で指摘されていたことなのだという。

「さらにいえば、金本監督も左打者。右の長距離砲を指導するべき人間が1軍にいないんです」(前出・阪神担当記者)

ロサリオの2軍落ちは単に本人の問題ではなく、球団の危機管理の問題でもあるのだ。

エース藤浪晋太郎の不振が長引く一方、西武にトレード放出した左腕・榎田大樹が大活躍するなど、何かと指導力が疑問視される阪神。早くもスポーツ紙ではロサリオの“後釜候補”の名前まで出始めたが、球団がこの問題を解決しないままでは、また悲劇が繰り返されてしまう?